まえがき
ギターの響きが折り重なり、怒りや昂りをなだめるかのように沈静です。 最初はアルバム曲としてアコギのみのシンプルでミニマムな伴奏のアレンジでリリースされ、ラジオでかかると大学生からの反響が大きくシングルとされるときにバンドの音がダビングされたバージョンがリリース。 コーラス(サビ)の同じ歌詞の繰り返しなどがあることで、大衆の記憶に刷り込まれ、愛着を持たれることがポップソングの特徴だと思いますが、この『サウンド・オブ・サイレンス』の歌詞は一方通行。繰り返されることがなく変化していきます。歌詞に合わせてフレーズの頭の休符が小節線に対して半拍になったり1拍になったり……と、演奏にチャレンジしてみることでフレーズ毎の細かい違いに気づきます。 私個人の記憶に刷り込まれているのはどちらかといえばバンドの音が入っているほうのバージョンでした。 感情を遠くに置いてきたような、お2人の平静なボーカルのハーモニーがこの曲に恒久な天命を与えています。
The Sound of Silence Simon & Garfunkel 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Paul Simon。Simon & Garfunkelのアルバム『Wednesday Morning, 3 A.M.』(1964)に収録のち、バンドがダビングされたシングル(1965)となった。シングルバージョンはアルバム『Sounds of Silence』(1966)に収録。
Simon & Garfunkel The Sound of Silence(アルバム『Sounds of Silence』収録)を聴く
アルバム『Wednesday Morning, 3 A.M.』に収録されたバージョンは左右にボーカルが開いていた記憶があるのですが、こちらアルバム『Sounds of Silence』収録バージョンは2本のボーカル、それからアコギがまんなか付近にまとめられています。
左にドラム。バシ!と入ってくるスネアのアクセントが頼もしく力強い。ベースのスライド・グリッサンドの煽るニュアンスづけ、ズムズムとブーミーなサウンドが印象的。
右にはエレクトリックギターがひらき、シャミシャミと響きのきらびやかさを増長。左側のドラムのシンバルのオープンなサウンドと対をなします。
当初のアコギのみ伴奏のバージョンのトラックを再利用して、バンドをオーバーダビングしたとのことですが、注意して聴いていると、確かに猛烈に走りこんだり緩んだりとテンポのゆらぎ、振れ幅がかなりすごい。それについていく、いえ、ごく自然にシンクロしているバンドがすごい。私は1人での多重録音でバンドの音をつくる録音制作をいつもするので、この面での苦労や楽しさ、コツなどがよくわかるのです。録音済みの音にへりくだり、ごまをすりすぎてもだめ。しかし、今自分が演奏しているパートのテンポ感でオラつきすぎてもダメ。出ている音、鳴っている音、これから鳴らそうとしている一瞬先の音のすべてが真理に向かって協調したときに最高のダビング(重ね録り)が成立するのです。これはお見事。
青沼詩郎
参考Wikipedia>サウンド・オブ・サイレンス、水曜の朝、午前3時、サウンド・オブ・サイレンス (アルバム)
参考歌詞サイト 世界の民謡・童謡>サウンド・オブ・サイレンス歌詞の意味・和訳 時代背景は1960年代のアメリカにおけるカウンターカルチャー
バンドがダビングされた『The Sound of Silence』のシングルバージョンを収録したSimon & Garfunkelのアルバム『Sounds of Silence』(1966)
アコギの伴奏がシンプルな『The Sound of Silence』を収録した『Wednesday Morning, 3 A.M.』(1964)