GSの流行

私はGS(グループサウンズ)曲の弾き語りをYouTubeチャンネルで多数投稿しています。コメント欄でGSをなつかしむ声やほかにもこんなものがあるという周辺情報を教えてもらえるなどしてありがたいばかりです。

『GSワンダーランド』(参考Wikipedia)という映画が2008年に公開されているのを、コメント欄で教えてもらいました。

GSは1967〜1969年の3年間くらいが流行期だとする説がネット上にありますのでひとまずそれを信じます。その流行期から、2008年の『GSワンダーランド』の公開は40年近く経過した時期ですね。ここであらためてGSをモチーフにした熱量が何かあったのでしょうか。「ネオGS」と呼ばれるジャンル(アーティスト)があらわれるのは1980年代末期だといいます(参考Wikipedia)。ネオGS出現時点で元のGS流行から20年近くが経過しており、2000年代後半頃はさらにその20年後になります。

しばしば流行は20年周期といいます。40年の経過は「ふたまわり」なのですね。映画『GSワンダーランド』を2008年当時、私は知りませんでしたが、2000年代後半頃には何かGSを思い出させるようなムーブメントはあったのでしょうか。

GSを直接思い出させるかは別として、自ら楽器の演奏をしながら自作曲をパフォーマンスする……いわゆる「バンド」形態のアーティストの活躍は、フェスなどの盛り上がりもありましたし、新人がそれに出ることを目指す動きも活発な時代が2000年代後半だったと思います。同時に、DTMも一般に浸透し、どんどん新人が参入しやすくなり、ボカロが好まれたり広まったりするようなことも起きていたのが2000年代後半ではないでしょうか。またAKB48の活躍がめざましかった時代でもあるでしょう。現代で定番になっているさまざまある、音楽の世界に飛び込むための表現スタイルがひととおり揃いはじめる時代だったのかも?とも思います。音楽の発表媒体としてのCDはまだまだ2020年代と比べれば俄然太かったでしょう。CDをパソコンに取り込んでiPodに移して聴いていたのが2000年代後半の私でした。

GS流行の話にもどります。重ねていいますが、40年経過後の2000年代後半にあきらかにGSリバイバルがあったか私には分かりません。流行後60年にあたるのは2020年代末頃になります。この記事の執筆時は2024年ですからあと数年後頃にGSをモチーフにしたり愛好したりして進化させた音楽が力をもったら、ちょっと私としては楽しいかなと思います(私がやろうかな)。GS流行をリアルタイムで10代くらいで経験した人はその頃には70代後半くらいになるでしょうか。どんな音楽をどんな年代の人が楽しんでもごく当たり前の時代になったと思います。同じ70歳代でも、1960年代の70歳代と現代の70歳代では若さや元気さがまるで違うのではないかとも思います。

歴史は繰り返すともいいますし、それでいていつも同じように繰り返されているわけではないのです。

映画 GSワンダーランド

話が広がりすぎて焦点がぼけてしまいましたが、映画『GSワンダーランド』の主人公らが組んでいるバンドは、GS流行の中・後期を象徴する“失神バンド”、「オックス」をモチーフにしているようです。観客の群れが熱狂して倒れ、客席が陥没したみたいに見えるシーンが描かれていました。

主演の栗山千明さんの整った顔だちは、オックスのメンバーの野口ヒデトさんの顔面とちょっと似て思えます。劇中では栗山さんの役はオルガン・ボーカルなので、パートとしてはオックスの赤松愛さんのポジションでしょうか。劇中バンドの人数は4人で、実際のオックスは5人のイメージが強いようです。栗山千明さんが演じた役は、オックスの野口さんと赤松さんの統一を図ったような役なのかもしれません。現実のオックスの野口ヒデトさんは真木ひでとに改名しソロ歌手デビューしますし、劇中で栗山千明さんが演じた役:「ミク」も物語の終盤でソロデビューするあらすじになっています。GS流行期の熱狂と束の間の青春とドタバタを爽やかにコミカルに描き、それでいてちょっとほろ苦く仕上げた楽しい映画です。

『GSワンダーランド』の物語で頻繁に演奏されるオリジナル劇中歌『海岸線のホテル』がモチーフ(オマージュ元)にしたと思えるオックスの楽曲が『ダンシング・セブンティーン』です。

ダンシング・セブンティーン オックス 曲の名義、発表の概要

作詞:橋本淳、作曲・編曲:筒美京平。オックスのシングル、アルバム『オックス・ファースト・アルバム』(1968)に収録。

オックス ダンシング・セブンティーンを聴く

私の記憶の引き出し的には、フィンガー5のはじけた元気な感じと、筒美京平さんが多くの楽曲を提供している歌手・平山みきさんの作品のようなグルーヴィーな印象をうけます。あと思い出すのは“ゲロッパ!”の神、JBことジェームス・ブラウン。筒美京平さんが書く楽曲の特徴をふたつあげれば、ペンタトニックのクセになるメロディの洗練といなたさ(いもっぽさ)の絶妙なバランスと、圧倒的にファンキーなリズムの生々しいテクスチャでしょう。

右にドラムスとオルガン。ギターはうっすら感じます。左にドライブ感あるアタックのベースがぶいぶいいう音がきこえます。雄弁なタンバリンも左。

バンドメンバーの担うパートをしっかり出しつつ、ブラスセクションのなす印象がJBっぽいです。ファンキーで景気が良い、テンション上がる感じです。

“若いぼくらは”と歌詞でいっていますし、ほかでもない主題が『ダンシング・セブンティーン』。ボーカルの群像がとにかく若い。ユニゾンしたりハーモニーしたり、勢いと熱と青さがはじけています。10代による10代のための音楽という感じです。

GS人気とその音楽性の最も表層の特徴を最速でつかむのに最適な一曲でしょう。これを商業音楽史の資料としてひとつとらえつつ、GSも実に手広くて多様である……という楽しみの裾野が広がっています。雑食すぎてまた笑えるんですけどね。

青沼詩郎

参考Wikipedia>オックス

参考Wikipedia>ダンシング・セブンティーン

参考歌詞サイト 歌ネット>ダンシング・セブンティーン

『ダンシング・セブンティーン』を収録したオックスのアルバム『オックス・ファースト・アルバム』(1968)

映画『GSワンダーランド』(公開年:2008)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『ダンシング・セブンティーン(オックスの曲)ギター弾き語り』)