時計をとめて わらべ 曲の名義、発表の概要

作詞:荒木とよひさ、作曲:三木たかし。わらべのシングル(1984)。

わらべ 時計をとめて(『イモ欽トリオ&わらべ ゴールデン☆ベスト ~欽ドン!欽どこ!?秘蔵っ子!!~』収録)を聴く

テレビの企画から誕生したグループであるのを考慮して、意図的にツッコミを誘いに来ているような気もするし本人たちは至って真面目であるが故にかえってツッコミを誘発してしまう気もする大仰さが持ち味です。

大仰に感じる一番の理由は、超超超ロングタイムの残響でしょう。パイプオルガンの音色が、まるで天井まで何十メートルあるんだ?! という大聖堂(大大大聖堂……)を思わせます。

ピアノの伴奏が手堅い。このトラックと歌さえあれば成立します。私の理性を保ってくれるトラックです。

ミュージック・チャイムの音色というのか、シンセで出したような音。それから先に述べたパイプオルガン系。あとはストリングス系なのか、あるいはコーラス(クワイア。人の合唱の声風の音色)のようなものを感じる瞬間もあるのですがストリングスと混同した私の気のせいでしょうか。シンセで演奏したっぽい系の音色が多彩に変化しながら、ピアノの伴奏による骨格に彩や景色を与えます。

一発だけ鳴らして超超超ロングフィードバックのディレイをかけたようなハイハットとタンバリンの中間くらいの音色がこだまの尾を引きます。途中、チキッ……と時計の針を思わせる音色が左右に定位を分けて交互に鳴ります。

エンディング付近で大仰でロックなドラムが入ってくるのも私のツッコミ心をくすぐります。ちょっとロネッツ『Be My Baby』を思い出させるような荘厳なドラムです。低域の轟き(とどろき)感が半端なく、和太鼓か大太鼓かティンパニかと思うくらいの質量のぶっとさです。キックドラムなのか、フロアタムなのか、あるいは実物のグラン・カッサ(大太鼓)などを用いているのか聴き分けかねますがとにかく轟きかたが半端ではありません(重複承知で繰り返す)。

転回形のポジションを多用したピアノやミュージックチャイムの和声がクラシカルでロジカルで古典音楽のようです。教会や聖歌っぽいスタイルをこの少女たちのかろやかな冬っぽい恋だか親愛の歌と融合し独自のスタイルを構築する意図でしょうか。基本形の低音位でいる瞬間がほとんどないくらい、常に教会の高い天井の空間をさまようサウンドと和声です。

少女の歌声は甘くくすぐったい。息が気管を抜けるしゅわしゅわした高域が耳をソワソワさせます。近接したマイクにのるピチッ、カツッと口腔に由来するリップノイズまでも生々しく、ぞわわ感。この甘々な感じも私のツッコミ心をくすぐります(あくまでエンターテイメント音楽として許容範囲のゾワワ感であり、むしろ褒める態度として、です)。

作詞者の荒木とよひささん、それから作曲者の三木たかしさんご両名の作品で私の心に大きな存在感を残すのは九ちゃんこと坂本九が歌い合唱曲としても親しまれる『心の瞳』です。荒木とよひさ作詞・作曲『四季の歌』、三木たかし作曲『アンパンマンのマーチ』(作詞:やなせたかし)も私の心に残る作品例として思い出されます。

私の心のチャイムががらんがらんと冬の冷たい空気に轟く、わらべ『時計とめて』を彼らの作例の記憶に関する私の心の最新のページに加えておきます。

余談だけど、『時計をとめて』って同名異曲がむちゃくちゃ多いな……色々聴き漁る楽しみが広がりました。

青沼詩郎

参考Wikipedia>時計をとめてわらべ

参考歌詞サイト 歌ネット>時計をとめて

『時計をとめて』を収録した『めだかの兄妹~わらべ全曲集~』(1995)

『時計をとめて』を収録した『イモ欽トリオ&わらべ ゴールデン☆ベスト~欽ドン!欽どこ!?秘蔵っ子!!~』(2011)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『時計をとめて(わらべの曲)ギター弾き語り』)