Hello, Goodbye The Beatles 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Lennon-McCartney。The Beatlesのシングル(1967)。

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ビートルズの名マネージャー、ブライアン・エプスタインのアシスタント、アリステア・テイラーがポール・マッカートニーの家を訪ねたときのエピソードが作詞のきっかけになっているそうです。“相対するもの”をポールがテイラーに叫ばせた、と。だから、Helloと来ればGoodbyeなのですね。あなた(You)と来ればわたし(I)。白なら黒。高いといわれれば低い(安い?)。

シングル曲で、ジョン作の『I Am the Walrus』をB面に追いやった、ふうな見方をされる側面もあるそうで、そのよしあしはともかく、非常に対照的な性質を備えた2曲がシングルになったものだと私も思います。シングルはAB面の飛距離もアーティストの腕の見せ所だと思うので私の評価するところです。(参考Wikipedia>ハロー・グッドバイ

The Beatles Hello, Goodbye(EP『Magical Mystery Tour』収録、2009 Remaster)を聴く

主題のハローグッバイハーローグッバーイ……をドレミファソラシドにのせてしまう。世界随一のなめらかさ、完璧な順次進行。これのつぎはこの音、というのを丁寧にみせてあげるわけです。ガクガクと階段を段とばしで登ったり飛び降りたりするのは万人にやさしいといえるか? このシンプルな意匠、言葉は自信の裏返しでしょうか。どこまでもぼくは飛んでいけるが、一歩ずつどんな君とだってなだらかに地続きに歩いていくこともできるんだぜ、その自由があるんだぜ、と。

ピアノのダウンストロークの8分割の叩きがリズムとコードの主体を担います。右のほうでカウンターするエレキギターは、発音回数や登場している時間的な長さがごく限られているのに存在感を強く強く印象づけるところが妙味です。エレキギターパートはけっこう削られてボーカルのスキャットに余白を奪われてのちにわたるメンバー間の不満につながったとかつながってないとか……?ふうな言説も聞き憶えがありますが、出来上がっているものは非常に素晴らしい意匠です。

左のほうにドラムが寄っていて、コーラスのところではキックを打ちながらマラカスがシュクシュクと刻む。まるで両手のスティックをヴァースや間奏と持ち替えているみたい。間奏のタムを交えたフィルがハナです。

右のほうで和声を支えるストリングスが非常に個々の輪郭やボウイングの質感までわかって、表情があって良い。バンドメンバー然としています。ダウンとアップのボウイングのオルタネイトのニュアンスまでわかるのです。

ベースは天真爛漫によく動き、ストリングスもベースと似た音形でアルペジオしたりしてかけあいます。

ドツドツとドラムの音色をひきしめるコンプレッション感がまた聴き心地良い。

ダブルのリードボーカルに、右でサイドボーカルが合いの手。歌唱の温度感が落ち着いていて良い。

エンディングでは音の定位がガラっと変わって余白が満たされます。別の曲に変わったかのような編集です。これもハロー&グッバイの主題どおり、極端で対比の効いた演出です。本体に対するエンディングという対比。

青沼詩郎

参考歌詞サイト JOYSOUND>Hello, Goodbye

The Beatles ユニバーサルミュージックサイトへのリンク

『Hello, Goodbye』を収録したThe BeatlesのEP『Magical Mystery Tour』(1967)

参考書

ビートルズを聴こう – 公式録音全213曲完全ガイド (中公文庫、2015年)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】雄弁なガワ Hello, Goodbye(The Beatlesの曲)ピアノ弾き語り』)