しんみりと夕焼け

フジテレビの深夜アニメ、ノイタミナで『つり球』が放送された。主題歌がフジファブリックだったので驚いた。うわぁ、いいなぁと思った。

フジファブリックを初めて知ったのはいつだったか。私が中学生や高校生だった頃にさんざん音楽の録音に使っていたMDを、フジファブリックを楽しむのに使った記憶がない。フジファブリックを聴くのには、私はiPodを使っていた。

テレビで『モノノケハカランダ』がかかるCMを見て、彼らのことを知った記憶がある。メンバー?がキツネに扮したビジュアルが印象的だった。『モノノケハカランダ』が収録されている『FAB FOX』(2005年11月9日発売)がリリースされる時期だったはずだ。この頃、私は高校を卒業して音大受験のために浪人生をしていた。

テレビCMを見て彼らフジファブリックがとても気にはなっていたけれど、すぐに私は摂取しなかった。このとき浪人受験生の身だったのもあるかないかわからない。私はロックやポップっぽい音楽を主に志しているにも関わらず、その前提でクラシックを中心にした音大のクラシックを中心に学ぶ学科を志してもいた。音大受験生があらゆる分野のあらゆる音楽の摂取を遠ざけるのは本来おかしいと今では思う。その頃は、クラシックピアノほかの受験実技や音楽理論の勉強で心がすさんでいたかもしれない。

2006年4月から2010年3月のあいだ、私は音楽大学に通った。フジファブリックをはじめてちゃんと聴いたのが、その期間だったか、それよりもあとだったか。この間、2009年12月にフジファブリックのボーカルギター・志村正彦が急逝する。彼らを愛した人には一大事だったはずだ。割とそれと近い時期に、私はフジファブリックを聴き始めた気がする。彼の逝去のニュースが、私がフジファブリックを聴き始めた直接のきっかけだったかどうかは覚えていない。

そこから、2012年4月にフジテレビ・ノイタミナ『つり球』で『徒然モノクローム』が流れるまでの間はすでに、私はフジファブリックを心から楽しんでいた。それは間違いない。『つり球』で『徒然モノクローム』が流れたときに、「(志村正彦のいない編成で)フジファブがやってくれた!」そう思った記憶があるからだ。それは確かだった。相変わらず(いや、相変わらずなんてのは実際は大間違いで、私の知らないところで本当に大変なことがたくさんあったと想像するけど)フジファブリックが活躍していることを知ったのが、単純に嬉しかった。

今、ふと、あらためて『徒然モノクローム』を聴く。猛烈に私は、ジーンとしている。2012年にテレビアニメでこれが流れたときとはまた違った感情だ。YouTubeでMVのフルが公開されていたときに、その日付が2020年4月23日とある。同日からアニメ『つり球』が再放送されたタイミングだったようだ(事前に知っていたら、アニメ、また観たかったな)。

歌詞に、アニメの主要な登場キャラの名が隠されているそう。遊び心を持って、丁寧に誠実につくったんじゃないかと想像する。この『徒然モノクローム』は、山内総一郎、加藤慎一、金澤ダイスケの3人編成になって以降「最初のシングル」だそうだ。相変わらずの活躍でいながら、まったく新しい体制でのぞむ、そこへの態度や望みが弾け出ていると私は思った。好きな作品だ。

青沼詩郎

フジファブリック
https://www.fujifabric.com/

フジファブリック(Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%B8%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF

『徒然モノクローム』を収録したフジファブリックのアルバム『VOYAGER』(2013)