空に太陽がある限り にしきのあきら 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:浜口庫之助。編曲:小杉仁三。にしきのあきらのシングル、アルバム『’71の太陽』(1971)に収録。
にしきのあきら 空に太陽がある限りを聴く
“愛してる”が占める全体の割合よ。きみ、ぼく、太陽、愛してる。楽曲を構成するモチーフがもうほぼこれのみ。必要十分。不純物が紛れる余地など銀河系のソトなのです。
にしきのさんのやわらかいボーカルの風格。女声ボーカルが主役を立てるのにそれ自体としての存在感も際立っています。すっと主役のうしろに立つ瞬間と、主役と音域を分けたり、タイミングを分けたりして完璧なまでに補完しあいます。
右のほうにタシっと抑制の効いたドラムが定位。ダイナミクスの筆致が手練れです。
ベースはまんなかあたりでしょうか。爪の長めの指で弾くとこのストロークのアタックの質感が出るのでしょうか。笑ってしまうくらいに描き込みが細かいイントロ付近、からのAメロで落ち着きのある態度。ドラマーとベーシストのコンビネーションが練れています。スタジオミュージシャンでしょうか。グルーヴィーなのです。
右にエレキギター、左にグロッケンシュピール。これらがピタリとシンクロして、太陽にまけじとエネルギーを放つ、きらんと空に輝く一等星のように的を絞ったアクセントを添えます。
左のほうには音量小さめですが猛烈に細密なストロークを16分割で刻むエレキギターがいるようです。風通しのよいスペースを邪魔しない音量感ですが、グルーヴと質量感を補強します。
ストリングスの各パートの出どころの分かれ具合が連携の良さを印象づけます。ストリングス総体としてダンゴになることなく、チェロならチェロ、ヴァイオリンならヴァイオリンとそれの線を感じさせるのです。サオモノとドラムのベーシックリズム、グロッケンにストリングスにトランペット……ひととおりの大所帯が揃っているにもかかわらずこの風通しの良いサウンドはなんだ。編曲のお手本にしたいですね。素晴らしい。
トランペットのダブルになっているサウンドが勇敢でこれまた良い。空に太陽があるのだけれど西に傾いていて……地平に沈むのを追いかけたくなります。ここから走り出したい、青いエネルギーが赤い西日の波長に引き寄せられる気持ちです。
浜口庫之助さんの作詞作曲。Aマイナーで調合のまっさらなシンプルさ。奇を衒う和声も歌詞のモチーフも太陽のまっさらなエネルギーのまえではくらんでしまうからそもそも要らないのでしょう。
ひっかかりのある個性的な言葉づかい、音楽上の仕掛けやアクセントのあるサウンドの趣向にパラメータ全振りしているような先端のエンターテイメント音楽の複雑さや交雑性をうかがいつつも、たまにこの指標『空に太陽がある限り』を仰ぎ見て己の現在地を確認したくなる。そんな黄金の名作ではないでしょうか。
ランドマーク……というか太陽は空にあるからスカイマークとでもいうのかな。そんな単語はないよな……ほらまた些末な言葉のフックに注意を割いてばかりな私が顔を出すぞ。太陽を感じろ!
青沼詩郎
『空に太陽がある限り』を収録したにしきのあきらのアルバム『’71の太陽』(1971)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『空に太陽がある限り(にしきのあきらの曲)ウクレレ弾き語りとハーモニカ』)