Every Breath You Take 見つめていたい The Police 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Sting。The Policeのアルバム『Synchronicity』(1983)収録のシングル曲。
The Police Every Breath You Take 見つめていたい(アルバム『Synchronicity』収録、Remastered 2003)を聴く
ビートがまっすぐです。サウンドの景色もシンプル。エイトビートをポッポッポ……と恒常的に置いていくベース。短めに弾ませるように切るストロークにニュアンスがあります。
ドラムはあまりチクチクと細かく分割を出しません。スネアの音が強くて、しかし耳にはマイルドです。パワーもエッジも感じるサウンドが恒常的に2・4拍目に炸裂します。
エレキギターはブリッジミュートしながらアルペジオっぽく少し動きをつけたサウンドです。コーラスというのかブリッジのところでジャーンと歪んだサスティンのあるストロークを広い音価で置き、音の景色を一気に開きます。ギタープレイが楽曲の印象や展開をいかに左右するかを思います。特にポリスのように3人と最小限のバンド編成ですとその音色ひとつの占める印象の割合は大きいでしょう。
ギターのサウンドが音の景色を大きく左右しますが、ピアノの音色がこんこんと扉をたたくようにカウンターメロディを2分音符くらいのおおまたぎで添え、リスナーの視線をほどよく動かします。
静かなところでほあーっとシンセ系の音色が3人のオリジナルメンバーの奏でる抑制の効いたミュートサウンドに広がりを与えます。3人編成のオリジナルメンバーのみでライブで再現しきるのとはあくまで違って、録音作品としての音の景色の広まりや奥行きが演出されています。長く聴き続け、愛好しつづけたくさせる所以です。
ビートがまっすぐなのですが、主題もまっすぐです。見つめていたいと邦題されたこの作品。愛はときに、執拗な行動をその持ち主に起こさせることもあるでしょう。見つめていたい、を凝視と言い換えても良いかもしれません。あるいは監視です。
あなたの一挙手一投足をぜんぶ見ているよ、感じているよ、と……そういった、ストーカーじみたくらいに徹底したまなざしを描いているのだと読む筋もあるでしょう。
ある程度、それぞれの尊厳の表現として、相手を自由にさせたり、相手を観察しすぎたりしないことは、多くの人にとって良好なパートナーシップを築く基本態度となるようにおもいます。
ですが、ときには、偏執的な恋愛嗜好を持つ少数の人においては、常識的には行き過ぎと思えるくらいの束縛をし合う関係が望ましいと思う場合もあるのでしょうか。
いち恋愛としてはそれもいいかもしれませんが、やはりそれ以上に、長く複雑な人生のステージの変化を共にするパートナー関係であれば、やはりある程度さらっとした、お互いを信用して自由にさせ、観察しすぎない塩梅が成功の鍵であるように私は思います。
偏愛ソングの名作として『Every Breath You Take』を推しておきましょう。パっと見は純愛の歌っぽくも見えるところが、この楽曲の有する深いウィットでもあります。
Every Breath You Takeの歌詞の解釈やスティング本人の弁など、検索するといろいろ出てきます。それを踏まえて改めて楽曲を味わうもよし。そんなガワ(外側)の世界の話は無視して名曲をまっしぐらに見つめるのも良いでしょう。
青沼詩郎
『Every Breath You Take』を収録したThe Policeのアルバム『シンクロニシティー』(オリジナル発売:1983年、40周年記念エディション:2024年)