失神バンドの由来 カバー曲『テル・ミー(Tell Me)』(The Rolling Stones)
グループ・サウンズの熱狂ぶり・人気ぶりを象徴するバンドのひとつ、オックスが失神バンドと呼ばれる由来は、演奏中にメンバーが失神してしまうから。そんなステージを披露するうち、ファンまでもが本当に失神するようになり、失神バンドと呼ばれるようになったとのこと。
演奏中に失神するパフォーマンスをしていたということですが、本当にパフォーマンスの一環としてとはいえ実際に失神していたのか、あくまで失神したかのような演技(演出、芝居)を打っていたのか実際のところはわかりません。自分の意思で失神ってできるのかな。できたとしても体に良くなさそうだな……
オックスはローリング・ストーンズの『テル・ミー』をカバーしていて、それが失神するパフォーマンスをした曲だったそうです。
まいどなニュースというサイトに、オックスのメンバーの真木ひでとさんが語る記事があります(参照リンク)。
そんな失神バンドたるゆえんがあらためて気になって私が調べたくなったきっかけをくれたのが、グループ・サウンズの世間的な人気もついに日陰に突入しはじめた頃?のオックスのシングル曲『神にそむいて』でした。失神バンド・オックスにおいては、メンバーの赤松愛さんの脱退から約半年くらい経った頃のシングルがこの『神にそむいて』です。失神バンドと呼ばれてひとしきり騒がれまくってきたバンドによる『神にそむいて』。失う神と書いて失神……なんだか、余計な意味まで読み取りたくなってしまいます。
神にそむいて オックス 曲の名義、発表の概要
作詞:なかにし礼、作曲:鈴木邦彦。オックスのシングル(1969)。
オックス 神にそむいて(『オックス・コンプリート・コレクション』収録)を聴く
楽曲の世界の外側、現実のバンドのおかれた状況を加味して聴いてしまいます。それがバッド・エフェクトなら邪念は振り切るべきでしょうが、むしろ味わい深く感慨深い。
失神バンドとひとりきり呼ばれちぎり、人気の絶頂を経験しながら、人気メンバーの脱退を経て“暗闇をのがれよう”とか、“神にそむいて”とか歌っているのです。本人たちの心の底からの、本気の祈りが楽曲として顕現したみたいに感じてしまうではありませんか。作詞作曲はバンドメンバーではなく作家さんなのですが……
右にドラムがふってあり、左にタンバリンがいてふたつのパートが対になっています。チラリチラリとグロッケンが儚い輝きをそえます。間奏は複弦のギターとフルートのユニゾンが儚い。
歌唱の儚くしゃがれさせる質感が豊かです。感情を排除したようなバックグラウンドボーカルのカウンターラインがあやうげに浮遊します。対するベースライン、音色はズウンと深い。
Dメージャーの曲調でさわやかに幕をあけますが、途中でBm、平行調の闇に深く沈んでいくかのよう。2小節ほどベースの8ビートのダウンストロークを裸にする、大胆にメリハリをつくるアレンジが妙味です。祈りの余白を感じます。
青沼詩郎
『神にそむいて』を収録した『オックス・コンプリート・コレクション』(2002)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】GSブームに背かれて?! 神にそむいて(オックスの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)