松田の子守唄 サザンオールスターズ 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:桑田佳祐。編曲:サザンオールスターズ、弦管編曲:新田一郎。サザンオールスターズのアルバム『タイニイ・バブルス』(1980)に収録。

サザンオールスターズ 松田の子守唄(アルバム『タイニイ・バブルス』収録)を聴く

松田さんの歌唱が澄み渡ります。基本の声域が高いですね。女声が自然にユニゾンで一緒に歌えるくらいの高さあるポジションに重心がある感じです。

エレピの伴奏でしっとりと幕をあけますが、音の景色が場面によって転々とします。気を惹くアレンジです。

ドラムスの音はカチっとしていて、点を留めていく鋭さ、確かさがあります。ハイハットが右に寄っていて、左寄りのシェーカー的なパーカッションの音色と対になって呼応します。

ベースのポジションが松田さんの声のポジションの高さに協調するみたいに高めのところを漂います。

エレピの伴奏を中心に、和音の低音位が細かく動いたり、かと思えば保続して上声の移ろいによる響きの複雑さ・可憐さを演出したりします。メロディと和音の基本的な美しさだけでも目を見張る洗練があります。たとえば白い画用紙に、ペンの素描だけで主要なモチーフのみをスケッチしても絵になるように。

トランペットのアレンジがビートルズの『ペニー・レイン』そっくりです。片鱗が遺伝しています。メンバーの趣味でしょうか。

1:08あたりの動きがオマージュポイント。

『松田の子守唄』の話に戻ります。

バックグラウンドボーカルの声の層が荘厳です。ミックスのまとめかた・分け方の妙もあるでしょうし、松田さんのそもそも埋もれない特別な声質も相まって、主従関係を阻害することがありません。

サビ・コーラスは荘厳、歌い出し〜メロはしっとりミニマル。音の情景の変化が豊かだと私が思う所以です。

さらにはエンディングにリコーダーがつきます。音程のカチっとしない学齢期の好奇心のような純朴なニュアンスが味で、童心は「大人」という観念に含まれているのだと大切な本質に気付かされます。安易な検索でWikipediaなどみるにリコーダーの演奏者が誰か特定できません。どのメンバーの演奏なのでしょうか。

このように、時代もジャンルも楽曲のスタイルも、いい歌・バラード的なカテゴライズをぎり受け付けてくれそうではあるのですが案外雑食で多様で、聴き飽きないのです。聴きどころがたくさんあるし、味わう角度が限定されません。松田さんの歌唱という素材ひとつとっても、ソロシンガーのような、例えばディーヴァ(歌姫)然としたような安直な存在感にもたれかかるスタイルでもなく、大衆の共鳴と唯一無二の個性の輪郭の双方を鑑賞者の内側に湧かせる魅力があります。民謡でもあり、エンターテイメント音楽でもあり、詩であり私的でもあるのです。

壮大な曲のようでいて3分でまとまっています。アクセスしやすい愛嬌があるし、時間に埋没しない耐久性もあります。誰に「名曲」とさわがれることがなくても、ずっと街を、時代を見守り、そこにあり続ける、風のように常に動きながら、目をそらした瞬間にそこにもういないのにずっとそこにいるみたいな粋を感じるのです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>タイニイ・バブルス

参考歌詞サイト 歌ネット>松田の子守唄

サザンオールスターズ 公式サイトへのリンク

サザンオールスターズのアルバム『タイニイ・バブルス』(1980)に収録。

Tiny Bubbles

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『松田の子守唄(サザンオールスターズの曲)ピアノ弾き語り』)