高等学校に入学して、私は軽音楽同好会に入った。そこでバンドを組んでさんざんコピーしたのがHi-STANDARDだった。

Hi-STANDARDのオリジナル曲のコピーをたくさんやったけれど、Hi-STANDARDによるあんしんパパのカバー『はじめてのチュウ』もやった。カバーのコピー。まるで孫だ。

『はじめてのチュウ』はアニメ『キテレツ大百科』のオープニング、もしくはエンディング曲として有名だ(1990年4月15日の放送から使用)。私はアニメを見ていなかったため、先にハイスタのカバーを知ってこの曲に触れるという順番になった。

オリジナルの『はじめてのチュウ』の歌い手、あんしんパパの正体は作詞・作曲・編曲者の実川俊晴。この特徴的な声色は、テープの回転速度を上げて得られるらしい。制作にはそれ以外の工夫や技術行使も含まれているという。

非公式な投稿かもしれないが、「回転速度を上げる」というテクを用いて出来上がった原曲の回転速度を落とした(戻した)らしい音源(?)がYouTubeでヒットした。「実川俊晴氏の地声はこんな感じかも」といった趣向か。これを聴くと、コーラスかフェイザーみたいな効果と、ありし日に大流行した(そしてもうまわりきって聴き飽きたかなと個人的には思う)「ケロケロボイス」的な効果がうっすら乗っているような感じもした。単に回転速度を落としたことで乗る効果かもわからないし、実際のところ、原曲に「テープの回転速度の変更」以外にどんな技術がつかわれているのか詳細は不明。

曲、歌詞、サウンドどれをとってもキャッチ力が一級で、多くのミュージシャンにカバーされている『はじめてのチュウ』。コードが大胆に変わっているもの、メロディが違うカバーも多い。

たくさんあるそれらカバーテイクを、実川俊晴ご本人がご本人によるサイトで紹介している。解説・コメントがついていて、非常に細かく分析してある。原曲との違い、カバーテイクに感じられる工夫・趣向の要点が分かりやすく述べられている。

実川俊晴ホームページ『カバーしてくれてありがとう INDEX』
https://www.real-river.com/covr/index.html

実川俊晴はメディアに姿をさらさないポリシーがあるのかもしれないが、木村拓哉とコラボレーションしたときの映像がYouTubeにある。

彼のホームページを徘徊していたら、すばらしいものに出会ってしまった。『しーしーガガ』(2017)という作品で、シンガーのyayoiを実川俊晴がプロデュース・作詞・作曲・編曲したものだ。彼のホームページで紹介されている。https://real-river.com/blg/?p=715

YouTube上にフルバージョンを見つけた。全編聴いてほしい楽しさなのでリンクしておく。

愛ある批判と曇りの無い視線で郷土・滋賀を描いた全編の歌詞、それをパワフルに歌い上げるyayoiのボーカルが素晴らしい。「滋賀」と「Lucky」に「ヤキ」を加えて「信楽焼」と聴こえる、中低域の実川俊晴の怪コーラスパートが絶妙。「滋賀」の音韻を「しーしーガガ」にしてしまう遊びのセンスは琵琶湖級。

青沼詩郎

実川俊晴ホームページ Real-River Music
https://www.real-river.com/

参考Wikipedia>キテレツ大百科 (アニメ)

参考Wikipedia>はじめてのチュウ

あんしんパパ『はじめてのチュウ』(2006)。

『My First Kiss』を収録したHi-STANDARD『Love Is a Battlefield』(2000)

ご笑覧ください 拙演

余談と脱線 松本まりかとFFⅩ

松本まりかが鏡月焼酎ハイのCMに出演。『はじめてのチュウ』の歌唱を披露(2021年3月2日〜テレビCM放映とのこと。参照:宣伝会議 AdverTimes.)。特徴ある声質の引力がすごい。

松本まりかといえば私の中ではファイナルファンタジーⅩのキャスト。リュックという活発な少女の役を演じていて、ゲームも演技も大変楽しませていただいた。

ファイナルファンタジーⅩのスタート画面では『ザナルカンドにて』という非常に美しい曲が流れる。植松伸夫の作曲だ。私はとても気に入って、聴き取ってピアノで真似してよく弾いた(もともとファイナルファンタジーのために書いたものでなかったという)。

サムネイルのキャラクターがリュック

ファイナルファンタジーⅩには続編『X-2』がある。Ⅹが非常にあとをひく結末の物語だったため、『Ⅹ-2』への意欲が湧いた。新キャラクターを加え、松本まりかが演じたリュックを含む女性3人が主役。新しいイメージを企図したのか、かなりハジけたノリのオープニングに面食らったのは私だけだったろうか。倖田來未『Real Emotion』を主題歌にしているのも斬新すぎて、ちょっと感性を追い越されてしまった気分になった。本編のプレイはつつがなく楽しんだ。

青沼詩郎