続きを読む YMO『君に、胸キュン。-浮気なヴァカンス-』 精通者の純愛 柄にもなく純情な気持ちで胸をときめかせている主人公とは裏腹に、お相手のほうは肉汁したたるモーションだったとしたら……この絵図にはおかしみがあります。音楽精通者グループの最後期にまさかの胸キュン。
続きを読む 岩崎宏美『すみれ色の涙』 現実の無情の滴り ブルー(青)に、現実の無情が滴り落ちると「すみれ色」に。一般と固有、淋しさの本質、平行調へつながるⅢ7、編曲:萩田光雄の妙技……知る・思うこと満載でした。原曲はジャッキー吉川とブルー・コメッツ。
続きを読む ジッタリン・ジン『プレゼント』 贈り物に映る人柄 ちょっとクセのある具体物を歌詞に込めつつも、聴き手それぞれに固有の体験を想起させるのがジッタリン・ジン『プレゼント』の秀逸なところです。メロのほとんどを同じモチーフの反復のみで聴かせてしまえるすぐれたアイディア。
続きを読む カバーしたい歌 1年間で365曲カバーした話 のらりくらり1年。音楽の語彙が増えました。枠や質量を観察すると、ポップソングも決して得体の知れない魔法ではないと思えます。広い視野と鋭い深さをもって、私自身にとって、あなたにとってのカバーしたい歌を生み出し続けたい。
続きを読む さとうきび畑 魂の衣擦れ “ざわわ”に込めた悲しみのリフレイン 鑑賞する、関連記事から知識を得るなどする都度、何度でも涙がにじんできます。“この悲しみは消えない”の通り。風の音、“ざわわ”がずっとリフレイン。時間の隔たりを増すばかりの史実。舞台は島でも、現実と地続きの歌。
続きを読む 岩崎宏美『ロマンス』 恋のソワソワに添う妙構成 若い主人公の恋愛のソワソワを表すかのような構成です。演奏がいきいきとする編曲だといえるし、演奏者の技量がそれに応えています。精神の成熟によって感じるそれは、恋愛、あるいは性愛。作詞:阿久悠、作曲:筒美京平。
続きを読む 『世界の約束』別れの向こう側 別れの歌なのかなと思いました。何を見ても、あなたと結びつけ、想像する私。風に、せせらぎに、空に、花のにおいに。『ハウルの動く城』エンディング版で『人生のメリーゴーランド』につづきます。輪廻をおもわせる3拍子。
続きを読む 島倉千代子『愛のさざなみ』のアゲのオチ 浜口庫之助のメロディ、なかにし礼の歌詞のロマン さざなみに似て上下する浜口庫之助メロディ、ささやかな食いのリズム・弱起モチーフ。なかにし礼の歌詞のロマン。島倉千代子の声の機微。演奏の妙はボビー・サマーズと彼のグループ。
続きを読む 奥田民生 息子 親の祈り、紺碧のあれこれ べっぴんさんにホレられることだけはしっかりやりなさいとは、抽象的に大人の素養を網羅した絶妙な助言では。調をうろつくモヤモヤ感、中間声域を漂うボーカル。あれやこれやがあって、空は紺碧。澄んでもいるし、濁っている。
続きを読む 童謡 『サッちゃん』の喪失 主人公の関心事はサッちゃんの転居か。1・2番はサッちゃんの人柄の前フリ。3番で漏れ出た哀愁の秘密が判明。ペンタトニック・スケールにはそもそも哀愁を感じさせる不完全さがあります。ずっとつらつらと夢(おとぎ話)を見ているみたいな音階。
続きを読む フニクリ・フニクラ 冒険心あおるCMソングの元祖 呪文みたいで可愛い「フニクリフニクラ」は登山電車「フニコラーレ」の愛称。変拍子っぽく聴こえる、小節線を無視したようなトリッキーなモチーフの割り付け、奇数小節フレーズ。ⅢmやⅤへの部分的な転調。サビ後半の転々とした和音進行と怒涛の同音連打「フニクリフニクラ」。登山鉄道の広報・宣伝の機能を満たし、主人公に想定上の相手役を配したアツいラブソングにもなっています。和音や調の進行にも起伏があり、音形もゆたか。ケーブルカーに乗った火山観光の冒険心をあおる秀でたCMソングです。ノリが良く親しみやすいメロディやリズムを持ったフニクリ・フニクラは「おにのパンツ」ですら許す器の大きい曲。