京都から飛び出したバンド、浪漫革命は最近の私のツイッタータイムラインをにぎわす新しい星。2020年7月22日、彼らは2nd full album『ROMANTIC LOVE』を出した。以下、視聴してメモしていく。

1『ふれたくて』

The Jackson 5『I Want You Back』を思い出す。パーティーのように楽しく、ご機嫌だけど甘酸っぱい。浪漫革命の人懐っこさが滲み出る。ドラムスはあえてか、打ち込みっぽい耳触りの仕上がり。

Bメロ歌詞 “夜は”の跳躍音程が「浪漫革命っぽい」と思う私に彼らのメロディセンスが浸透しつつあるよう。

抑えた雰囲気のままのギターソロが渋い。2メロでハネを抑えた16ビート。2回目のギターソロでパーカッシブなオルガンも入ってくる。「ジャダラララ」といった感じのサビ頭のストロークがハネを抑えている。

こまやかな芸で構築した音楽。

ボーカル・藤澤信次郎の冒頭と同じハイトーンボイスのコーラスに返ってきてフィニッシュ。パーティが始まった感。

MVはコロナ禍にウィットとアイディアで挑んだ印象(観客も演者もみな透明なバルーンに入って素晴らしいライブパフォーマンスをしたThe Flaming Lips『Race For The Prize』の映像を思い出す。参考:https://bandshijin.com/review-the-flaming-lips-flowers-of-neptune-6/)。

喫茶店の客、町行く人もみな防護服。「愛するからこそさわらない。」のコピーポスター。架空の映画?『もう一度だけ君にふれたくて』のポスターの役者も防護服のまま。芸の細かさよ。

防護服、光ってるのはなんでだろう。監督・撮影、加藤マニ。衣装の大水萌々に拍手。もちろん、浪漫革命によるこの甘酸っぱい人懐っこさが呼んだ映像だ。

2『ラブストーリー』
イントロのナインスの響きがくるり『すけべな女の子』、ビートの食い方は同バンドによる『ロックンロール』を思わせる。私が最も敬愛するバンド・くるり。浪漫革命もきっと、くるりを道標に音楽と接している面もあるのではないか。

1曲目の名残を思わせるコーラス、「ふっふーうー」。歌詞の“今君と息をすること”というフレーズに、息を吐くような「はっはっ」というコーラスが続くところにつながりを感じる。サビ前のベースとギターのユニゾンおかずがうまい。このフレーズはベーシスト・藤本卓馬主導だろうかと想像する。最後のサビ中のベースのフィルインフレーズも曲を引き締める。センスが高いと思う。各サビの終わり際のボーカルの叫び上げに、特にキャリア初期のくるり・岸田繁の歌唱を思い出す。曲の結尾、音の切れ際にルームリバーブが残る。かっこいい。

3『あんなつぁ』

このアルバムのハイライト。私が浪漫革命の存在を知り、驚きと感心と嬉しさで満たしたきっかけのMVが『あんなつぁ』。

「あなたは」「あの夏は」といった言葉を思わせる造語は発明。パッヘルベルのカノンを取り入れたギターソロ。君との思い出の曲なのだろうか?

MVはまるで映画。間奏、ギターソロにあたるシーンでは主人公が泣く女性にハンカチを渡す。彼のバイト先(?)の店が謎(※本文末参照)。主人公が貸したハンカチの返却で、2人は接近する。彼女の笑顔。監督は馬杉雅喜。浪漫革命メンバーも出演しているとのことで、主人公と麻雀卓を囲んでいるシーンだろうか。

造語のリフレインでシンガロング、このままどこまでいくかと思う。バーベキューをお開きにするために焚き火をかきこわすみたいに下火になるエンディングが儚い。

4『ラブソング』
ベースリフのイントロに私が思い出すのはandymori。浪漫革命メンバーの好きなバンドでもあると思う(彼らのバンド名の由来にandymoriのアルバム『革命』があると私は記憶している)。

同名曲が多そうなタイトル『ラブソング』。歌詞の押韻がオツ。彼らなりの愛の表現だ。

右左にずれて入れ替わるギターソロは、ギタリストが2人いる(ボーカル・藤澤信次郎も弾けば3本か)編成ならでは。静かになった平歌でユニゾンするベースとギター。棹もののコンビネーションの良さがうかがえる。いいメンバーだ。

5『深夜バス』
図太いコンプ感が私の好み。浮遊感ある。深い歪みでロマンチックな曲想が際立つ。第3音の長短を入れ替え響きを変える冒頭のギターリフがいい。

京都出身の彼らが深夜バスで新宿あたりに遠征して行く営みを勝手ながら想像する。生活を共に味わうパートナーを西に残して「東」へ行くのか。それも浪漫。

ワウの効いたエレキギターのトレモロピッキング。結びのサビへと誘う。イントロと同じフレーズを再現、結尾がついてフィニッシュ。

6『アバンチュール』
サーフロック・リゾート・パリピな感じをカクテルしたようなギターリバーブ、コーラス、ドラムの「ドンタタ」。カタカナ語のラインが並ぶ。ちょっと大滝詠一なども思い出す、サウンドの文脈の汲み方とメロディの人懐っこさ。絡むサックスのサウンドがエロいが次第に爽やかに溶けて行く。

オープニングから約3分間で6/8への変拍子。ラストの歪んだしゃべりはhide with Spread Beaver『ピンクスパイダー』を思い出す。フィニッシュに銅鑼。私が高校時代に聴いたバンドにも銅鑼を用いた曲があったのを思い出した(なんだったか)。

いろいろと思い出すことの多いロック、ポップの語彙・常套句の波状攻撃。音楽愛のなせる技。

7『Showが始まる』
”渋谷系”を思い出すアカ抜け感あるポップ。ジャズっぽくもある。ホイッスル、ベルなどの鳴りもの、マンドリン? 効果音的な奏法。サウンドのキャラ、表現の幅。にぎやかさで「祭り」を醸す。祭りへ向かう前夜祭のような期待感もある。パラッパ……とスキャットが耳に残る。 

8『JUST DO IT』
5『深夜バス』とも並びバカスカと抜けた派手なドラムス。ファンク風。“おっはーでマヨ×××チュ”は私(1986年生まれ)の世代のネタではないか。ひと世代若い彼らであろうに、よく知っていらっしゃると思う。

歌詞は働く者の境遇を想起させる。サビのⅤ→Ⅳ→Ⅰ進行。どこかブルージー。

間奏のしゃべりの遊びは彼らの1st Demo,EP,Album収録曲の『サマタイム』にもみられる。もはや浪漫革命のハンコだ。本曲『JUST DO IT』には「ピー」が多い。ギターソロにかぶせた犬の鳴き真似のような叫び。種族も越えてなんでも集まれの博愛、雑多感。センターのボーカルと左右に振ったコーラスでサビの歌詞を分かつアイディアが光る。コヨンコヨンなギターのコラースサウンドがサビの折り返しで効いてくる。

後記

さまざまな先例を想起させる音楽モチーフが潤沢に盛り込まれているのを感じる。楽しいものが好きなんだろうなと思う音楽愛。浪漫革命が駆け抜け、周りも巻き込んで世界が明るくなっていく未来。アルバム『ROMANTIC LOVE』はそのマニフェストみたいなものだと感じる。わかるよ、うん、わかる。大好きな音楽と一緒に、みんなが楽しくなっていく未来。その傍らに私もいられたらいい。浪漫革命の登場、アルバム『ROMANTIC LOVE』の誕生が私は喜ばしい。

青沼詩郎

※「國島器械株式會社」とある。「Dream Science」と掲げられたのは社是なのか。私の表現でいうと、「理科実験道具屋」といったところか。 彼女のうしろに見える文字「クリーンファースト」はラテックス製の手袋https://axel.as-1.co.jp/asone/d/6-3048-02/だ。

浪漫革命
https://roman-revolution.amebaownd.com/