まえがき

加山さん自身が出演した映画のタイトルであり、彼自身を象徴する名詞が“(エレキの)若大将”ではないでしょうか。

そんな若大将を象徴する圧倒的ロマンと存在感の名曲が『君といつまでも』でしょう。シングル曲で、そのB面に収録されたのが『夜空の星』。

悠然としたスケール感を備えた『君といつまでも』とは好対照に、エレキのイメージを強く押し出す快活なテンポ・ビートとやんちゃなサウンドを有した楽曲で、AB面の振れ幅を含めてレンジェンダリなシングルと賞賛に値します。

『君といつまでも』も多くのカバーがありますが、『夜空の星』も氷川きよしさん、忌野清志郎さん、THE ALFEEなどによるカバーがあります。

ベンチャーズによるインストカバーはA面の『君といつまでも』とB面の『夜空の星』を同様にAB面にしたものだったそうで、加山さんのご本家のシングルと同時期に大きなヒットとなり、国内部門と洋楽部門の両方の首位にあったのがこの同一タイトルによるシングル『君といつまでも』(ならびに『夜空の星』)だったそうな。

夜空の星 加山雄三 曲の名義、発表の概要

作詞:岩谷時子、作曲:弾厚作。編曲:寺内タケシ。加山雄三のシングル『君といつまでも』(1965)。

加山雄三 夜空の星(アルバム『加山雄三のすべて』収録)を聴く

Dmを基調にしたエレキサウンドと、加山さんの滑らかな歌唱が魅せるメロディの起伏が魅了します。ヴァースはボーカルがダブルになっていて、サビでシングルトラックになりふわっと自由を獲得し、跳躍音程の飛距離あるメロディの雄大さと自由さをかえって引き立てるボーカル演出になっていて妙です。

右にドラムが振ってあります。スネアのタッチが実にソフトで、大所帯のブラスバンドで他のパートをマスクしない音量を体得したようなプレイがこれまた魅惑。タムのフィルはじつに闊達です。右に寄った定位なのですが、シンバルだけはエアーを飛んでセンターや左サイドにまで波及する音場を感じます。オーバートップマイクのトラックをうまくミックスしたのでしょうか。

左にはドラムの対になるベースがずうんと深い音色です。アタックは柔和で、質量感重視で支える役。

右にはこれまた闊達なエレキギターが軽くひずんだクランチサウンドで細かくカウンターメロディを唱えます。チョーキングが断続する波のように押し寄せる。スリリングなのに軽やかな味わいのプレイです。

左にはリズムのエレキがいて、2拍目ウラや3拍目ウラのアップストロークをタイトなミュート・カッティングでそっと引き立てます。

センターをリードボーカルに大きく開けて、左右を広く大胆に使いつつも全体のバランスの良い音響空間が成立しており録音作品としても非常に好感です。

ロマンティックな歌詞におあつらえむきな大胆さとなめらかさを併せ持つ振れ幅を同居させた美メロとうっとりさせる歌唱、こなれたエレキのサウンドが融合した、時代を象徴するお手本のようなサウンドに私の胸の中の一同、拍手喝采。

青沼詩郎

参考Wikipedia>君といつまでも

参考歌詞サイト 歌ネット>夜空の星

加山雄三 公式サイトへのリンク

『夜空の星』を収録した『加山雄三のすべて~ザ・ランチャーズとともに』(1966)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】“君といつまでも”のB面 夜空の星(加山雄三の曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)