ささやかな対比光る

レーソー、ミ♭ーラー……と、シンプルな音形を反復する歌い出しに愛嬌があります。メロディのささやかな魔力が深いです。反復するときにブルーノートになっていて、コード的にはF7の響きになっています。Cメージャーの純真無垢な調性のキャラクターにブルージーでわずかに影のあるフックを仕込む塩梅が絶妙です。太陽のさす場を追っていくよ、といったニュアンスでしょうか、主人公の希望的な心持ちの背景には雨や影といった対極要因もあることが想起できます。こういった対比がポール・マッカートニーのソングライティングの魅力、特長のひとつだと改めて思えます。

コンパクトでシンプルなサウンド。テチテチとなにやらボディパーカッションのようなトラックも楽曲のキャラクター形成に与します。

この楽曲を収録したアルバム『Beatles for Sale』はクリスマスに間に合わせるタイミングを図ってリリースされたようでしょうか。オリジナル8:カバー曲6といった割合の構成になっていて、そのオリジナルの一つが本曲です。前アルバム『A Hard Day’s Night』のリリースから5ヶ月未満というスピードで展開されるビートルズの旋風が年末に向かう世のファンを煽ります。

I’ll Follow the Sun The Beatles 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Lennon-McCartney。The Beatlesのアルバム『Beatles for Sale』(1964)に収録。

The Beatles I’ll Follow the Sun(アルバム『Beatles for Sale』2009 Remaster)を聴く

ヴァースでユニゾンになっているところ、ポールとジョンの二人の声が重なっているのでしょうか。そしてユニゾントラックが外れ、ポールの独唱フレーズがスっと光ります。からっぽのだだっぴろいホールのような、広い空間を思わせるリバーブが悲しげ。からっと乾いた響きでロングタイムに残響します。

ミドルエイトのところで、下ハモがジョンでしょうか。このハモリパートの動きが少なく、同音連打が多い。主人公は太陽を追って活発に、希望的に動いていくのだとしたら……ジョンの歌うパートは、うずくまって落ち込んだままでいる、心のなかにだけいる弱虫の誰かさんの象徴みたいに感じるのです。リードボーカルパートと、ハモリパートの旋律の動き、キャラクターの違いによるささやかな対比が見出せます。太陽、そして雨といったモチーフもわかりやすい対比です。

サウンドが全体にやさしい。右に振られたエレキギターのサウンドも角がまるいです。

間奏でリードする、たった四小節のエレキギター。スライド奏法でフレットバーのうえをすべっての上行音形。減衰しながら目指す音程に到達する儚さがたまりません。太陽にかろうじてタッチして、ぼくはまた地面の上にもどるのかな。

左側にもギターがいて、ボディパーカッション?も左良り。スチャっというギタープレイのブラッシングなのか、ボディパーカッションなのかちょっと区別もつかないような感じでかろみのあるリズムを左トラックが形成します。そしてベースがうっすらとしたバランス感なのも楽曲のささやかでカジュアルな印象のために重要な塩梅でしょう。

青沼詩郎

参考Wikipedia>アイル・フォロー・ザ・サン

参考歌詞サイト The Beatles(Web Site)>I’ll Follow the Sun

ザ・ビートルズ | The Beatlesへのリンク

『I’ll Follow the Sun』を収録したThe Beatlesのアルバム『Beatles for Sale』(1964)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】ポールの描くささやかな対比『I’ll Follow the Sun(The Beatlesの曲)』ギター弾き語り』)