第ゼロ感 10-FEET 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:TAKUMA。10-FEETの配信シングル、映画『THE FIRST SLAM DUNK』(2022)主題歌(ED)。アルバム『コリンズ』(2022)収録。
10-FEET 第ゼロ感(アルバム『コリンズ』収録)を聴く
最高の讃辞だと解釈して欲しいのですが、何を言ってるのかと関心を湧かせる歌詞で、歌詞テキストを見てもやっぱり何を言ってんだ? というポカン感もあると同時に、意味じゃねぇんだよ、サウンドなんだ、響きなんだ、切れ味なんだ、爆発力なんだ! と合点しまくっている私がいます。ひたすらに深い感動を覚える、ブ厚く鋭く、情熱的でアグレッシヴでスタイリッシュな傑作です。直感への訴求力よ……『第ゼロ感』という主題の解釈も色々で良いと思いますが、ひとつ、シンプルに「第ゼロ感=直感」という解釈もアリです。
ズンズンと低音弦の深い響きが左右にダブってある感じ。3人がオリジナルメンバーの編成ですから、メインの同じフレーズのリズムギターを左右にダブルで振るサウンドがキマっています。シンプルなのに押し出しが強く、パワフルでホットなサウンドです。
キック四つ打ちの恒常的なスピード感のある曲調ですが、サビ前で逐いち、ビートを半分のテンポに落としたような音価の変化やあえてのブレイクで揺さぶりをかけます。まるでスリーポイントを狙って放ったボールがゴールリング付近に近づく一瞬をスローで見せる……そんな映像イメージを喚起するアレンジです。
打ち込み・あるいは同期的なアプローチ……シンセのアルペジエイターのようなサウンドが味付けで効果的にフィットされており、恒常なテンポ・グルーヴ感であるからこそ、生演奏のビートを唐突に殺すような緩急が映え、鑑賞者の注意をひきます。
ピアノの静謐なサウンドが骨太な3人編成の生々しいサウンドに奥行きや2重性を与えます。刻々と変化する肉体的な試合の状況と、試合に至るまでの人知れぬ個人練習の積み重ねをオーバーラップで同時に見せるようなサウンドです。ピアノはプログラミングなのでしょうか。演奏時間3分6秒あたりでバンドの轟音を止めて、強くディレイのかかったピアノの音色を露わにします。このモチーフはバンドがブレイクする前からさりげなくリフレインしているものを裸にした感じでしょうか。遠くからモチーフが近づいてきて、ついに目の前に来るみたいな演出にも思えます(ちょっと怖い話の“メリーさん”みたいですね……ホラーは関係ありませんが)。そこから歌詞“迷走smash……”の、大サビあるいはCメロのような佳境の展開に入り、ベースの動きが多くなり地面を揺るがし、会場全体を震わせます。
10-FEET語というのかTAKUMA語とでもいうのか独自のチャンポン言語ですが、「何言ってんだ?と思わせるのと同時に映画『THE FIRST SLAM DUNK』への書き下ろし主題歌というだけあって、ひしひしと「主題」と誠実に向き合うひたむきさ、慎重さ、確実にパズルのピースをはめる緻密さが私を深い感動に誘う一因でもあります。10-FEETとして、このプロジェクトの役割に全霊で応えた態度とその成果に感動するのです。これは評価されて然るべきですし、現実に大きく評価されているように思えるので、そこも含めて私はよりいっそう感動してしまう。作品の外側の現実世界の話かもしれませんが、現実世界の仕事として作品が成立したわけなので、無関係どころか現実のナカとソトは深くつながり影響しあっている、表裏一体のものであるのを痛切に覚えます。ブラボー。
この「スラダン」一帯に関与したみんなが嬉しかったんじゃないかと、世の中の心のうちを想像します。
青沼詩郎
第ゼロ感 (from 京都大作戦2023) – Single ライブテイクの発表がある
ボーカルのオブリガード“Wow…”が大聴衆。これ参加したら絶対楽しい。楽曲本来の威勢の良さと会場のスケール感・空気と確かな演奏が堪能できます。
YouTube 10-FEET 公式チャンネル >10-FEET – helm’N bass (アサヒスーパードライ × 3×3.EXE PREMIER 応援ソング)へのリンク
2024年7月3日リリースの『helm’N bass』。SFファンタジー・冒険ものの長尺映画のような3DCGのアニメのビデオです。熱帯のレゲエのようなイントロを経て疾走感を増していきます。歌唱、歌詞、サウンドのバラエティの振れ幅激しい10-FEETらしい独創性が光ります。
『第ゼロ感』を収録した10-FEETのアルバム『コリンズ』(2022)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『第ゼロ感(10-FEETの曲)ギター弾き語り』)