男性5〜7人くらいの、あるアイドルグループのある曲を耳コピして、家のベッドの上であぐらをかいてアコースティックギターで弾き語りしてみたら、めっちゃいい曲だった。…という夢を見た。

最近私は、弾き語りカバー動画を録ってYouTubeにアップロードして公開するという活動をしていて、毎日1曲更新している。いつ始めたんだろうと投稿を始めた最初の動画を手繰ってみると7月17日だった。1か月は経つと思っていたけれど、1か月と10日を過ぎていた。

たかが1か月と10日超だけれど、それでも貧弱なレパートリーを持つのみの私はネタ切れしてくる。限られたネタを消費しながら、微々たる時間稼ぎをして、これまで一度も耳コピや弾き語りをしたことがない新曲にもチャレンジする。私はネタと時間に飢えている。

そんなわけで、冒頭の夢を見たのだろう。夢にまで見始めたら病気だろうか。これが病気なのだとしたら、世の中にはけっこういろんな病気がある。キュンとする恋愛物語にぞっとする怪奇譚、冷や汗のクライムサスペンスにB級ホラー。まどろみのシネマへようこそ。

夢の中でまで作曲する。ビートルズの『Yesterday』がそんな経緯を持つ曲だ。朝起きたらポール・マッカートニーの頭の中にあって、既存曲かと疑ったがどうも違うらしい。ということでこのワールドワイドな名曲が生まれた。

The Beatles『Help!』(1965)収録

ポール・マッカートニーのあとにあえて私の話。私にもそういう経験がある。起きたとき、直前まで頭の中でプレイしていた音楽がいい感じだったからボイスメモに起こしておこう、なんてたまにある。でも、実際に「使える曲」として「覚醒の世界」にお招きし、完全なかたちに仕上げて発表に至った曲は記憶にない。今後『Yesterday』くらいのビッグ・ドリームが私にもあるといい。実はこれまでにもすでにあったが、ズボラで曲を忘れてしまったり記録をサボって消失してしまったりしただけだかもしれない。そう思うとチャンスに満ちた現実は夢がある。夢なんだか現実なんだか。

現実の世界こそが、まるで夢を見ている状態みたいだ…という逆転の論理もある。「当たり前」「思い込み」の所在地をひっくり返す試み。作曲のアイディアを得るきっかけとしても有効なのではないか。ポール・マッカートニーも、そういう発想の転換の達人だと私は思っている。

冒頭の夢で見たアイドルグループは、現実のジャニーズのいくつかのグループが混ざり合った感じで、曲は「めっちゃいい歌」だった。

アイドルの歌って、あまりいいイメージがない場合が多い。それは実際に、ハイスピードに量産される現代のアイドルの曲が劣化しているのもあるかもしれないし、もうひとつには手触り(サウンド)の問題があると思う。それっぽい音作りにハメてしまうことで、いい曲なのに「ただの凡百のアイドルソング」として埋もれてしまうことってあるんじゃないか。これは邪推で言っている。私にはアイドルソングに対する博愛が足りないし、知識もない。これからもっと研究するべき分野でもある。

松田聖子を「アイドルだ」とする見方だってあるだろう。前にこのブログで『天国のキッス』を取り上げたhttps://bandshijin.com/music-review-tengoku-no-kiss/だけれど、素晴らしい曲だ。作詞が松本隆、作曲が細野晴臣。曲や詞の試みはもちろん、松田聖子の歌唱も含めて高みにある曲。

松田聖子のシングル、アルバム『ユートピア』(1983)収録

SMAP『夜空ノムコウ』を思いだす。作詞・スガシカオ、作曲・川村結花。これは、私にも歌いやすい曲だった。

SMAPのシングル、アルバム『SMAP 012 VIVA AMIGOS!』(1998)収録

「アイドル」という視点をふまえて私の人生に接点のある作品を思い浮かべたとき、バンドをやっていた人やシンガーソングライターが制作に加わったものがいくつか出てくるようである。

バンドやシンガーソングライターの人は、ゼロから楽曲を完成まで持って行くことへの実体験が多いからそうなるのではないか。また、ゼロから完成までのプロセスで、ある方向性を堅持することについても秀でた人が多い、と仮説を立ててみる。実際はどうかわからない。

松田聖子やSMAPがアイドルかどうかは、正直どうでもいい。私は「ジャンル」にあまり関心がない。ただ、「ジャンル」という関連づけに、ときに視点のヒントを求めてみるのもいい。「アイドル」という視点で今後掘ってみたい。

今朝、架空のアイドルグループの楽曲を自分で弾き語りする夢を見たのは寝坊したからだ。その意志があったわけではない。起きられるものならば定刻に起きるべきだった。思い通りにならないことから、今日がはじまる。

青沼詩郎