まえがき
オリジナルアルバムの『The Beatles』と発表時期や録音時期が近接していますが、『Hey Jude』自体はシングル曲でオリジナルアルバムには未収録の楽曲で、有名な『青盤』、『パスト・マスターズ』などのベスト、コンピ、コレクションに収録されています。
Hey Jude The Beatles 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲：Lennon-McCartney。The Beatlesのシングル（1968）に収録。
The Beatles Hey Jude（“青盤”収録、2009 Remaster）を聴く
まず、たったひとり、ジュリアン・レノンの心の寂寥や複雑な不安に向けて書かれたものだとしても世界人口に響き轟く愛があること。これがこの楽曲の魂柱であり唯一無二かつ普遍であることに変わりないでしょう。
ビートルズが最高のボーカルグループでありリズムグループであることも明らかです。
右に振ったピアノ、左に振ったリズム・コードギターのサウンドが案外ピンピンしていてピーキーです。このちょっとキャラのある音色が、かえってふくよかで純朴なポールの歌唱のやさしいヴァースの雰囲気に与していると思えます。
そして、トイレに立って戻ってきたタイミングで入ったという逸話があるらしいリンゴのドラムですが、これが本当に優れています。緩急のあるフィルインのフレージングが素晴らしい。ドツドツと、衝突音とその短い余韻がサウンドの主成分という感じ。まろやかな音色のベースが寄り添います。
録音作品としての聴きどころがエンディングに。こんなに長い長いフェードは世界にこの作品だけではないでしょうか。本当にサイズが終わる直前に遠くなっていくのではなく、まだ１分や２分残っているのにすでに音量が低くなっている。カーブの緩い、長い長いフェードが万人をのせて、とりこぼすことなく、丁寧に世界の軌道を共に歩むかのようです。困難＝道のカーブ。きつすぎれば振り落とされてしまいます。みんなで渡りきろうと、スピードや軌道のきつさを意匠する愛。
ポールのエンディングのフェイク、シャウトの突き抜け具合に笑ってしまいます。マイクロフォンもスピーカーもとびださんばかりに歪みまくっている箇所もあって、笑わせにきている？ というくらいに卓越・突出しています。かとおもえば、ひととおりひとめぐりしたらまたスムースにシルキーに歌い出す。ポールのボーカリストとしての一級、特級ぶりがこのエンディングの聴きどころの印象を牽引します。
低域のストリングスがホウーと出てきて、ホルンの類が勇壮に地平にあらわれ……シンガロングのna na na……にハンドクラップ。みんなついていきているか、ついてきているねと。
大丈夫だな、どんな心も一人じゃないと。孤独は人間の本質かもしれませんが、それも悪くない、みんな孤独なんだと励まされるんです。
青沼詩郎
The Beatles ユニバーサルミュージックサイトへのリンク
『Hey Jude』を収録した『ザ・ビートルズ 1967年～1970年』 2023エディション（オリジナル発売年：1973）
『Hey Jude』を収録した『PAST MASTERS』（1988）
ご寛容ください 拙演（YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】永続する励まし Hey Jude（The Beatlesの曲）ピアノ弾き語り』）