クリスマスキャンドルの灯に映す想い

女声のボーカル群のイントロ、アコースティックの撥弦楽器のフォーキーなサウンド、瑞々しいストリングスが融合し、「安奈」の固有名詞ではじまるサビが印象的です。

歌詞が描くのは冬、12月、クリスマスの頃。楽曲のモデルにしたという「アンナ」は複数いるのか、その一人をアンナ・カリーナ(女優)であるとする記載がWikipediaにありました。

歌詞に合わせてフレーズの起こるタイミングだったり、ひとつの母音が伸ばされて宛てられる音程の数や長さがフレキシブルに変化したりするソングライティングがただならぬ個性、甲斐よしひろ節を私に感じさせます。

クリスマスキャンドルに灯った火を想いや愛情の象徴・比喩として扱い、離れたところにいると思われる相手の心中に想像を誘導し問いかける態度が哀愁めいています。

安奈 甲斐バンド 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:甲斐よしひろ。甲斐バンドのシングル(1979)。ベストアルバム『Here We Come the (3→)4 Sounds』(1985)に収録。

甲斐バンド 安奈(『シングルズ』収録)を聴く

歌い出しがなかなか低いトーンです。そしてサビのメロディも、天井に余白がある感じで、激情ほとばしるほどには高くなりません。このサビで女声のバックグラウンドボーカルが1オクターブ上にあらわれます。主人公と、どこかで別の暮らしをしている”安奈”を二画面分割で平行して見せる演出みたいに思えるオクターブユニゾンの集合です。交わらない、平行線である切なさが薫るのです。“もう一度 二人だけの愛の灯をともしたい”という歌詞のラインがあり、ふたたびあいまみえる機会を望む気持ちがうかがえますが、それが叶うかははなはだわからない、むしろ実現の具体的な見通しはなさそうなところに、胸に冬風がふきすさぶみたいなせつなさを覚えるのです。

左のほうにかろやかな撥弦楽器がいます。アルペジオしたりリードメロディを弾いたりするこの楽器、マンドリンか何かでしょうか。複弦のアコギ? にしてはサウンドがかろやかです。右にはストラミングでリズムとコードを出すアコギがずっといます。シンガーソングライターの最たる相棒であり表現の基本単位に含まれる要素でしょう。ストリングスの対旋律、私の意識を引く塩梅がほどよい。

歌い回し・ふしまわし、歌詞のあてかたにところどころ個性や強い独自性を感じます。どこまでも、甲斐バンドがパフォーマンスするための究極のオリジナルソング、アーティストに特化した歌である特長も感じますし、一方でサビは歌いやすく覚えやすく、普遍と博愛の歌である特性も持ち合わせておりそうした普遍と独創のバランスのこの楽曲の醍醐味があるように思えます。そして『安奈』という固有名詞だけをみると季節感は分かりませんが、描かれる情景は冬、がっつりとクリスマスソングでもあるところも焦点やフレーミングの確かさを覚えもしますし、その寒さ、さみしさや哀愁と季節感の相乗こそが楽曲の本質である点も私が唸るところです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>安奈Here We Come the (3→)4 Sounds

参考歌詞サイト 歌ネット>安奈

KAI SURF|甲斐よしひろ公式ウェブサイトへのリンク

映像作品『HERE WE COME THE 4 SOUNDS [DVD]』(オリジナル発表1986年。DVD発売2000年)。『安奈』は収録リストに含まれていない様子。

『安奈』を収録したベストアルバムの『HERE WE COME THE 4 SOUNDS』(1985)

『安奈』を収録した甲斐バンドの『シングルズ』(2000)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】 クリスマスキャンドルの灯に映す想い『安奈(甲斐バンドの曲)』ギター弾き語り』)