言語超越讃歌

ザッ! ザザッ! ザッ! ザザッ! 超絶シンプルですがメリハリの効いたギターのE、D、A、Dのコードのリフレインに太いドラム、ブーミーなベースが絡んできます。ソロのギターはリズミックでパッキパキ。

ヴァースでリードボーカルが先に出て、バックグラウンドが主題のフレーズ「Can’t explain」と応答します。言語を超越した衝動へのアプローチを思わせるサウンドが清涼かつ暴れん坊で最高。

ヴァースのE、D、A、Dのコードは非常にロック的な語彙ですが、コーラスのところで1645(E、C#m、A、B)のコード進行にパターンが変化するとこに、大衆音楽への接近を感じます。ヴァースとコーラスの性格・態度に対比が出ていて私の好きなところです。

シングル曲なのでオリジナルアルバムの収録はありません。同時代のアルバム『My Generation』のデラックスバージョンなどに付加されていることがあるようです。

I Can’t Explain The Who 曲の名義、発表の概要

作詞:作曲:Pete Townshend。The Whoのシングル(1964)。

The Who I Can’t Explain(アルバム『My Genaration』配信のデラックスバージョン収録、ステレオ)を聴く

リードボーカル、これ常にダブルになっていて、左右に開いています。パワーがありますがステレオ版だとそれぞれの描線が左右に分離してちゃんとわかります。演奏が進んでいくと、フェイクの部分に少し違いがあることもあり、ただ同じ旋律をトレースするだけのダブルではなくて自由です。

そして呼応するバックグラウンドボーカルも分離が図られています。hoo, Woo, Can’t explain!といった具合に、伸ばす「ウー」系の音形と歌詞のあるレスポンスを組み合わせた定型でバンドのリズムの空間に清涼感を吹き込みます。

バンドの音空間が克明です。イントロのギター、そしてボコっとドラムが入ってくるあたりなどエアー感がパッキングされています。近年の日本のポップスなどではこういうエアー感……すなわちルームアンビエンスのある録音作品に出会うことは本当に稀です。少し寂しいですね。どんな場所で録っているのかを漂白してしまうのは勿体ないです。あなたたちがいる場所、その部屋の空気を聴かせてくれよと紛糾する人格が私のなかにます。

ドラムとベースがブーミーですが、エレキギターはエレキギターで、特有の鋭い帯域における増幅感をいっぱいにしてリズミックに飛び跳ねまくります。1コーラス目が終わった直後のたった4小節の間奏に後ろ髪ひかれながら、2コーラス目が済むと8小節のソロがまっています。ここでの大仰な2拍3連のリズム叩き。これだよ。これが私の思うThe Whoだ。ギタリストもドラマーに負けじと楽器を叩く。そして不死の如きドラム。バンド内で火花が散るのが見えるよう。

コンコンコン……と言語超越の扉をノックするかのようなピアノが愛です。パチコン☆とまとまりのある音像のクラップが入ります。チキチキチキ……とタンバリンの出ずっぱりも華やか。そして、やっぱ説明できねぇや(はいおしまい)とコンパクトに楽曲は終止。残りの人生のすべてが説明にあたるんです。歩き出すしかないね。

青沼詩郎

参考Wikipedia>I Can’t Explainアイ・キャント・エクスプレイン

参考歌詞サイト JOYSOUND>I Can’t Explain

The Who Webサイトへのリンク

Deluxe版に限り『I Can’t Explain』を収録したThe Whoのアルバム『My Generation』(1965)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】言語超越讃歌『I Can’t Explain(The Whoの曲)』ギター弾き語りとハーモニカ』)