ドラマ『2クール』
日本テレビサイトに公式ページがあります。ドラマ『2クール』。
小林聡美さん出演で、映画『かもめ食堂』の荻上直子さんが演出に名を連ねているドラマ。その主題歌がハンバート ハンバート『罪の味』。
罪の味 ハンバート ハンバート 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:佐藤良成。ハンバート ハンバートのシングル(2008)。ドラマ『2クール』(日本テレビ、2008)エンディングテーマ。アルバム『さすらい記』(2010)に異バージョンを収録。
ハンバート ハンバート 罪の味(Apple Music配信『京都音博コンピレーション08』収録)を聴く
生楽器のアンサンブルと凛とした歌声が気持ち良い。「おいら」の主語、「ヘイヘイヘイ……」のコーラス。牢屋に入れられたならず者みたいな人格。佐野さんの軽妙な歌声。ブルージーなのかダイアトニックなピュアな三和音の響きを重視しているのかその両方にまたがったようななんともいえないソングライティングとアレンジメント。
左にリズムとコードのアコースティックギター。これと歌とハーモニカだけでも成立しますね。
右にはオブリガードのギター。指がよく動きます。ブルージーな音程でぐねぐねと私の心を宙吊りに持ち上げたりどうどうと押し下げたり。カランとした乾きと潤いの両方を感じさせる極上の音色のアコースティックギタープレイです。
エレキベースがプレーンな音色で、輪郭はきわめてマイルドに質量を描き込みます。しっかりと動きや軌道を感じさせつつも支えるスタンスの音色、ラインが耳心地よし。
ドラムレスにおいてコンガがリズムをリード。パカンと轟く音色、上下の太鼓の組み合わせでドラムフィルさならがらのフックのあるリズムで高らかに歌います。そう、パーカスもドラムも音程楽器じゃない(もちろん音程はありますが)からこそ歌ってほしい。そんな私のツボを押さえたグルーヴの熱があります。
ここぞでフィドルの音色が少し奥で線をひきます。佐藤さんのハーモニーの歌はあえてのナシ、か。
ドラマのための書き下ろしなのかな。小林聡美さんともたいまさこさんのお二人のドラマのイメージを邪魔しないようにあえて男声を入れないようにしておいたのかも、などと邪推します。
シングル集で発表されているdemo trackでは洒脱にデュオで歌っています。こちらはウクレレでしょうか。勇壮なブラス・オケによる映画音楽みたいなハデなイントロ・エンディングがつくのがおかしみです。スパイものか探偵ものかアクションものみたいな。ウクレレの弾き語りデュオ編成の本編と、そびえるスペクタクルなイメージのイントロ・エンディングのギャップが可笑しいですね。
“なんだか今日は 街の灯りがやけに眩しい 気のせいだろか 鏡に映る俺の後ろに 後光のような輪っかが見える”
(『罪の味』より、作詞・作曲:佐藤良成)
召されちゃうの? そんなに悪いことした?! ドラマの内容との比喩がどれほど見出せるのか。メンバー二人の生身の向こうにいろんな背景やコンテクストを想像させる余白のあるサウンド、ソングライティングがハンバート ハンバートの魅力の一面です。そのあたりがドラマ『2クール』とも重なるのかもね。
青沼詩郎
『罪の味 (Demo Track)』を収録したハンバート ハンバートの『シングルコレクション 2002-2008』(2010)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『罪の味(ハンバート ハンバートの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)