Substitute 恋のピンチ・ヒッター The Who 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Pete Townshend。The Whoのシングル(1966)。
The Who Substitute 恋のピンチ・ヒッター(『Meaty, Beaty, Big and Bouncy』収録)を聴く
自分を卑下するよりも受容し受け容れ、建設的な意思を持つのが希望だと重々思うのです。それでも吐き捨てる言葉があるのもよくわかるのです。世の中は俺のことなんか見ちゃいないよと。
substitute。代用品。代わり。補欠。そんな観念を示す単語でしょうか。
恋愛でいえば、本命でないその他大勢のことなのか。
人気がそのまま生きるか死ぬかに直結するミュージシャンやらアーティストであれば、substituteであっては明日がない。その規模がある程度限られたものであったとしても、一握りの集団における一番でなければ車輪が回っていかないのが儚い商売であるミュージシャンやらアーティストです。
あるいはある程度の規模の人に代用品としてであれば受け容れられているのであれば、それは勝てる戦略かもしれません。というかほとんどの仕事がそれに相当するのではないかと思えるほどです。一体、あなたの人生から何を消し去ろうともこれだけは最後まで残したいものってなんですか? と問われたときに選んでもらえるそのものに直接かかわる仕事などどれだけあるといのでしょうか。かなり多くの人が、最後の最後に残すものを問われたときには切り捨てられるようなものごとに心血注いで生きているのではないでしょうか。私は視野が狭すぎるでしょうか。
自分の人生の主人公は自分です。誰にとってもそうですから、あなた以外のすべての人にとってあなたはSubstituteでしかないのです。この言葉はブーメランであり私自身も、あなたやあなた以外のあらゆる人(除く、私自身)にとってSubstituteでしかありません。私にとってSubstituteでないのは、私だけなのです。あるいは、私にとってでさえ、たった一度に思えるこの人生だって命の輪廻のなかから借りてきたSubstitiuteでしかない……私の思想を飛躍させる壮大な主題です。
アコギっぽいギターのオープニングのリフ。12弦ギターなのか、ワイドで輝かしい音像です。
ゴモゴモと凶悪に歪んだベースパターン。ドラムスがバンバンと猪突猛進。ギターよりもボーカルよりも俺を聴けといわんばかりにタンバリンが闇を切り裂きます。すべてを勝手にやっていろといわんばかりに自律したボーカル。バンドに一瞥をくれてやるでもなくここにただ我ありという孤高の空気をまとって思えるのは私の気のせいでしょうか。
すべてがモノラル、一本のスピーカーの回線をとおって私を襲ってきます。すべてが雑言にしか聴こえません。私のなかで私の爆音が鳴っているのです。あなたの心のなかにもこの轟音が炸裂しているのであれば、奇遇ですね。Substitute同士のハイタッチをかましてやりましょう。
青沼詩郎
参考Wikipedia>恋のピンチ・ヒッター、ミーティ・ビーティ・ビッグ・アンド・バウンシィ
『Substitute』を収録したThe Whoのベスト盤『Meaty, Beaty, Big and Bouncy』(1971)