さすがコーラスグループといった感じで、複数のボーカルで立体感を出すためか左右の定位をボーカルのためにとってあり、楽器が中央付近にまとまっている印象です。
左右に振ったボーカルが列をなして、中央のメインボーカルを中心に羽を広げるようなステージ配置を想像させる印象です。
「ランナウェイ」は「駆け落ち」のニュアンスもある言葉だそう。楽曲からは意外と落ち着いたグルーヴとテンポを感じます。たとえばライブ演奏などでは気持ち、わずかにテンポをあげたような熱のこもったパフォーマンスを味わってみたい気もします。
鈴木雅之のちょっと哀愁のある、暖かく腰の太い感じの声質が、主題の恋愛を悲壮なものでなく陽気でごきげんなモチーフとして響かせています。ホールっぽい感じのリバーブが心地よく効いていますね。
ピアノが8分音符でピンピンピンピン……とストローク。ギターだったらダウン・ピッキングのニュアンスですね。ドラムスは余韻がほどよく抑えられ、コーラスやメインボーカルの響きを明瞭に保ちます。コーラスにさまざまなキャラクターを感じるのが良いですね。音域も広く感じます。華やかです。
間奏のトランペットが雄弁。コンパクトにハイライトが詰まった構成とスケール感で、こういう持ち出しやすいサイズを感じる大衆に向けられた歌が私は何より大好きです。実際、パイオニアのラジオカセットで、曲タイトルと同名の「ランナウェイ」のコマーシャル・ソングとして誕生したのがこの楽曲だといいます。歌い出しの語句がいきなり“ランナウェイ”なのもその揺るがない制作背景を反映しての意匠でしょう。覚えやすく、印象に残るフレーズです。ボーカルメロディのおしりを結ぶのもこの“ランナウェイ”の語句ですね。希望を持って駆け出すような歌い出しの“ランナウェイ”とはキャラクターが異なり、結びの“ランナウェイ”は逃避行を振り返ってぽつりと呟き、回想を括るような趣を感じます。ゴキゲンなのにちょっと哀愁漂う感じが好きです。
ボーカル・メロディに、私のフェイバリット・バンドでGSの筆頭のひとつ、ザ・スパイダースの『ノー・ノー・ボーイ』を思い出させるふしまわしを感じます。好きなものと通ずる点をたよりに音楽を聴きつないでいくのも楽しみのうちですね。
青沼詩郎
参考Wikipedia>ランナウェイ(シャネルズの曲)へのリンク
『ランナウェイ』を収録したシャネルズのアルバム『Mr.ブラック』(1980)
ご笑覧ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『ランナウェイ(シャネルズの曲)ピアノ弾き語りとハーモニカ』)
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