Daydream Lovin’ Spoonful 曲の名義、発表の概要
作詞 ・作曲:John Sebastian。Lovin’ Spoonfulのシングル、アルバム『Daydream』(1966)に収録。
Lovin’ Spoonful Daydream(アルバム『Daydream』収録)を聴く
気分がいいのか気怠いのかよくわからない。そこがいいですね。聴いているぶんには私はごきげんなのですが。この歌の主人公は何か苦しみを抱えているように思えてならないのです。
ボーカルにそんな、気分の二重性を思わせるように表現の振り幅があります。とつとつとしゃべりはじめるヴァース。これはマイクが近めで低域が豊かに出ている感じです。近接効果ですね。ブリッジというのかBメロのところになると声量があがるぶんマイクから遠ざかって歌っている感じです。歪まないように、マイクとの距離を声量に合わせて瞬時に調節する。ボーカリストの技量のうちです。
ブリッジというのかBメロ、といってみましたが、この曲はコーラス(サビ)っぽい部分がありません。ABA形式です。こんなところも、なんだか個人の嘆きのような潔白感、潔さあがあります。それでいて気分の色味は灰色なのです。白昼夢なんて言葉がありますが、灰昼夢かな。
左側にメインのギターがふってあります。ベースとリズムとコードをになっていて、このギターの弾き語りでおおよそ楽曲の音楽的要素の骨子が成立します。同じ左側にピアノも寄っています。ピアノはオーケストラに匹敵する全音域が出せる楽器ですが、ベース(低域)に加担するでもなく、ぽろぽろとメインのギターの上に乗っかってリズムやグルーヴに加担する感じの役割でいます。
左側にはコチコチと何かを叩く音。ぺしぺし? かちかち? 何を叩いているのかな。ドラムもベースも見当たらない。農作業のあいまに納屋で休憩の延長でセッションがはじまっちゃったみたいなごきげんさとけだるさの表裏一体よ。
右側にはザクっとはっきりしたダウンストロークでコードに加わるアコギ。それからポキポキと弾け具合と抑制の効いた音色でカウンターを添えるエレキギター。これに出入りがあって、ヴァイオリン奏法のように、ボリュームノブだかボリュームペダルだかでオバケのように音量をゆらめかせ、迫ったり離れたりする演奏法のトラックと入れ替わります。主人公のゆらめくため息みたいに思えます。
左側にはハーモニカもいますね。プヒー!とタイトな隙間を通り抜けるような、圧着感の強い高い音色ですが耳あたりがマイルドです。やわらかく、圧着感弱く吹いてみせるなど局面により演奏の機微が豊かです。
口笛が自由自在に良い意味でへろへろ感もあって絶妙。スライドホイッスルにも一瞬聴こえるくらいに抱腹絶倒にポルタメントします。ああ、もう笑い疲れたよ、というような哀愁がありますね。とんだ灰色の昼下がり。
The Beatles Good Day Sunshine
Lovin’ Spoonfulの『Daydream』が与えた影響は検索しただけでもけっこう出てきます。ひとつあげるならThe Beatles『Good Day Sunshine』でしょうか。
かるくはずむようなダウンビート、バンドであってもぐちゃっとせず軽いリズムの質感は確かに本家からの影響、共通する要素を感じます。カラっとした独特のハーモニーや、1拍3分割の解釈にフィーリングなどには個性の違いがあり独創性が高くさすが何かから影響を受けてもしっかり自分たちのものに昇華するビートルズだなぁと唸るばかりです。
青沼詩郎
参考Wikipedia>Daydream (The Lovin’ Spoonful song)
Lovin’ Spoonful ソニーミュージックサイトへのリンク
『Daydream』を収録したLovin’ Spoonfulのアルバム『Daydream』(1966)
『Good Day Sunshine』を収録したThe Beatlesのアルバム『Revolver』(1966)