1991 天国のドア

1991年3月、大阪城ホールでの公演『CONCERT TOUR 天国のドア(THE GATES OF HEAVEN)』で披露した『守ってあげたい』の映像。衣装が奇抜です。ピシッとからだに沿っていて艶かしくギラつきます。未来から来た爬虫類みたいです。

広い音域にわたるボーカル。Aメロの低いところからサビの高音まで声質の魅力が堪能できますし、(その衣装のように)音程もピシっと抜群。客席で歓喜する女性の姿。同性が惚れてしまいそうな魅力の正体はなんなのでしょう。博愛の器の大きさ、包容、先進、洗練を感じます。

シンセや、ギターのコーラスがかった透き通り、多層の厚み。パツンと引き締まり明瞭でキレの良い音像のドラム。コーラスに参加している歌手も華があります。遠藤由美、高橋洋子、奥井雅美とのこと

2009 TRANSIT

こちらは2009年のコンサートツアー『TRANSIT』。バンドの音づくりが素朴・実直になった印象です。1991年の洗練された音と対照的ですね。幸福そうにのびのびと歌うユーミン。余裕を感じますし、会場も温かそうに見えます。照明の妙もあるかもしれません。鈴?を振るパーカッショニストの女性の演奏もユーミンと呼応するような開放感。こちらまで楽しくなります。

オリジナル音源(『昨晩お会いしましょう』収録)リスニングメモ

声質があたたかく感じます。ハーモニーが少なくとも2声部、またメインもダブって録っている感じ。厚みが出ています。歌の主題を抽象した「包容」の表現と歓迎したいです。

やや奥の上のほうにキラキラした感じのトーンのキーボード。

「トスっ」とまるみのあるマイルドなドラムス。

エレピの音もまるく優しいフィール。

エレクトリックギターのカッティングも丸みを感じます。エレピもエレキギターもコーラスがかかっているでしょうか。

ハイエンドな質感のアコースティックギターのオブリガードが滑らかによぎります。アウトロで左右に異パートのアコースティックギターが残って全体が消えていきます。

Bメロに入るところなど、要所できらりと輝きを演出するシンセ。

バックグラウンドボーカルが奥ゆかしくも好演。イントロのワイド感とバンドが入ったあとのサビではトーンの印象が異なります。

サビで左方に小気味良いタンバリンが加勢。

曲の主題がもたらす印象のとおり、あたたかく懐の広い印象の音像になっています。曲想を意識した音づくりと評したいです。こちらまで抱擁された気分になります。

後記

曲は1981年リリース。シングル曲かつアルバム『昨晩お会いしましょう』収録曲です。

1991年、2009年のツアーの記録と聴き比べるとそれぞれ印象が違い、曲の成長や変遷が興味深いです。オリジナル音源が一番暖かい印象ですね。

1991年の硬質な透明感もまた格別です。業界全体が向かっていた、ハイエンドなサウンドのキャラクターというのもあるのかもしれません(私は業界の音作りの動向に明るくありませんが)。

2009年はそちらの方向から少し自然体になった印象。飾らずカジュアルで友好的な雰囲気を感じました。

2021年6月でこの曲のシングルをリリースしてちょうど40年です。ずっと守り、守られている博愛の曲。いまも私たちと共にある曲です。

青沼詩郎

松任谷由実 公式サイトへのリンク

『守ってあげたい』を収録した松任谷由実のアルバム『昨晩お会いしましょう』(1981)

1991年の大阪城ホール公演収録の『WINGS OF LIGHT “THE GATES OF HEAVEN” TOUR』

ご笑覧ください 拙演