J-WIDで『Sloop John B』を検索しますと、副題”ジョンB号の難破”ですって。直接的ですね。
Sloop John B The Beach Boys 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Brian Douglas Wilson。オリジナルはバハマ諸島の民謡だといいます。The Beach Boysのシングル、アルバム『Pet Sounds』(1966)に収録。
民謡がオリジナルですから、作詞作曲クレジットはあくまでThe Beach Boysバージョンに対しての名義がBrian Douglas Wilson、ということでしょうか。バハマ民謡のオリジナルの”John B”についてはもはや詠み人しらず、パブリック・ドメインといったところか。
The Beach Boys Sloop John B(アルバム『Pet Sounds』収録)を聴く
この曲、ウルフルズきっかけで知りました。歌詞を変えて、日本語でコミカルにパフォーマンスしていて……遊びが主旨という感じのカバーだったのを記憶しています。
それからオリジナルのビーチボーイズに行き着くという世代(必ずしも世代のせいじゃないけど)の私です。
そのビーチボーイズ当人も、この『Sloop John B』においてはゼロからイチを生む的な意味でのオリジナルではないよう。”バハマ諸島の民謡”ですって? バハマってどこよ(無知で恐縮です)。
オリジナルの起源はさておき、サウンドがどこまでも彼ら:ビーチボーイズ。一個一個の音の個性にしても、その重なり方にしても、彼ら意外ありえない、特有のサウンドを成しているのが目を見張るところです。
フルートだかリコーダーのフォーっという空気の流れる清涼な音色。愛嬌があります。純朴さ、童心、幼さを思わせる音色でもあります。まっすぐに伸ばす音形(フレーズ)のせいかもしれません、音色のせいではなく。でもリコーダーの音は特に日本育ちの私には学校教育を思わせるので、その意味で、発達段階にある人たちの音、という印象があるのも事実です。
ベースの音がまた変なんだ……入り方もなんじゃそら?!とつっこませる独特の入り方です。基本パターンもなんか独特、ほかでよく聴く典型的なふしまわしという感じがしません。これがバハマ民謡なんか?! ベースフレーズにバハマ民謡を感じてしまって正しいのかわかりません。ベースの音色自体も個性的です。太く、線に幅がある。ですが、単純にダブリングすればこういうサウンドになるのかといわれればそれも違う気もします。ラインとアンプ・キャビネット・マイクを経由した音を混ぜているのでしょうか。しまいにはサックスを思わせるぶりぶりっとした低音が似たような音域にジョインしてきます。ただでさえ竿物ベースがぶりっとしたキテレツなサウンドをしているのに……。サックスにしても相当低い音域に感じますが、こんなに低い音域のサキソフォンもあるのでしょうか。
ギターの音が清涼で、あまく、耳にまろやかです。リズムを刻むとかオブリガードやカウンターメロディを入れるというよりは、終始、頭のなかで天使が飛び回っているみたいなエレキギターが可愛いのです。飛び回る天使か、お花畑か……私は連れて行かれてしまいます。
ボーカルのサウンドも独特です。ただ層が厚いというのでもない。リードボーカルが埋没しているのでもないが前面にしゃしゃりでて、他と隔絶して主張するのでもない。あくまで調和しています。こんな音像ってある?……どうやったらこんな音が録れる? どうやったらこんな歌が歌える? 私はかなりビーチボーイズの音の麻酔にやられはじめています。
スループ・ジョン・ビー。スループというのはつまり帆船のことだと思っていいようです。この記事の冒頭で「難破」とある副題について触れました。帆船のジョンB号の災難について語った曲……と思っておきます。
ウルフルズが「スリープ・ジョン・ビー……」と歌ったせいで、なんだか眠い子の歌みたいな印象があります。実際にぽへーっと可愛らしい笛の音色が眠たい感じもわからなくもありません。安寧を思わせるサウンドなのです。難破といった災難や極限状態よりは、それを超えてしまって、意識が花園に到達してしまった情景を歌っているような耳福なサウンドです。
はみだし話 バハマってどこや
はい、ずばり、中米のちょい東かあるいはそこからややちょい北に浮いたあたりでしょうか。ざっくりすぎてすみません。外務省サイト>バハマ国 貼っときます。キューバの北東側の海と島って感じでしょうか。西インド諸島。カリブ海からみてキューバの向こう側。北大西洋に属する海……の帆船くんの歌なのですね、きっと。
難破とか帰りたいとか色んなタイトル
それをビーチボーイズよりも早い時代にKingston Trioが『The John B Sails』として歌ったと音時さんのブログサイト:洋楽和訳 Neverending Musicの記事(Sloop John B / スループ・ジョン・B(The Beach Boys / ビーチ・ボーイズ)1966)が書いていますがWikipediaの英語ページ>Sloop John Bなど見ますと1950年台に『I Want to Go Home』や『Wreck of the John B』など複数のタイトルで発表されてきた様子がうかがえます。同英語Wikipediaページによれば、この民謡が書き取られ出版されたのが1916年であるようです。古いですね。元号でいったら大正時代。それだけで安直に時空を超えた浪漫が香ってきます。脳がバグってるのかな私。
ウルフルズのSleep John B
これです、わたしのなかのジョン・B。あらためて聴くに、「しょーもなっ」という最高の褒め言葉としてのツッコミとニヤニヤで頭の中がいっぱいになります、いえ、頭の中と同時に実際にヘッドフォンでこれを聴く私の顔面はニヤニヤでした。
歌詞が主にしょーもないのです(褒めてます!)。聴き終わるころには、なんだか元気づけられています。ウルフルズの異次元パワーでしょう。
『Sleep John B』収録アルバムは『ええねん』(2003)。しかもオリジナルアルバムの本体というよりは”ジョン・B・チョッパー復帰記念特別ディスク”とした“Disc2”、『A・John・B・CD』に収録です。AだかBだかCDだか混乱します(参考サイト タワーレコード HMV & BOOKS ウルフルズ公式サイト>アルバム ええねんのページ)。
JASRACの管理楽曲を調べられる検索サイトJ-WIDでもNexToneサイトでも『Sleep John B』がヒットしません。歌詞掲載サイトの歌ネットで『Sleep John B』ページを見ると作詞者名はBrian Wilson。んなアホな……
先人への敬意、そしてジョン・B・チョッパーの復帰を純粋に祝う意図を込めて、オリジナルの日本語歌詞に対する著作権登録をしない!という道を選ばれたのでしょうか(私の想像です)。メンバーの脱退とか復帰とかさまざまな難破にあっても、いまこの瞬間の希望にこぎつけるのです‼︎
青沼詩郎
The Official Website of The Beach Boys へのリンク
『Sloop John B』を収録したThe Beach Boysのアルバム『Pet Sounds』(1966)
『Sleep John B』を収録したウルフルズのアルバム『ええねん』(2003)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Sloop John B(The Beach Boysの曲)ギター弾き語り』)