If I Needed Someone 恋をするなら The Beatles 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:George Harrison。The Beatlesのアルバム『Rubber Soul』(1965)に収録。

The Beatles If I Needed Someone 恋をするならを聴く

厚いボーカルハーモニーを聴くと、飛行機の旅を想起するのです、私。なぜなんでしょうね。

ただ、厚いボーカルハーモニーならばなんでもやみくもに飛行機の旅を想像するわけでもないと思うのです。

リードボーカルの上の音域にハーモニーが重なっているからでしょうか。ジョージが書いた曲。リードボーカルもジョージでしょう。ビートルズではポールが一番高い音域の声が得意でしょうから、一番上がポール、まんなかがジョンあたりの担当でしょうか。

このように、リードパートの上にハーモニーがあることが、空の上のような浮遊を感じさせるのかもしれません。

浮遊感を覚える要素としてそれよりもっと重要なのは、おそらく低音保続でしょう。Aメージャーの曲で、Aのベースの保続のうえに、GコードあるいはEmコードっぽい和声がのっかるのです。

のっかるというより、引っかかるかんじもします。崖から飛び出た木に引っかかった落下傘、みたいな……

話がそれますが、崖から落ちた登場人物が落命したかのように見せておいて、実は崖から飛び出た樹木やなんかに引っかかって一命をとりとめていた、みたいな演出をアニメや映画や漫画にみることがしばしばある気がしますが、険しく乾いた荒れ野のような環境の断崖絶壁に、あんなに都合よく樹木がたまたま横に向かって生えていることなんて現実にあるのでしょうか……ないとも言いきれないでしょうが……

話が逸れたのを戻します。ビートルズのステレオミックスにあるあるの極端定位。楽器ものはほぼ左。ドラムもベースもリズムギターも左。

右にボーカルとボーカルハーモニー。要所で、トップギターが右側に漂います。それからエンディングが近くなるとタンバリンも右にあらわれます。視聴者の視線を集めたいパートは右に振る、というデザインかもしれません。

ぽつねんとしたドラムに、シックスティーンのタンバリンが重なって、お互いを補完しあいます。この曲については、ドラムとタンバリンがひとつのステムという感じがしますね。

ベースは主音をしっかりとって、なおかつよく動きます。ハーモニーを歌いながら、動くパターンを弾いているポールが目に浮かぶようです。基本はリズムのリフレインと、まっすぐに伸ばすボーカルハーモニーで構築されているので、弾きながら唄うスタイルにも相性のよい特性を持った楽曲だと思います。

このリフレインを基本とした恒常的なリズムと、まっすぐに伸びる声のハーモニーの2点が、飛行機の旅みたいな浮遊感を私に与える主因かもしれませんね。

ビートルズらしさの一因でもあるギターの独特のきらびやかな音色。ジョージの12弦ギターだといいます。ホリーズがこの曲をカバーしていますが、特有のきらきらしたギターの個性はやはりビートルズの専売特許のようなものであり、真似しても及ばないし真似しなくても何か物足りないような気にさせる唯一無二の個性だとも思います(もちろんホリーズのカバーは、それはそれで良いです。セールス的には微妙? だったような向きもあるそうですが)。

Aの主音のベースを敷き詰めるヴァースに対して、BメロはⅤm→Ⅵ7→Ⅵ7→Ⅱm(Em→F#→F#→Bm)と、きゅっと身がちぢこまるようなマイナー臭いスパイシーな響きを中心にして対比をつけます。このBパート(ブリッジ?ミドルエイト?とかいうのかどうか)のキュっとした収縮感と、ヴァースの開放的な響きの振れ幅が気持ち良い。

シンプルでコンパクトな印象は、まっすぐなハーモニーとリズム的なリフレインと主音保続の長いベースによるものでしょう。

確かにシングル曲っぽい華には不足するかもしれませんが、清涼感があります。ライブのセットリストやアルバムにはこういう局面があると全体がシャンとすると思うんですよね。ラーメンでいったらネギです(ちがう?)。

The Hollies ホリーズによるカバー

ギターやバンドの音はナイーヴに、ボーカルはむしろ元気よく感じます。

ボーカルトラックが左右に割ってあってヘッドフォンで聴くと左右の隔絶を感じますがベースやキック、あるいはギターが真ん中あるいは左右にまたがっていて空間を接着している感じです。

あのビートルズらしいきらびやか痛烈な匂いのギターの音って、ほんとにビートルズだけのものなんだよなと痛感させられます。

ホリーズはこの方向でやるならバンドの音を初期のザ・フー『My Generation』とかを感じるくらい痛烈にファットに作った方が気持ち良く個性が出せたのではないか……などと生意気言ってみる私ですが、言い換えればホリーズの『If I Needed Someone』はドラム(スネア)のヌケが良いです。

参考:ザ・フーの名曲『My Generation』

青沼詩郎

参考Wikipedia>恋をするなら (ビートルズの曲)

参考歌詞サイト J-Lyric>If I Needed Someone

THE BEATLES ユニバーサルサイトへのリンク

『If I Needed Someone』を収録したThe Beatlesのアルバム『Rubber Soul』(1965)

参考書

ビートルズを聴こう – 公式録音全213曲完全ガイド (中公文庫、2015年)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『If I Needed Someone 恋をするなら(The Beatlesの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)