宝くじを買った話

宝くじを買ったことがある。人生で1回、それも1枚だけだ。当てる意志は薄弱。外れくじを引く自分を小馬鹿にする感覚で買った。1枚300円。10枚買うと絶対1枚当たる(300円相当)と聞いた。1枚買って、運が向いて1万円くらい当たっちゃったら愉快だなと思った。

ジョークのつもりで買ったが、なんのジョークにもなっていないと思い直す。18か19か20歳くらいの時だったか。

私が買った1枚きりの宝くじは外れた。多数派だ。結果を待つドキドキに価値を感じた記憶もない。300円で1枚買っただけじゃ、そんな程度のものか。100枚くらい買ったらドキドキは増したんだろうか。改めて試す予定はない。

バンドをやってる友達が教えてくれた野外動画

バンドをやっている友達がいる。ずっと前に彼と飲んだ。そのときに、こんな動画があると教えてくれた。

君が僕を知ってる』だ。忌野清志郎と仲井戸麗市。野っ原でやっている。高原? どこだろう。

これに似た…というか同じ機会にやったであろういくつもの曲の演奏が同じようにYouTubeに散見。エンドロール?が入っているものもあって「テレビ愛知」とある。いつの放送だろう。ありがたい映像だと思う。

演奏された曲のなかに『宝くじは買わない』もあった。

動画概要欄に「1994年、北海道旭川の牧場にて」とある。映像の冒頭には「提供 角川書店」。

宝くじは買わない 発表や名義についての概要など

RCサクセションのデビューシングル(1970年)。とってもシンプルな曲なんだけど、コード進行の細かいところに、私個人の手癖にない動きを感じる。

歌メロディはほぼペンタトニック。Cメージャー調で、ファとシを抜かしたヨナ(4・7)抜き音階。

歌詞がいい。「お金で買えないものがある」じゃなく、「お金で買えないものをもらったんだ」。恋が、それにあたるのだろうか。作詞:忌野清志郎 、作曲:肝沢幅一。後者は前者の変名。どうして分けたんだろう。ジョークのつもりだろうか。

氏の奔放な遊び心、純真を宿すモチーフに「宝くじ」は役不足な気もするけど、否定形で題材を用い、煌めく愛嬌と爛漫さを備えた素朴ですてきな楽曲。これが最初のシングルというところが、RCや忌野さんの直球ぶりでもあるし、「そのまま」の姿勢がかえってリスナー・ユーザーにとってのフック(意外さ)になっている。ファーストシングルにしてはやくも彼らのユニークさをうったえる、奇妙な傑作。好きです。

宝くじは買わない(2020年『COMPLETE EPLP 〜ALL TIME SINGLE COLLECTION〜』収録) リスニング・メモ

右からきこえてくるエレキギターが肩の力の抜けた洒脱なジャズみたい。まんなか奥のほうからきこえてくるバックグラウンドボーカル、「ウー」「オー」などのダイナミクス、歌詞の発声あるいは「シュビドゥバー」などのオブリガードが素朴。お金がなくても豊かな心が得られるのを象徴して感じる。私や多くの人のこの喉にくっついているこれ(声帯)、肉体で魂の音楽が表現できる。

左から短いリズムでオブリガードするのはトランペットか。2声部で簡素だけど気が利いている。まるで道の脇に咲く花。ドラムスは明らかに右に寄っており現代のロックバンドの定石の定位を逸している。歌が魂の中心であることを思わせる。ベースの定位はまんなかっぽいが、あるいはドラムスが右寄りであることによる錯覚なのかやや左寄りな気さえしてくる。

忌野清志郎のボーカルは絹のように柔らかくそれでいてささくれていて純朴。1951年生まれの彼、シングル発表時19歳くらいのはず。「年齢から察する表現の青くささ」は世の若いミュージシャンを舐める際のあるあるだけど、私の粗雑な想像を超越する圧倒的な個性をすでに持っている。19歳にしていつも社会の「それおかしいよ」と正面から向き合い、ぶつかり続けてきたのを想像させる、磨かれた歌声である。いや、若いからこそ正面衝突できるエネルギーやマインドを湧き出でる泉のように備えている見方もある。世間擦れから最も遠い表現者と称えたい。

『KING OF BEST』(2015)収録版は定位が平面的でいくぶん真ん中寄り、より前後の奥行きで音場を表現し、ズボっと真っ直ぐ出てくる印象。音質はプレーンにきこえ、ノイズ感もややマッチョである。『COMPLETE EPLP 〜ALL TIME SINGLE COLLECTION〜』収録版でより分離がよく、なめらかでリッチな音質、奥行きと左右の広がりある音場を獲得しておりおすすめだ。おためしあれ。

青沼詩郎

忌野清志郎 公式サイト 地味変

https://www.kiyoshiro.co.jp/

『宝くじは買わない』を収録した『COMPLETE EPLP 〜ALL TIME SINGLE COLLECTION〜』(2020)

『宝くじは買わない』を収録したRCサクセションの『KING OF BEST』(2015)

『初期のRCサクセション+4』(オリジナル発売1972年、“+4”は2015年発売)。“+4”版のみ、ボーナストラックとして『宝くじは買わない』を収録。

ご笑覧ください 拙演

青沼詩郎Facebookより
“バンドをやっている友達とずっと前に飲んでいるときに、こんな動画があるとおしえてもらったのが、忌野清志郎と仲井戸麗市が野っ原みたいなところで『君が僕を知ってる』を演奏しているものだった。
同じ機会に演奏した曲がほかにも公開されている。その中に『宝くじは買わない』もある。1970年、RCサクセションのデビューシングル曲。ペンタトニックの歌メロとシンプルなコードなんだけれど、意外と私の手癖にないコードの進み方をする部分があって面白い。
仮に「お金で買えないものがある」と表現すれば、綺麗事くささを感じなくもない。でもこの曲では「お金で買えないものをもらったんだ」と歌フレーズを結んでいる。似ているようで全然違う(後者が良いなぁと思う)。
英題が’CAUSE I’M FALLIN’ IN LOVEとされているよう。「宝くじを買わない理由」を英題が答えているみたい。恋をしている事実はきっと、宝くじを買わない理由のひとつでしかないんだろう。恋の事実がないならないで、買わない理由はほかにもあるんじゃないか。それとも、恋をしていなかったら買うんだろうか? 恋が満たすものがあるとして、それをお金が満たすとは思えない。
宝くじを買う人だって、ほんとはお金が欲しいんじゃなくて幸せがほしくて買うんじゃないの? 好きにしたらいいんだけどさ。”