原曲音源よりも半音低い調で歌っている

大江千里の『格好悪いふられ方』を私が認知したのはドラマ『モテキ』だった。2010年の放送が2011年に再放送されているのを見た(確か)。

ドラマの進行に合った選曲? で、「イイ音楽」がたくさん劇中に使われている。主題歌のフジファブリックの『夜明けのBEAT』もこのドラマで繰り返し聴いて好きになった。とにかく主演の森山未來がよく走るドラマだった記憶(確か『夜明けのBEAT』MVにも彼が出演して走っていたかと)。

大江千里『格好悪いふられ方』は第1話で焦点が当たった曲だったもよう(Wikipedia)。

音楽

(シェアしたいオリジナル音源はフリーのYouTube上に見つからなかったのでめいめい原曲を求めてほしい)

イントロ。|Ⅳ→Ⅴ|Ⅵm|ⅣからⅥに向かって上行していくパターン。トニックにⅥmを多用してエモーショナルな雰囲気。

AメロもトニックはⅥm、もしくはⅢmか。Cmのコードも使われているし、Ⅵ調であるFmに転調しているのではなくあくまでA♭調のままだと私は思う。もしCmではなくCをもっと使っていたら、はっきりFm調ですよ感が出るだろう。4小節目のおわりにはそのCコードをつかっていて、ここだけ見ればまるでFm調の進行になっているのも確か。

Aメロ8小節目のおしまいにもCコードが出てきて、さっきまでの流れならFmコードに接続するところを、BメロのアタマになるときFM(メージャー)に進む。それまでトニック(トニックあるいはドミナントⅢmを含めて)にマイナーコードを多用してきたエモーショナルな雰囲気に対して、BメロアタマのFメージャーコードが解放感。一気に地平を見通し、開けた感じ。ここで調性もはっきりとFメージャーに転調。ベースが順次進行で下がっていく定番パターン。カノン進行っぽい感じのヒット曲の鉄則

この解放のBメロのおしまいで、A♭調のドミナント(分数コードっぽい響き。Ⅴ上のⅣみたいな。コードネームで書くとD♭/E♭か)をサっと聴かせてFメージャー調からA♭メージャー調に転調してサビ。イントロのエモーショナルな雰囲気のところと調性としては同じ(たぶん)なのだけれど、コード進行やその配置のしかたで同じ調でもこれほどまでに音楽の性格に違いが出る。

サビのコード進行パターンはBメロとほとんど同じでベースが下行するカノン進行アレンジ風。似てるコード進行がBメロとサビで隣接しているのに冗長感はない。これはやっぱり転調していることによるリフレッシュメントがあると思う。

歌メロディの特徴に注目する。Bメロは歌い出しに8分休符を入れた弱起であるのに対して、サビは小節のアタマからきっかり歌い出す強起になっていて、お互いを引き立てている。それでいてコード進行はほとんど同じ(調が違うが)なので、(同じパターンを反復する)リフレイン効果をもたらしてもいる。上に乗るメロディはちがうけれど、コード進行のリフレインなのだ。

リフレインは多くの場合もっと短い動機の反復で印象づけるものをいうだろう。コード進行の繰り返し、それも8小節単位くらいの長さになると、それの反復を指して「リフレイン」ということはあまりない。いや、なくもないのだけど…なんだろう、とにかくBメロで扱った8小節のコード進行を別の調にしてほぼそのまま再現しているのがポップソングとしてユニークだと思う。しかもメロディは違うのだ。他にも例があるかな。

サビの後の間奏にも、サビのコード進行を踏襲しつつ印象的なメロディが入る。イントロのフレーズとは別のもの。イントロが強起なのに対してこちらのメロディは1拍目を休符にした弱起

イントロや間奏にしても、ヒラウタやサビにしても、8分音符を基本にしつつ同音連打や順次進行にうまく跳躍を絡めて、歌いやすく覚えやすいきれいな旋律を与えている。

歌詞

この旋律と相まっているのが恋愛を描いた歌詞。せつない。でも、音楽のメージャーの響きが「割り切れて明るくなれている」ような演出にもなっている。でも実際は全然割り切れていなそうな未練や回顧を感じさせもする。この音楽と言葉のミスマッチ…というか違和感(?)が新しくて面白く、独自性を感じる。違和感・ミスマッチでもあるのだけど、調和しているし協調しているとも思う。まるで多重人格のポップソングだ。巧いなぁ。とてもファンになりました。

青沼詩郎

何かのテレビに出演した際のものだろうか

大江千里 公式サイトへのリンク 

『格好悪いふられ方』を収録した大江千里のアルバム『HOMME』(1991)

ご笑覧ください 拙カバー

青沼詩郎Facebookより

“大江千里『格好悪いふられ方』を初めてちゃんと認知したのはドラマ『モテキ』。各話に「イイ音楽」が使われていてその中の一曲がこれだった。再放送で見たんだったか。
大江千里は2008年〜海外に住んでジャズマンになってしまう。あんまり日本のメディアで見ないのはそのせいか。でも、例えばミュージシャンや芸能関係者が雑誌やネット記事のインタビューやアンケートで好きなミュージシャンを訊かれて、大江千里やその曲を答えているのが載ったメディアを目にすることはしばしばある。今日あらためて『格好悪いふられ方』を聴いていてそのことをしみじみ思った。
曲はA♭とFの間で転調するのがツボ。流行歌職人芸を感じたし、とても好きになった。
独特な声質に聴くほどに惹かれて、誰に似てるんだったかと記憶をまさぐる。そう、坂本九にちょっと似てると思った。”

https://www.facebook.com/shiro.aonuma/posts/3544090285684620