順次と跳躍と分散と同音連打

歌い出しのともだちになるために。「とーもだ」は順次。「ちーにな」は跳躍で、きれいに「ソミド」。ドミソの和音を高いほうから分散して降りた形。巧みなメロディ。クレヨンハウスの月刊誌『音楽広場』(1987〜1996年、現・月刊クーヨンの前身。参考サイト:クレヨンハウス)で名曲を連発した、作詞の新沢としひこ・作曲の中川ひろたかのおふたり。

順次下行、跳躍上行が波状に。

“ひとはであうんだよ” は美しい順次進行。ここまでの4小節をほぼ再現する形がつぎの4小節でもあらわれる(Aパートと呼ぶ)。

順次下行。なめらか。

Aパートでは、先ず上にとった音程から下行する形を多く採ったのに対して、“いままで であったたくさんの” と歌い出すBパートでは先に下に音程をとってから上行する歌い出しになっている。

“きみときみときみときみときみときみときみと” 「きみと」を7度繰り返している。同音連打による印象づけ。それでいて、途中から符割りを細かくしたり、最後は音程を4度跳躍させて上にポジションし直したりして、歌詞 “きみと” のリフレインに尺を与えつつも冗長感やクドさを遠ざけている。

同音連打。符割り、跳躍で変化を加えている。

ふりつけ歌

あなたは、ふりをつけてこの歌をみんなで歌う場面に遭遇したことがあるだろうか。園や学級や何かの施設での集まりや催し物で、特にプログラム(式次第、セット・リストetc…)の締め付近で歌われることがあるかもしれない。私はそうした場面に出会ったことがある(本記事冒頭YouTubeリンクのキャプション参照)。

歌詞「きみと」を連発するところで、「きみと」の数に合わせて、その場に集まった人を指差していくのだ。そうした「ふりつけ」を意識した作詞・作曲かどうかまではわからない。みんなで歌うことを想定してつくったことは間違いないと思う。

“誰かを傷つけても 幸せにはならない”(『ともだちになるために』より、作詞:新沢としひこ)

SNSで、無尽に匿名での誹謗中傷、攻撃がある。事実として存在するのは明らかだけれど、幸いにも私自身はめったに遭うことはない。SNS上の攻撃が、対象を自殺に追い込む問題に及ぶこともある。1987年につくられたという『ともだちになるために』の一節が、攻撃の引き金にかけられた指の持ち主に響いてほしい。攻撃対象に視野を絞り過ぎているその人の元に自然と届き、あるいは耳を傾けたときにいつでもこの歌があればいい。

しあわせになるためにともだちになる気もする。そんな打算なく、ともだちはなるものである。関係の構築がきっかけとなるしあわせが、お互いとその周辺にまで及ぶ関係を、ほんとうのともだちと呼ぶ。

こちらのバージョンの編曲者:西村直人さんを私の地元・西東京に迎えて、ある集いでこの曲をみんなで歌った。『ともだちになるために』を関係構築のはじまりの歌とするのも良いだろう。

青沼詩郎

ともだちになるために』(こどもの城児童合唱団)が収録されたアルバム『新沢としひこ&中川ひろたかソング<祝・30周年記念 こども合唱版>』(2017年6月28日発売、キングレコード)

新沢としひこの歌唱による『ともだちになるために』を収録した『新沢としひこの歌でおぼえる手話ソングブック ともだちになるために』(2001)

【ご笑覧ください】拙カバー