作曲者:橋本祥路

作曲者の橋本祥路は秋田出身、教育芸術社の作曲家。『時の旅人』『カリブ夢の旅』(作曲)、『Tomorrow』『BELIEVE』『あの素晴らしい愛をもう一度』(編曲)など、私の知る多くの合唱曲や、もともと合唱以外の曲の合唱編曲に携わった人。教育芸術社の教科書で『翼をください』を取り上げ、合唱曲として広めた立役者でもある。

作詞:芙龍明子

作詞者の芙龍明子については、検索では多くがわからなかった。童謡検索サイトHoickで著作がいくつかヒットする。https://hoick.jp/mdb/author/%E8%8A%99%E9%BE%8D%E6%98%8E%E5%AD%90

こちらも橋本祥路との共作。

作曲のいきさつ

作曲年代は1977年頃と推測する(参考:http://www.asahi.com/edu/student/kyoukashow/TKY200710100195.html)(楽譜のクレジットは©︎1979 by KYOGEI Music Publishers.)。当時、作曲者の橋本祥路は教育芸術社の若手編集部員だったという。著作者と読者をつなぐ存在である編集員が、ときに一次的な発信元になることもあるのだと思い知るエピソード。『夢の世界を』が、子どもたちの歌う曲の少なさを受けて競うように作られたもののひとつであるという話、ならびに若手編集員だった橋本祥路が作曲したという事実を思うと、芙龍明子もそれに近い立場、もしくは近い関係にあった人物なのかと想像する。リンク先の朝日新聞サイトの記事を見るに、芙龍明子氏は故人である旨がうかがえる。あなたがもし芙龍明子や『夢の世界を』の背景について明るい人、あるいは何かを知っている人だったらぜひ教えてほしい。何もお返しできないが。

、歌詞について

ピアノ伴奏が流麗で、アルペジオとフィルインの半音進行が垢抜けた印象。歌メロは8分音符の刻み、小〜中距離の跳躍、同音連打、順次進行をうまく組み合わせて、強拍と弱拍に巧妙に役割を与えて動き豊かに演出したヒラウタ。サビの頭はそれに対して音価を大きく。副次調のⅤの和音も登場してドラマ。

シンプルな構造だけど情感たっぷりに歌える工夫がなされている。

歌詞においても、情景描写を語りかけるようなヒラウタと、「さあ」と焚き付け、背中を押したり手を取って共に踏み出すかのようなある種の強引さあるサビが対になっている。ヒラウタを現実とすればサビこそが「夢の世界」であり、この点においても対の構造が見て取れる。

これはかなりの名曲だと一聴(一見)して見抜いた人はかなりの慧眼だ。大人になった今、ようやく私の目は見え始めたらしい。

青沼詩郎

教育芸術社 公式サイトへのリンク

渡瀬 昌治(指揮)、神代混声合唱団(合唱)による『夢の世界を』を収録したアルバム『ビリーブ+(プラス)合唱定番編』

青沼詩郎Facebookより
“中学校で合唱した曲。いや、小学校だったかも。大人になってからも仕事で学校にお邪魔することがあってそこでも歌われていた。昔使ってた歌本にも載っているし今の歌本にも載っている。作曲年が検索ではわからなかった。作曲:橋本祥路、作詞:芙龍明子。サビの頭から最高音が出てくる曲は案外むつかしいと生徒の頃の私は思っていた。今も思っている。”

https://www.facebook.com/shiro.aonuma/posts/3401044729989177

ご笑覧ください 拙カバー