5月になると彼女は 曽我部恵一BAND 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:曽我部恵一。曽我部恵一BANDのアルバム『キラキラ!』(2008)に収録。
曽我部恵一BAND 5月になると彼女は(アルバム『キラキラ!』収録)を聴く
スリーコードの純粋なパワーとビートが炸裂します。ルートに対して長三度の音程でボーカルとベースが同音連打で前に前に響きを押し出します。上ハモがさらにその三度上に常にいます。トニックの長三和音の安定感でガンガン攻めていきます。どこまででも行けそうだ!
ドラムのドカドカした轟くサウンドはこれがあればもう一生いいや、これで行くよ俺は……などと思えるくらいに私のなかでの完成形です。
右に少し高めのポジションのギター、左にローコードポジション付近のギター。イントロが印象的ですが、ヴァースで弾く頻度を間引くなど音の飽和感を適度に調節します。そうした音の変化に呼応するかのように、ドラムの基本パターンにもタムが混ざって来るなどバンドで有機的に連携して景色の変化を見せます。
シンプル中のシンプル、といえそうな、ギター・ギターボーカル・ベース・ドラムで再現できそうなサウンドですがシンセが加えられていて輪郭と彩りをより豊かにします。オクターバーをかけた別のギターやベースがいるのかな?と一瞬思わせる、じゅわんと倍音がリッチなサウンドのシンセがバンドにコミットします。地平線が浮き上がるみたいに私の気分も上がります。
ゴーゴー!(5、5!) でみんな加わってシンガロングの様相。サビ(コーラス)が一回だけの構成です。この疾走感で、しかもサビが1回。これでむしろ2分に届いているサイズが不思議に思えるくらいです。
セブンスの酸っぱいスケール感をあらわにしてロックンロールを薫らせるエンディングがついておあとよろしく。熱量の起伏、サウンドの充足感が高く、曲サイズはこざっぱりしていますが聴き終える満足感でいっぱいです。終わり際の余韻のなかに残るアンプの発するジーッというノイズがバンドのいる部屋の空気を私に知覚させます。
蝶になり、バラになり、猫になり……変幻自在な彼女。
あたたかさから暑さへの過渡期。結婚を想起させる6月を目の前にした頃。春はもう背中。人外の活動もさまざま移ろいを見せる、動きの季節、5月。豊かで絵柄の映える、魅惑のモチーフをフレームの中で動かす歌詞の描写がバンドのサウンドと相まってカラフルです。
新年度を迎えて少しして……自分の状態はいまどうなのかと、連休あたりにふと思いあぐねてみたりしがちな季節。私個人的には自分の誕生月というのもあって、開放的でポジティブなイメージもあるのが5月です。
青沼詩郎
『5月になると彼女は』を収録した曽我部恵一BANDのアルバム『キラキラ!』(2008)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『5月になると彼女は(曽我部恵一BANDの曲)ウクレレ弾き語り』)