Viva La Vida 美しき生命 Coldplay 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Guy Berryman、Jonny Buckland、Will Champion、Chris Martin。Coldplayのシングル、アルバム『Viva la Vida or Death and All His Friends』(2008)に収録。

Coldplay Viva La Vida 美しき生命を聴く

恒常的なビート・テンポ、恒常的なコード進行を秩序に音景が移ろい展開していきます。永久にリピートで聴いてしまいます。

音数や音色の出入り・変化で聴かせます。恒久なテンポやビートや和声の繰り返しがあるから、こうした音の景色の出入りを魅せることに成功しているのでしょう。いろんな要素が一気に変化してしまうと、それはそれでリスナーに情報処理の混乱をもたらしてしまいます(そういう音楽にもそれ特有の魅力があるのも一理ですが)。コールドプレイを世界のモンスターバンドたらしめた、この楽曲『美しき生命』を世界の古今東西に渡らしめたのはそうした情報量の展開の塩梅に万人への敬虔な慈愛が込められているからかもしれません。

ビートやテンポや和声進行は恒常的なのですが、ボーカルに緩急があります。可憐なダイナミクスや声色の幅など演奏面はもちろん、歌詞にも英語力ネイティブ3歳児(未満?)の私には独特の堅さ、あるいは古典的な質感を思わせる異質な語彙や言葉選びの感性を覚えます。宗教に関連のある要素や革命がモチーフとして描かれているようです。意味に注視すると、私の首が銀の皿に載せられるのを革命家が待っているみたいな意味合いのラインがありもして、なかなかぎょっとさせるフレーズです。

リードボーカルのリズムが変則的で、語彙の起こるポイントがバー(小節線)にまたがる位置が箇所によって多様。弱起(アウフタクト)が変則的です。このリズミカルで、まるで演説を聴衆にたたきこむ、たたみかけるようなボーカリゼーションが楽曲のアイデンティティと魅力の根幹です。

中低域のストリングスが刻み、ベーシックリズムをなします。中高域は長いサスティンも演出しますし楽曲の印象や音の比率を大きく占める要素です。ベースが1コーラス目が明けると一度席を外し質量を軽くするなどアンサンブルの重さ・厚さにメリハリをつけます。ドコどん!といったティンパニのインパクトも壮大です。

古楽器・チェンバロにも似た音色が波状の音形をコーラス間に浮かびます。生ピアノの音も要所を彩り私の意識をひきつけます。エレキギターはリズムを補強・描くよりも、漂うような独特な輪郭が宇宙に溶けていきそうな音色で天井を広げまるで彗星の尾を描く幻想的なアクトです。

エンディングはビートが止み、メロトロンに仕込まれたアナログテープのサンプルみたいな質感のコーラス(バックグラウンドボーカル)が「Woo」……と残ってアルバムの次曲にシームレスにつながります。

大衆音楽であり商業音楽でもあるのに、その側面を悠然と超越する恒久な思念が独創の高みです。

この曲がリリースされたくらいの時代、私は高校生時代に愛用したMDをほぼ卒業して、CDから取り込んだ音楽をもっぱらiPodで聴いていました。なんだかそういう、媒体やプラットフォームが新しくなり時代や社会が移ろうさまの象徴がこの楽曲『Viva La Vida』であったり彼らコールドプレイの存在感と重なるところがあります。群衆の導き手なのです。あるいは、楽曲が描くのはそうした群衆に斃される「古き王」側の目線の歌でしょうか。

己の中の古き王を斃し自己改革を続ける道もまたイバラです。でもそれを続けざるを得ないのが王の道なのでしょう。

青沼詩郎

参考Wikipedia>美しき生命

参考歌詞サイト KKBOX>Viva La Vida

Coldplay 公式サイトへのリンク

『Viva La Vida』を収録したColdplayのアルバム『Viva la Vida or Death and All His Friends』(2008)