美しい星 曲の名義、発表の概要

作詞:山上路夫、作曲:村井邦彦。森山良子(1972年『旅立ち/1972 Ryoko Now』)、天地真理(1972年『虹をわたって』)、ベッツイ&クリス(1972年、シングル)、赤い鳥(1973年『美しい星』)などが発表。

美しい星を聴く

森山良子

メロが素朴です。ホワンとしたビブラフォンのようなエレピのようなロータリースピーカーのようなゆらめく響き。

フルートのトリラー、からのオブリガードが絢爛な1サビ明け~2メロ。

森山さんの歌唱の確実さ、みずみずしい響きをバックグラウンドボーカルの男声ユニゾンが抱擁します。

天地真理

ひとつひとつの素材が近い感じがします。天地さんの歌も近く、声の質感の解像が高い。ピアノと補い合うフォーンと漂うビブラフォン。字ハモは天地さんの声のオーバーダブか。ドラムの音像も近く、太くあたたかなサウンドです。スチャっと軽く2・4拍目のオモテをカットするエレキギター。

ストリングスもいますが天地さんのソロとしてのセンターの独立感があります。森山良子さんのものと聴き比べたからそう思うのでしょうか。

ベッツイ&クリス

Youtubeでベッツイ&クリス 美しい星を検索する

ボーカルが儚い。線が細く、ささやくように可憐でかろやかな歌唱です。息を抜くようにソフト。サビのボーカルハーモニーのなんとライトなことか。まるでフェザータッチです。遠くで高らかに歌いあげるバックグラウンドボーカルが主役とは好対照です。力強いが、遠いのでバランスがとれています。鑑賞者との適度な距離感の尊重を感じるバランスです。甘い(スウィート)味わいですね。悩殺されそうです。

赤い鳥

イントロからぶつかった響きのピアノの洒脱なこと。絡む金管もテンション感あるフレームインです。カーペンターズの名曲で聴き覚えのあるようなアレンジです。歌唱の線は軽めで、ダブルトラックで輪郭をぼかし淡くしています。男声も入ってユニゾンして、生命力もあるのですが、どこか達観・諦観したクール、理知を感じる態度です。人生は儚いものだと悟っているような。プレーンなベースのトーンの輪郭がはっきりしていて、物憂げな歌唱やお洒落なサウンドを地面に接着し安定感をもたらします。チャリっとタンバリンが歯切れのよさを演出。

歌詞

あなたと私は 生まれてきたよ 大きなこの宇宙のなか

地球に 地球に 生まれて来たよ 蒼く光る星へと

緑がもえて花が咲き 鳥はとびかい いつの日も回るよ この星は

『美しい星』より、作詞:山上路夫

カメラの視点が宇宙空間から地球にクロースアップします。その地表でさらにこまごまと多様な生命の営みが起きています。

生命が誕生しうる環境を持つ星は天の川銀河を飛び出て古今東西にたくさんあるでしょうが、そのお互いが接触できる範囲・時代に同時に存在することが困難なために宇宙人との接触が難しい。

……宇宙の話になると脱線してしまいますが、つまり蒼く光る星:地球が、いかに希少、類まれなる美しく奇跡的な環境を有しているかをいいたいのです。その尊さをいいたいのです。

美しく希少な星:地球では手を伸ばせば届くところ、鼻先をかすめる距離に多様な生物が同居しています。なんと奇跡的なことかと思わせます。

『美しい星』メロ・サビの歌詞の文章の量は至ってコンパクトに、壮大な観念を歌っています。

誰でも一つの命を持って 生きてるのさ 星の上で

地球に 地球に 生まれて知った 生きることの楽しさ

夜と朝とをくりかえし 人々を乗せ いつの日も回るよ この星は

愛と夢とをくりかえし 今日も明日も いつの日も回るよ この星は

『美しい星』より、作詞:山上路夫

地球を一個の生命とみた場合、いつまでも回り続けるわけはありません。儚く朽ちて形がなくなる日が来ます。人間一個の寿命のあいだでそうそう起こることではありません。当分そんなことはないので、地表のホモサピエンスの一個体である私の目には、地球が今日も明日も回ることは普遍に思えます。

誰のための歌か

たくさんの歌手がうたった『美しい星』。誰か特定の個人のための歌ではなく、種(しゅ)の歌。連綿と続く観念、一連の事象のための、一連の事象による、一連の事象がうたう歌です。楽曲『美しい星』自体も、連綿と続く一連の事象の一部なのですね。

ハネたグルーヴのリズムが、あたたかい。歓びを感じます。生命の讃歌なのですね。

青沼詩郎

参考Wikipedia>美しい星

参考歌詞サイト 歌ネット>美しい星

赤い鳥のアルバム『美しい星』(1973)

『美しい星』を収録した『旅立ち 森山良子1972~RYOKO NOW/ハートの10』(1972)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『美しい星 ピアノ弾き語り』)

余談 同名異曲 美しい星

美しい星という主題が普遍的なしるしでしょうか、同名の異なる曲も多い“美しい星”

ピチカート・ファイヴ

彼ららしい独特のフワっとした和音づかい、デシデシとしたドラムのリズムのサウンド。チリンとタンバリンが恒常的なアクセントで輝きを添えます。女声と男声のオクターブも恒常的ですが時折女声だけを残すことで浮遊感を演出します。

作詞・作曲:小西康陽。ピチカート・ファイヴ(PIZZICATO FIVE)のアルバム『プレイボーイ プレイガール(the international playboy play girl record)』(1998)収録。

新居昭乃

おおげさなリズムを省き、ハープのような撥弦楽器系の音色とピアノを中心に、あくまで和声的な要素の下地に歌声の描き込みの構図でエンディングまで言い切ります。

いえ、ある意味言い切っておらず、フェイドアウトし、結論を未来に託す演出・意図を感じもします。

後半のコーラスでリズムが入って派手になるのかどうなるのかと見守らせます。見守る鑑賞者の目線を誘引して、作品の最後のピースがはまる。そんな気にさせるバランス感が絶妙です。

アニメ映画『ウインダリア(Windaria)』(1986)の挿入歌・エンディングテーマ。作詞・作曲:新居昭乃、編曲:門倉聡。『ウインダリア オリジナル・サウンドトラック』(1986)に収録。新井昭乃のシングル『約束』、オリジナルアルバム『懐かしい未来』(1986)にも収録されています。