まえがき
ロックンロールの歴史をたどればかならず接する曲ではないでしょうか。1985年に映画『Back to the Future』劇中で主人公・マーティが熱演、異なる時代にまたがって楽曲を印象づけました。
Johnny B. Goode Chuck Berry 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Chuck Berry。Chuck Berryのシングル(1958)、アルバム『Chuck Berry Is on Top』(1959)に収録。
Chuck Berry Johnny B. Goode(アルバム『Chuck Berry Is on Top』収録)を聴く
ロックンロールイズこれです。根音からかぞえて5度の音を6度に上げて、また戻しては上げを繰り返す。この伴奏のテンプレが波、押し引きなわけですね。音楽には揺らぎを見出します。揺らぎを味わうのが音楽なのです。
ばちばちにテープコンプレッションしている……オーバーゲインしてギターが歪んでいるのを出だしから感じます。アナログレコーディングのお約束ですね。歪んで、それが気持ちいいのです。
ギター、ピアノ、ベース、それから同音連打が強烈に印象的なリードボーカルのメロディとリズムも、基本的にはフラット(均一)な分割のエイトビートのように観察しますが、なぜこうもバウンド……跳ねて・弾んで聴こえるのでしょう。バンドマジックが何か起こっている? いえいえ、各パートの奏でる音に注意を当ててはスライドさせていくと……見つけました、I got it. おそらく、ドラムスのシンバルのプレイがスウィングしているせいです。タタタタタタタタ……という均一なビートの分割でなく、おおげさに文字で表現するとチーチ・チーチ・チーチ・チーチ……といった具合に、表拍の音価に比重があり、裏拍が軽いのです。なんなら次の表拍に引っ掛ける装飾みたいな感じ。これはまるでジャズの「シンバルレガート」ですね。まるで、といいますかそのもの。
鼻から血が流れて目から火花がほとばしりそうな衝撃、ロックンロールはそのビートの強さが特徴ですが、猪突猛進まっしぐらにビートを表現するパートもいれば、表拍を強調して裏拍をフワっと抜くような、それもダイナミクスの意味でも音価(音の長さ)の意味でも両面で分割をデザインしているパートもいる。こういう揺らぎ、振れ幅が組み合わさって独特の濃ゆい人間汁がドリップされているのです。
なんでもかんでもみんなでテクスチャ(質感の細部)を擦り合わせる必要はないんですね。極端な話、4拍でひとまとまりとするならば、小節の頭の1拍目がちゃんとあっていればその小節の中の定規の歪ませ方は自由でありミュージシャンの個性です。4拍に一回ピシっと合うのでは、さすがにちょっと小節のハコの中がごちゃつきすぎるというのであれば、各拍の表拍がピシっとあえばそれでいい。つまり、裏拍のタイミングにそれぞれ個性があってもよく、その集合においてそれら個性の合算がバンドのグルーヴとして好ましい独創性・独自性として現れるのです。これはバンドでせーので息をあわせて1発勝負する際は当然ですし、あるいは一人でオーバーダビング(重ね録り)をするときにも有効で効果的な感覚・考え方だと私は思います。
演奏論を誘引するからクラシカルなロックは美しい。長く聴かれて然るべしなのです。その筆頭こそがチャック・ベリーであり、その印象的な代表作の一つがこのジョニー・B.グッドで間違いないでしょう。
青沼詩郎
参考歌詞サイト JOYSOUND>Johnny B. Goode
『Johnny B. Goode』を収録した『Berry Is On Top』(オリジナル発売年:1959)