新陳代謝を促すビート
エレキギターのコーラスがかったサウンド、まっしぐらなビートはポリスなどのバンドを思い出します。ライブでこの曲を聴いた日にはハンドクラップして体を揺らさない手はないと思われる……「アゲアゲ」という俗っぽい表現をあえて敬意を持って米米CLUBに捧げたい!と思わせるような気概に満ちています。
色気や艶やかさを想起させる歌詞。「モナムール」などはフランス語でしょうか。質感の演出が巧みです。歌詞、ボーカルのメロディやリズムからしてビート、勢いを尊重する意図が汲み取れる気がします。コード進行はGmを中心にした繰り返しを重視し、ビートの進路・軌道を邪魔しません。終始、弛緩することなく駆け抜ける楽曲構成です。
楽曲の音源のエンディングに「新陳代謝じゃ!」というせりふが入るのが「?」でしたが彼ららしい散らかしぶりが良いなと思っていましたがちゃんと理由がありました。味の素のアイソトニックドリンク(スポドリ)「テラ(TERRA)」のCM曲だったそうで、前述のせりふはそのキャッチコピーだったそうです。
Shake Hip! 米米CLUB 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:米米CLUB。米米CLUBのシングル(1986)。米米CLUBのベスト『SINGLES』(1987)に収録。
米米CLUB Shake Hip!(アルバム『SINGLES』収録)を聴く
ボーカルからして疾走感があります。主題、Shake Hip!のリフレイン。サビにはほとんど日本語がありませんね。英語の子音の勢いを前面に憑依。サビのおわり際にはma ma ma ma ma ma ma……とバグったコンピューターみたいにmindの語頭を連打。ままままま……!とか、テケテケテケテケ!とか、ボーカルトラックの諸般がにぎやかです。エンディング付近では左と右にわかれて「ウォウウォウ……」と「ララララ……」。まんなかあたりにはうごめくような地面に張り付くような男声のシンガロングもあります。
ドン、タタドン、タ! とスネアに合わせてクラップを誘うビートです。中間部は猛烈なキックの4分打ち。ベースが短く音を置いて、いるともなくいるところ、はっきりいるところとメリハリを出します。ギターの音色がエッジー。トガっていて、コーラス系のエフェクトをまとっているのか私はこのサウンド年代相応のバンドサウンドを思い出すのです。ニューウェイブっぽくもある。
ブラスの入り方が豪快かつ細かくもあります。シンセ・キーボードでも尾をたなびくような音色が入っているようでしょうか、それと管楽器のかけあわせ。コンガの音色はむしろ柔和に感じるくらい、諸般の音色がエッジーです。
コードはほとんどGm、F、B♭、Fを繰り返す感じで、コードで魅せるという選択肢を積極的に捨てて臨む態度です。同じまとまりの繰り返しでいくから、推進力、勢いを保って駆け抜けられます。ゆえにリズム、ビートのエッジが際立ちます。
そして最後のせりふ、新陳代謝じゃ! の声の存在感がアブラぎっている。代謝せねば……
青沼詩郎
米米CLUB | ソニーミュージックオフィシャルサイトへのリンク
『Shake Hip!』を収録した米米CLUBのベスト『SINGLES』(1987)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】新陳代謝を促すビート『Shake Hip!(米米CLUBの曲)』ギター弾き語り』)