はじける

先日、打ち込みについて思っていたら岡村靖幸の『ビバナミダ』に行き着いたという話をこのブログに書いた(この導入はレイ・パーカー・ジュニア『Ghostbusters』についてこのブログに書いた時にも使ったので二回目)。

岡村靖幸の「シンセ使い」の魅力から、私が猛烈に想起する人がいる。岡崎体育だ。

岡崎体育を私が初めて知ったのは、アニメ『船を編む』(2016)を観ているときだった。オープニングテーマが岡崎体育の『潮風』だったのだ。すごい才能が現れたと思った。

ポップでデジデジで押し出しの強いビート全開のシンセサウンド。音読みのカタイ響きの単語をリズミカルに鋭く並べた歌詞がカッコイイ。歴戦の登山家の靴の裏みたいに、私の山肌を1拍ごとにフックしていく。

歌詞 https://www.uta-net.com/song/220152/

ボーカルにパワーがあって、ちょっとフジファブリックの志村正彦を思い出すような語尾のずり下げポルタメント。透明感あるリバーブが気持ちいい。ファットな歌声に元気が湧く。稀有で新しいヒーローが出たもんだ。

歌詞も、アニメ(あるいは三浦しをんによる原作小説)の内容を知った上でみていくと内容やテーマ、物語の舞台に沿っている。比喩として解釈できる語彙が潤沢。言葉がシンセサウンドに乗って疾走。Bメロや間奏に絡むピアノがじんわりと響く。

アニメ『舟を編む』はざっくり言うと、辞書編集者の主人公とその周りを描いたドラマ。登場人物らの描写が緻密でリアルで素敵。大人になって、出会って良かったと思えるアニメだった。

「ことばの蒐集」「編集」といった仕事のシーン。それから、個人の内面や心象が尊い。知性、感情の持ち主、人間で良かったと思う。静謐で熱情のある素敵な作品だった。

『舟を編む』の世界を、水上花火みたいに派手で儚い娯楽に昇華して大海に浮かべた。すごいパワーと個性の主、岡崎体育。歌声がものっすごいイケメンだと思う。

青沼詩郎

岡崎体育
https://okazakitaiiku.com/

アニメ 『船を編む』
https://www.funewoamu.com/

岡崎体育のシングル『潮風』(2016)。アニメの登場人物の間にアニメの絵柄になった岡崎体育が混ざるジャケット絵が妙味。

『潮風』を収録した岡崎体育のタイアップ集、『OT WORKS』(2018)。

アニメの原作の小説、三浦しをん『舟を編む』(単行本発売:2011年、光文社)。

アニメ『舟を編む』BD/DVD(2017)