London Calling The Clash 曲の名義、発表の概要

作詞 ・作曲:Joe Strummer、Mick Jones、Paul Simonon、Topper Headon。The Clashのシングル、アルバム『London Calling』(1979)に収録。

作詞作曲は当時のバンドメンバー名義での著作権登録になっているようです。Wikipediaをみるにジョー・ストラマーとミック・ジョーンズによるソングライティングである旨がうかがえます。

The Clash London Callingを聴く

ジョー・ストラマーによる野太い声がビチビチとほとばしり収録現場からこちらまで飛沫が飛んできそうな気概に満ちています。

特筆はふわっとしたアンニュイな響きです。Emのダウンストロークを4拍置き続けるギターが印象を占めます。ベースはひらりと河川の堤防の上にでも飛び乗るかのように飛距離のある上下行を見舞います。

EmあるいはGメージャーを基調としている感じなのですが、ベースはナチュラルFの音程も用いています。何調なのかよくわからない。ちょっとCメージャーの世界線でいる気持ちになる瞬間もあるのです。コーラスの結びの句、“I live by the river”のところでDのコードをつかって、GメージャーあるいはEmとしてのシャープ一つの調っぽい動きが出てくるのですが、それもそこだけのハナシ。

ギターはミ・ソ・シの音を強く鳴らし、それを繰り返している感じなのですが、それに覆い重なるようにベースがCの音程を使ったりナチュラルFの音程を使ったりして、バンド全体……複数の竿物楽器の集合によって曖昧で浮遊感のある響きを形成しているのです。これが、この楽曲特有のくぐもった暗雲たちこめる都市の空みたいなくすんだ色彩を私に強調する要素です。

ドラムが的確で生命力に満ちています。シャッフルビートというのか。3連の分割をスティックのオルタネイトストロークではっきりと出し、キックでは4つ打ちを明瞭に出します。ところにより3連の真ん中を抜いて「ツッツ・ツッツ……」としているところもある。豪快でありながら、実に器用で音楽的に的確な叩き分けを見せます。

ドラムのこの達者な印象……そうそう、クラッシュといえば私は『I Fought the Law』で知りました。

あの曲の豪快なドラミングも記憶に残る名演です。2000年代初頭くらいの『QUE!』というコンピで聴いたのです。日本のテレビCMなどに使われた洋楽をあつめたコンピでした。CM(確かクルマのCMだったかな)で曲の痛快な明るさと勢いに魅せられて、クラッシュの『I Fought the Law』を収録したくだんのコンピを買った記憶があります(軟派にもオリジナルアルバムでなくコンピを買ったのは、他にも気になる曲が複数収録されていたので……)。

アルバム『London Calling』を、表題曲を聴く流れのままつるっとかけていると、その音楽的な多様さ・幅広さに気づくのはたやすいでしょう。私は彼らバンドのそういうところが好きなのです。正直、私はパンクという音楽スタイルそのものやジャンル自体については、これといって贔屓するほどの強い関心は覚えかねるのですが、クラッシュは私にとって特別です。別にパンクにカテゴライズされようと外れようと(超越しようと)どうでもいい。もう一度くらい言っておこう、クラッシュは私にとって特別なのです。

あいまいな澱んだ響きをずっと繰り返し、ビートを強調し、“ロンドンより告ぐ……”と説き伏せるか刷り込むかのよう。世の中がどんなにひどい有様で、自分の街にまでその火の粉が降りかかっていようと(あるいはすでに燃えていようと)俺もここに棲息しているんだと。ただそれだけのことを言うための、愚直……いえ、率直のダウンビートなのです。黙ってお利口に言うことを聞いて静かにしているわけにもいかない。けど今すぐすべての原子力を宇宙の彼方に神隠ししてしまうなんてこともできないし、その是否自体に今ここで決着をつけようというのでもない。ただただ、でも今ここにある自分と自分を取り巻くその様相・環境を叫ばずにはいられない。ロンドンから、俺らの息のかかるところならどこまでも遠く響かせて!

めちゃくちゃ楽曲の話を逸れるのですが、カナダにもロンドンという名の街があります。それ(ロンドンのみ)どころじゃない、カナダにはイギリス由来の地名が他にも数多ひしめいていると最近知って驚きました。それはやはり、イギリス領だった時代があることの名残といいますか、史実の証人としてのイギリス地名なのです、やはりというのみ。そういうことかと膝を打ちます。俺らのお膝元の名前をお前らに与えてやるぜという……(謎に高圧的なキャラづけは私の妄想による脚色ですが)。

エンディングの強いディレイの返りとポツー……という信号音の印象も強い。単純そうに見えて音楽的に意匠を狙い澄まされたビート、濁った撥弦楽器の響きと鋭さ、同音連打の多いメロディともいえないメロディのすきまでボーカルが吠える、叫ぶ。混沌そのものを曲にするとこういうことになるんだ。

この世は美しいなんて綺麗事がときには馬鹿馬鹿しく思えるのも無理はないし、かといって中指立ててクソだというのも違う。身にかかる火の粉を振り払って、とりあえず今日を必死でしのいでいるだけなんだ。またロクでもない「お告げ」が飛んでくる。心の中でため息をついたりつかなかったりしながら、私の心臓は今日の分の鼓動をきっちり続けるのです。そうか、最後の信号は心臓の鼓動なのかもしれないね。モニターに映るバイタルサインだよ。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ロンドン・コーリング (曲)ロンドン・コーリングザ・クラッシュ

参考歌詞サイト KKBOX>London Calling

The Clash ソニーミュージックサイトへのリンク

『London Calling』を収録したThe Clashのアルバム『London Calling』(1979)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『London Calling(The Clashの曲)ギター弾き語り』)