永六輔、いずみたく。音楽業界の神様みたいに思えるお2人の作には『見上げてごらん夜の星を』があるが、『いい湯だな』も同コンビによる作。

デューク・エイセス『いい湯だな』

デューク・エイセスのシングルが1966年発売。永六輔作詞、いずみたく作曲、デューク・エイセスが歌う「にほんのうた」シリーズの群馬県。

ザ・ドリフターズ『いい湯だな(ビバノン・ロック)』

こちらがザ・ドリフターズによるカバー。イントロの尺八、ノリのよい曲調。加藤茶の威勢の良い合いの手。リフレインする「♪ババンババンバンバン」のフレーズはあなたも聴いたことがあるのでは。

“いい湯だな” に続くメロディが原曲とやや違う。

歌詞にも違いがあって、原曲は群馬県内の温泉地を描いている。

ザ・ドリフターズ版では登場する温泉地が北海道〜大分まで、曲の知名度とともに南北に広まる。

実際の固有の温泉地と歌詞に描かれた情景との整合性で分があるのは原曲のほうだろう。

「ババンババンバンバン」「ビバノンノン」の由来に迫る

“銀座のおねえちゃんがいるとこに行ったら、おねえちゃんたちがえらい陽気にやってたのよ、ババンババンバンバン、ハァビバノンノンなんてやってたのよ、でこれいいなぁっていうんで、そのままいただいて、出したら、売れちゃって…”(『第43回年忘れにっぽんの歌』(2010年、テレビ東京)加藤茶の発言より引用)

これによれば、“ババンババンバンバン” “ビバノンノン”は、デューク・エイセスの曲をもとに銀座でお商売する人たちの間で考案されてつけられていたものであり、それに遭遇した加藤茶らによって取り入れられて発表されたというなりたちがうかがえる。

どこまで正確(真実)か分かりかねる。ホントなのだとしたら、人の楽しい気持ちをあおるフレーズを考えた銀座の接客業の人たちの発想は秀でている。

「ババンババンバン…」「ビバノンノン」といった音の響きを直感的にあてがったのかと想像。どういう知覚が人の注意を瞬時に引き付けるのか、そのための術を体得している人たちなのではないか。経験や勘といった言葉で表されるそれだろう。

接客業界隈のイメージが匂い、耳への粘着度が高い曲で私が思い出すのはゴールデンボンバー『女々しくて』や鼠先輩『六本木~GIROPPON~』である。その曲のなりたちと、接客業界隈が果たしてどう関係しているかを私は知らないが。

お金は水のように流れる。循環する。まわる。水商売ということばもある。

入浴してからだがあたたまるとほくほくする。お金が懐に入ってほくほくする感覚もあるかもしれない。

分子が運動すればお湯だ。動きが良いものは熱を発している。

『いい湯だな』を聴くと何かほくほくした気持ちになる。振り付けも重要だ。からだを動かしたくなる音楽。

青沼詩郎

『にほんのうた デューク・エイセス』シリーズ全50曲を収録した2枚組アルバム

ザ・ドリフターズ『いい湯だな(ビバノン・ロック)』

ザ・ドリフターズ ゴールデン☆ベスト

ご笑覧ください 拙カバー

青沼詩郎Facebookより
“『いい湯だな』の永六輔(作詞)・いずみたく(作曲)お2人による作には『見上げてごらん夜の星を』がある。私は2つの曲をばらばらに認知して、あとから同じ2人による作だと知った。どちらも心に残留する名曲。
『いい湯だな』はザ・ドリフターズか歌ったもので認知したけど、原曲はデューク・エイセス。
歌詞に違いがあって、実際の温泉地の環境と情景描写の整合面では原曲のものが精緻か。
あなたにもご想像いただけそうなフレーズ「ババンババンバンバン」「ビバビバノンノン」は原曲にはなく、(ビバノン・ロック)と付して区別するザ・ドリフターズによるカバー。これがまたいい。というか、これが曲の広まりをより絶大なものにした。
デューク・エイセスの原曲は作詞の妙、ハーモニーの精緻さ、ペンタトニック匂うオブリガードとオールドジャズのようなグルーヴが楽しめる。1992年の録音もありそちらはレゲエも感じる。
ザ・ドリフターズのものは倍音が特徴のオルガン、クランチサウンド+アーミングプレイにサーフが匂うエレキギター、ブルーノートを絡めつつ。複弦楽器(マンドリン?)も良い。イントロ、間奏、アウトロのポルタメントが効いた尺八(?)と、とにかく多彩ににぎやかすアレンジが楽しい。”