まえがき
なみらかさと大胆さを兼ね備えたリードボーカルメロディやコード設計の意匠美。緻密に設計される多彩なギターワーク。アクセントと解像度に富むパンチのあるドラムとベースのベーシック。性別や次元すら超越した透き通る歌声の独自性の極み。尊すぎて窒息必至です。アルバム『ハチミツ』全編にわたっても隙がなく聴き心地がスムース。傑作アルバムを象徴するシングル曲。
涙がキラリ☆ スピッツ 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲：草野正宗。スピッツのシングル、アルバム『ハチミツ』（1995）に収録。
スピッツ 涙がキラリ☆を聴く
伸びやかなギターのドライブ感が爽快なイントロ。掛留音の強いぶつかり感を強拍にぶつけます。ボデイを司るギターに、高音でチョークアップするギターが印象をより鋭く強くします。はげしいうねりを感じるところもところによってあるのですがアーミングで揺らしているのかな。アルペジオギターはもう伝家の宝刀です。サビではコーラスがかかったような透明で清涼な音色が印象を多います。可憐です。
まっすぐなエイトビートの印象とひとくくりにできない最たるニュアンスを司る神がベースでしょう。ちょっとハネています。いえ、なんなら盛大にハネている。表拍にむかって引っ掛けるウラのウラ拍にニュアンスがあるのです。そしてサビなんかでそこまで昇っちゃう？！というくらいにウネウネと朗々と歌うフレージングの天真爛漫さ。
ドラムが天真爛漫なベースが自由自在に踊れる地盤をつくってくれている感じです。カツっとしたスネアの鋭さにしっかりと定点を等間隔で決めるキック。きちんとハイピッチなタムやスプラッシュシンバルづかいがスピッツレパートリーのドラミングのおしるしだと私は思います。これだよ。
性別も超越したかのようなボーカル。もうどこをどう褒めていいのかわかりません。スピッツが最高のメンバーによる最高のバンドだということだけを私に強く印象づけ、再認識・再々認識させます。それだけでボーカルのすばらしさが語れるのじゃないか。すべての構成要素がハマることが、めいめいのプレーヤー・メンバーがすばらしい働きをしている証拠です。ボーカルラインのなめらかな動きとハッとする跳躍の緩急なんて最高ですよ。Ⅰ→Ⅲ７みたいな動きをつかって、サビの結び付近ではⅥmからの下行のクリシェ。教科書に載せておくべき語彙が詰まっているところ、これだけの個性のメンバーがあつまっていても安心して聴ける要なのかもしれません。それもこれも、メンバーみなさんそれぞれがそれぞれに純然たるミュージック・ラヴァーだからだと私は解釈します。
青沼詩郎
参考Wikipedia＞涙がキラリ☆、ハチミツ (アルバム)
『涙がキラリ☆』を収録したスピッツのアルバム『ハチミツ』（1995）。発売30周年の到達（この記事の執筆時：2025年）。
ご寛容ください 拙演（YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】息を呑む完璧 涙がキラリ☆（スピッツの曲）ギター弾き語り』）