映像

The Wildlife Concert

寝かせたギター。スライドプレイですね。カントリーファッションのジョン・デンバー。サビで「Sing!」とお客さんにコール。手拍子するお客さん。バンジョーがコロコロと、ピアノがブライトに鳴ります。コーラスパートを歌う女性シンガー。ピアニストもハーモニーを歌っているのが一瞬見えました。バンジョー弾きの彼も歌っていますね。最後のサビが繰り返されるところでもお客さんに何か語りかけます「君たちの声ききたいな」みたいな感じでしょうかね。最後のサビではフェイク気味に高く歌ったり、オブリガードを歌ったりもしてライブらしい趣きのパフォーマンスを見せます。曲が終わると熱い歓声と拍手が沸き起こりました。演奏はホットかつクールで確かです。

At Younger Ages

ゆったりめのテンポですね。音像、やや遠め。会場のエアーを録音したものでしょうか。めがねをかけたジョン・デンバー。若いです。花のもようの入ったシャツ。ペグだらけの12弦仕様ギター。メンバーのアコースティック・ベースのズンとしたアタックの響きと胴鳴りの余韻の質がよく出ています。ベーシストの手首がびょんびょんおどっています。観客を映したカットも混じります。和やかに演奏を受け入れている様子。サビでは一緒にうたっている声がきこえますね。サビをくりかえすところではやはりジョン・デンバーが観客に声かけしてみんな一緒に! といった風にリードしていますね。「みんなのうた」、共有物として歌が浸透しているようです。ジョン・デンバーはみずみずしい歌声。クっと棹を立ててストロークしてフィニッシュ。後味爽やかです。

曲について

ジョン・デンバーのシングル、アルバム『Poems, Prayers & Promises』(1971)に収録。作詞・作曲:Bill Danoff、Taffy Nivert、John Denver。

ジョン・デンバー『Take Me Home, Country Roads』を聴く

『The John Denver Collection, Vol 1: Take Me Home Country Roads』より

ブライトなアコギ。コカコカとボンゴの音色。エレキギターが左で鳴ります。アコギのアルペジオ風のさりげないプレイ。右から素朴なバンジョー。右寄りの奥のほうに、シンセベルのようなカリンバのような木琴のような、なんともいえないコロンともチャリンともつかない軽くて乾いたアタックをもつ小気味よいトーンが聴こえます。なんの楽器(音色)か判別がつきませんが気持ち良い。後半あたりでマリンバのトレモロ奏法のような音が響いている気もします。

サビは厚いコーラスです。ユニゾンもいますがジョン・デンバーのダブ? もしくは異メンバーでしょうか、複数のパートを複数の人数でうたっています。中央付近にはスライドギターが極上の音色。高音きらびやかできれいです。まっすぐな発音の女声のコーラスがAメロでも歌詞ハモ。サビのコーラスは何人いるのでしょう、男声も女声もきこえます。

Cメロでしゃららららんとウィンドチャイム。非常にきらびやかで繊細です。最後のサビをハープのグリッサンドが彩ります。

ドラムスはリムショットでカツっとアクセント。ベースは4つ打ちで強拍。みんなで歌いやすい安定のビートの柱です。アコギがウラ拍を強調したようなストローク。ビアノの豊かな倍音が背景を支えます。サビをサスティンで盛り上げるストリングス。エンディング付近に向けてエモーションを高めます。タンバリンがウラ打ちでリズムアクセントを華やかに。チキチキチキ……とシェーカー。

パート数の多いアンサンブルですが完璧に統率されています。ミックスと録音にうなります。ジョン・デンバーの歌声は深く透き通る余韻です。フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドといわれた音をハイファイにしたような……大滝詠一サウンドのような美しく重層な響きも思い出します。それをもう少し「快晴」にした感じ。余談ですけど、大滝サウンドって晴れ渡っていてもどこか「湿度」を感じます。

『Poems, Prayers and Promises』収録版

右に足でぱたぱた床を鳴らすみたいなカウント。左にギター。右にもギター。左に女声コーラス。いえ、右にも低いパートの女声。左のほうが優位性が高いか。右に男声コーラス。全体的にウォームでアナログな音がたまりません。ジョン・デンバーの歌声の刹那のやわらかな歪みが気持ち良い。定位づけがかなりはっきりしていてクリアな音像を確保しています。左にチャカっと指パッチン。乾いた響きで深く余韻します。右にバンジョー。オンマイクな近い音像です。左寄りにやや湿っぽくオフマイクなスライドギター。裏打ちのハイハットペダル。最後のサビでウヮっと音の壁を増すコーラス。アナログな音が聴くほどに良い。ごきげんになれます。

本名陽子『カントリー・ロード』を聴く

まるはだかのボーカルをディレイとリバーブがふわふわと包み超現実なイントロ。ジュンジュンと潤いあるシンセサウンドの伴奏がジュワジュワと沸きます。ストリングスの支えにチャイムのようなベルのようなシンセトーンが右に飛び回ります。ズンズンとピアノのトーンがホップ。サビをストリングスが盛り上げます。1コーラス目のサビのボーカルはユニゾンのダブリング。2コーラス目のサビはボーカルハモも入って来ますね。

和音づけがジョン・デンバーのものよりオシャレになっています。4和音をつかったり、Cメロ以外にも借用和音を用いています。間奏はオカリナでしょうか。絢爛に装飾をほどこした主モチーフメロディの変奏、フェイクを交えた感じです。Cメロはかなりオリジナルにない肉付けを感じます。別の曲のよう。最後のサビは折り返しからコーラスパートが増え、オカリナも絡んできますね。ストリングスもかなり高いところまでつかってオブリガードします。エンディングにはまた右側のシンセトーンがチャムチャムと鳴ります。編曲:野見祐二。

雑感ほか

“ひとりぼっち おそれずに 生きようと 夢みてた さみしさ 押し込めて 強い自分を守っていこ カントリー・ロード この道 ずっとゆけば あの街に つづいてる 気がする カントリー・ロード”(中略)“この道 故郷へつづいても 僕は 行かないさ 行けない”(中略)“明日は いつもの僕さ 帰りたい 帰れない さよなら カントリー・ロード”(本名陽子『カントリー・ロード』より、作詞:Bill Danoff、Taffy Nivert、John Denver、鈴木麻実子、宮崎駿)

本名陽子によるカバーはアニメ映画『耳をすませば』主題歌。作中の登場人物と同じ年代であった、プロデューサー(鈴木敏夫)の娘さんが作詞(訳?)者に名前をつらねています。

映画の物語の中でも登場人物が歌詞の日本語化にチャレンジ。登場人物と近い属性を持った鈴木麻実子が作詞者になることで、物語中の歌詞を「ほんとうに、10代の学生の女の子が詞訳にチャレンジしたもの」たらしめているようです。徹底していますね。制作に臨む誠意であり、根気であると同時に的を射た試みだと思います。(作中で)10代の子が書いた詞なんだから、ほんとうに10代の子が書かなくちゃね! もちろん、決して小さくない規模の映画制作ですから、さまざまな大人の意見や考えを通って実現したことだと思いますけれど。

私は英語堪能ではありませんが、ジョン・デンバーのオリジナルは故郷の風景にいまこの瞬間の自分を対比させ、恋しく思う気持ちが表現されて感じます。ぼくのいたウェスト・バージニア。母なる山。あの田舎道よ、ぼくを故郷へ導いておくれ。そんな感じでしょうか。

本名陽子のほうは、オリジナルに沿って、うまいこと『耳をすませば』の舞台や設定にも沿うような歌詞になっている感じでしょうか。希望や向上心に従って歩んでいる。反対をふりかえれば、慣れ親しんだあの街。このまま遠くへ行く孤独。ふるさとの回顧に安心があるのか、安心自体はふるさとでの記憶に刻まれたものなのか。『耳をすませば』をすみずみまで鑑賞したらもっと解像度高い納得に出会えるかもしれません。

とまぁこんあ具合に、『耳をすませば』や本名陽子の『カントリー・ロード』を透かしてみてしまう、オリジナルのジョン・デンバーの『Take Me Home, Country Roads』。私の育った環境(世代や国)的に、どうしてもそうなるかな。

でも今回ジョン・デンバーのオリジナルを改めて聴くと、音源の良さに感服。録音技術やミックスの面でも非常に稀な体験でした。

ジョン・デンバーの歌声には、遠く国のふるさとの土のにおいも全部入っているかのよう。海こえて山こえて響く普遍がある……生きた土のぬくさ、みたいなものを感じます。アルバム『Poems, Prayers and Promises』収録のオリジナル版の、アナログのじんじん来る感じ、良かったです。後年の再録?(『The John Denver Collection, Vol 1: Take Me Home Country Roads』収録のほう)も。

青沼詩郎

Wikipedia > 故郷へかえりたい

Wikipedia > カントリー・ロード (本名陽子の曲)

『The John Denver Collection, Vol 1: Take Me Home Country Roads』。配信用のセレクションのようです。

『Take Me Home, Country Roads』を収録したJohn Denverのアルバム『Poems, Prayers and Promises』(1971)

本名陽子の歌う『カントロー・ロード』を収録した『耳をすませば サウンドトラック』。劇中で使われたままに前トラックから曲間なく収録されています。

本名陽子の歌う『カントロー・ロード』を収録した『スタジオジブリの歌 -増補盤-』。サウンドトラックと違いアタマからこの曲のみを取り出して収録されています。

アニメ映画『耳をすませば』(1995)DVD

アニメ映画『耳をすませば』原作、柊あおいの同名漫画。

ご笑覧ください 拙演