幸せの道 ザ・ワイルドワンズ 曲の名義、発表の概要
作詞:なかにし礼、作曲:加瀬邦彦。ザ・ワイルドワンズのシングル『愛するアニタ/幸せの道』、アルバム『ザ・ワイルド・ワンズ アルバム 第2集』(1968)に収録。
ザ・ワイルドワンズ 幸せの道を聴く
常に地鳴りがしているみたいな轟音がカッコイイ。
はっきりした定位なのですけどうまく溶けてもいます。右にドラムス、リードギター。左にベース、リズムギター、オルガン。真ん中にダブルのリードボーカル。わかりやすい(最高)。
ドラムスが16分でタムを連打するイントロ。非常に手数が達者です。レギュラーグリップでジャズでもなんでもいける箱バンかという玄人の雰囲気ただようドラムを中心に、バンド全体としてもうまい。ただの流行に乗っかったGSグループではなく、ワンズは名実ともなうグループだとあらためて思えます。
右のリードギターの鋭いのだけれどカドが丸くも感じる独特のサウンドがラッパみたいです。ドラムがタムをごろごろ転がす間断ないサウンドを敷くうえで、リードギターがおおまかな音価のフレーズを浮かべる構図がキレイです。
左トラックのオルガンは私の脳髄を麻痺させる独特のクセ強なのだけど愛嬌もあるサウンドです。GSによくあるピーピーサウンドにも思えますがやはり耳ざわりがマイルドです。バンド全体についても、迫力あるサウンドですがアナログらしいぶっ飛び感ある耳にマイルドなサウンドが嬉しい。オルガンは回転(ロータリー)スピーカー系なのか、真夏に扇風機に向かって「アーーーー」としゃべりかけた時みたいな切り刻まれた周期的な強くはっきりした揺らぎがあります。扇風機に向かってしゃべる変声あそび。誰でも青少年期までに一度はやったことがあるのではないでしょうか。
ボーカルのポジションがけっこう高いところまで……音名でいうとGまで達するところがあります。メロディを歌いこなすリードボーカルの確かさが嬉しい。Fmキーで、エンディングでピカルディ1度。メジャーの響きでパッと開いて結びます。
重ね合わせの幸せと悲しみ
幸せになりたくて
ぼくは今 生きているのさ
悲しみのない国へ
行きたくて 愛しあうのさ
何処かに
あるだろう
涙なんかのない国が
『幸せの道』より、作詞:なかにし礼
恋。愛。大衆歌の2大テーマです。その次は何か? と来たら幸せ、幸福でしょう。あるいは恋や愛は幸せの大テーマに含まれる中・小テーマかもしれません。
悲しみがあるから喜びがあります。ずっと心電図が平坦に凪いでいたらそれは死んでいるのと同じです。言葉が不吉ですね……「止まっている」のと同じ。生きることはすなわち動くことです。バイオリズムがある。波が動くこと。悲しみは幸福の必須要素です。波なんかのない国がないとわかっているからこそ嘆くのです。金が無限にあったらいいなあ……ないとわかっているから嘆くのです。卑しい嘆きになってしまいましたね……みんなが一生、ずっと幸せなままでいたらいいのになあ!……それも、やっぱりなんだか嘘くさい宗教みたいでコワイ。
やっぱり、想定外のことが起こるし、すべてが予定した通りになりません。思わぬアクシデントが起こりますし、未来は常に人の想像の上をいきます。幸せも、一種の幻想みたいなもの。幻想といいますか、観念なのですね。やっぱり、赤という色以外にたくさんの色があるから赤という色の観念が成立するわけです。青も緑も黄色もあるから識別が起こるわけです。無限のグラデーションで、それらは連続して、癒着してもいます。
悲しみしあわせも、ひとつの道で通じているということですね。あるいはたくさんの道が、別々の道であると同時にひとつの道である、という観念が重ね合わせになっている。なんだかシュレディンガーの猫みたいな話でしょ?
幸せは あこがれさ
水色の あの星のように
星よりも美しい
君の眼に幸せがある
『幸せの道』より、作詞:なかにし礼
向こうからみればこちらも水色の星なわけです。一人ひとりが数多の星を秘めた銀河です。私やあなたの眼にも宿る星があります。見つめあったり、交わり合ったりもします。ロマンチックですね。
青沼詩郎
THE WILD ONES OFFICIAL WEB SITEへのリンク
『幸せの道』を収録したアルバム『ザ・ワイルド・ワンズ アルバム 第2集』(1968)。階段とメンバーの配置、ポーズ、表情、衣装……GS名ジャケットのひとつに激推ししたいきれいな構図と細部のジャケ写です。今みても、今の作品に見えるのです。
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『幸せの道(ザ・ワイルドワンズの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)