ゆらゆら帝国は、私の高校時代からの長い付き合いの友人との共通の話題のひとつだったのです。
すべるバー ゆらゆら帝国 曲の名義、発表の概要
作詞:坂本慎太郎、作曲:ゆらゆら帝国。ゆらゆら帝国のEP『太陽の白い粉』(1999)に収録。
ゆらゆら帝国 すべるバーを聴く
仏のような顔になって聴いてしまいます。最高だよ。
ミソッラー、シレッミー。ベースのモチーフが天に向かって突き抜けていきます。ギターと完璧なユニゾンかと思えばちょっとギターは複数の弦でハーモニーを出していますね。
メインのギターはちょっと右寄りでしっかりした音量があり、サイドのギターはちょっと左寄りで音量控えめでしょうか。ところどころでリフだかおかずのような動きをし耳を引きます。
バカバカと疾走するドラムス、ベースのストロークも動きも早いです。マシンガンでボロ布になるまで撃たれ尽くされる気分です。
轟音に埋もれそうですがボーカルの輪郭が死なない絶妙な声とバンドのバランスです。
ミソッラー……のパターンが明けるとベースはブイブイと和声を感じさせる動きでⅠとⅣを頻繁にとっかえひっかえ。主題の「すべるバー」に入るところではⅠを長くしてⅣ、Ⅲを短く入れてリズムのアクセント。
「すべるバー」はなんなのでしょう。こんなに突き抜けた音楽性ですから、高校生の頃の私は単純にギターのボトルネック奏法とかスライドギターの類でつかう金属の棒を想像していました。スライドバーとか呼んだりする?でしょうか。
高校生の頃の私がぜんぜん気づかなかったのもさすがに高校生として幼稚すぎやしないかと今になって思うのですが、「すべるバー」は現在の私には「男根」を強く想起させます。
滑るバー(男根)。ぬめるバー(男根)。ちょっとのアナでもオーケー。オレはすべりこむ……ミゾでもOKなのです。
“ロックしたドアの隙間 俺はすべりこむ ノックはしないぜOK お前の中にすべりこむ”
(ゆらゆら帝国『すべるバー』より、作詞:坂本慎太郎)
「しめるバー」は「湿る」「閉める」「締める」など複数のミーニングが想起できます。
中間部の大轟音が見事です。いったいなんの音をどう録音したらああなるのでしょうか。低域も含めたド派手なリバーブやディレイを後から付加してもああいう得体の知れない轟音がつくれるかもしれません。
今日はサブスクでデジタルデータを聴きました。フォーマットの外にはみ出しそう。CDで聴いたら似た印象かもしれませんが、レコードで聴いたらどうなるかわくわくしますね。レコードのミゾはマリアナ海峡くらい凄いことになっていそうな轟音です。
軽やかなロックンロールの定型なギターの伴奏もうかがえますし、くだんの大轟音の展開もあります。コンパクトな歌詞と曲想ですが局面が豊かで、とにかく勢いに満ちています。すべってうっかりしちゃうバー。突貫力そのもののバー。ぬめったりしめったりして誰にもつかめない・とめられません。衝動性に満ちています。
青沼詩郎
『すべるバー』を収録したゆらゆら帝国のEP『太陽の白い粉』(1999)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『すべるバー(ゆらゆら帝国の曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)