FUJI & SUN’19 ライブ映像『接吻』

ジャズっぽく流麗、即興的。いぶし銀なギターのイントロ。画面の外からパーカッションの音? と思ったら足元に小さな木の箱のような楽器、慎ましやかに共振するタンバリン。田島貴男本人が立ったまま右足で4つ打ちを踏んで演奏しています。

高音域までフェイクがふんだんに入ったボーカル。ライブならではのパフォーマンス、エンディングで熱量はピークに。コンパクトなステージで、一人の男から豊かな演奏が展開。好演です。

映像はYouTubeチャンネル:LIVE LOVERS officialより、田島貴男のFUJI & SUN’19出演時のもの。FUJI & SUNは2019年にはじめて開催されたフェス。会場は静岡県が設置する有料公園「富士山こどもの国」。2021年も5月15日・16日に開催予定(初日ヘッドライナーは私が熱烈支持する、くるり)。

MV 異国?

MV。ロケーションは海外でしょうか。見晴らしのよいところから街を眺望。低い建物中心で建物や壁などが土や石でできた感じの異国。どこでしょうね(→反響をいただき、モロッコとのこと)。

曲について

作詞・作曲:田島貴男。編曲はORIGINAL LOVE。当時はソロでなくバンドでした。1993年発売のORIGINAL LOVEのシングル曲です。

大人の恋愛が題材になっている曲です。テレビドラマ『大人のキス』(1993)のために書き下ろされました。

私が5年ほど前に知り合った人が田島貴男・ORIGINAL LOVEの大ファンで、私はその人からこの曲を教えてもらいました。聴いてみて、聴いたことがあったような気もしました(曲が世に出たときの私は7歳くらい)。

サレオツコード・博覧会

とにかくコード進行が絶妙です。分数コード、テンションのオン・パレード。

サビのコードを私なりに聴き取ったものを書き出してみます。

(C♭m7♭5)|CM7|Baug|Em7|A9|Am7|C/D|F/G|G7-C♭m7♭5|
|CM7|Baug|Em7|A9|Am7|C/D|

移動ドの度数で表したコードメモ。乱筆御免。

呪文のようになってしまいました。

これらのコードのトップ・ノート。ちょうどエレクトリック・ピアノ+ストリングス風のシンセサウンド?のコード弾く最高音のつながりが非常においしいのです。ときおりコーラスが声で、もしくはストリングスの高音パートがこのトップ・ノートをなぞりもします。メインボーカルのいるところ、ちょっとした間奏などのところでもずっとおいしい。

トップ・ノートもおいしいのですが、連結が非常に考えられているのです。鍵盤をつかって作曲されたのかな? と思いましたが、この頃の田島貴男はギターで作曲したとも聞きます。当時のメンバーの木原龍太郎のキーボードワークが良いです。複数の音が同時に鳴るとき、それをタテ(点、スポット)でみたコードの判別も重要ですが、複数の音それぞれの横のつながりがなめらかで、これが風味絶佳なのです。

和声(音楽理論)で四声体実習を重ねると、こうした横のセンスは養われやすいと思います。また田島貴男はサックスやトランペットの演奏歴があるようですが、管楽器を学ぶことも音の横のつながりを意識するセンスが養われるかもしれません。多くの管楽器は、基本的に単旋律を奏でるものだからです。自然と、複数の仲間で音楽にのぞむことが常になります。誰がどのあたりのポジションを吹いているから、自分はこのへんにポジって(位置して)動いたり保ったりしてやろう……それで気持ちのよいハーモニーになる……という肌感覚(センス)が養われるのではないでしょうか? 一人ひとりが横に流れることで、常に瞬間瞬間(点、スポット)のハーモニーが生まれるのです。それを認識・判別して、コードネームで特徴を伝え合うことも同時にできるということです。

ちなみに私の管楽器経験はリコーダーくらいのもので、主に五線紙の上で音楽理論・四声体実習を学びました。譜面で、横に流れる各声部の動きを視覚で認知するのも有効な修練だと思います。

横に流れるコード進行の妙に目をつけてORIGINAL LOVE『接吻』を鑑賞すると、田島貴男らのパフォーマンスに引っ張り上げられ、ひときわ燃える鑑賞体験になります。

青沼詩郎

ORIGINAL LOVE 公式サイトへのリンク

UNIVERSAL MUSIC JAPAN > オリジナル・ラブ へのリンク

参考Wikipedia>接吻(曲)へのリンク

『接吻』を収録したORIGINAL LOVEのコンピレーション盤。

アルバム版の『接吻』を収録したORIGINAL LOVEのベストアルバム。

kiss

ご笑覧ください 拙演