ヤッホーのこだま

「サイクリング、サイクリング、ヤッホー、ヤッホー」や「ヤッホー、ヤッホーヤッホーヤッホー」など部分的にこの曲に聞き覚えがあった気がしますが、歌手名や曲名をきちんと把握したのが今回の収穫の一点です。記憶に残る部分はやはり音形や言葉の反復が効果的に用いられていることが多いであろう傾向を私に教えてくれます。

そうした反復中心以外の部分については、歌い回しが案外こまかいです。ペンタトニックスケールのはしごをこまかく上り下りします。まるでサイクリングの道のりで、都市の平坦な道だけではなくあらゆる起伏のある道を遠くまで走っていくかのように動くメロディです。

母音を伸ばして複数の音程にあてがう譜割についても特長的です。いかにも日本の歌らしいとも思います。ひとつの子音にひとつの母音が組み合わされるのがおおむねである言語らしさがあります。

グループサウンズバンドの筆頭のひとつ:ザ・スパイダースのメンバーであるかまやつひろしさんの職業ミュージシャンとしての最初期のキャリアは、小坂一也さんがボーカルを務めるバンド、ワゴン・マスターズへの参加だったといいます(参考書:『ムッシュ!』(著:ムッシュかまやつ、2002年単行本、2009年文庫化)。

・カントリー歌手でありながら、小坂一也さんがアイドル並みの人気者であったのが『青春サイクリング』のヒットに象徴される

といった要旨も書かれており、日本や世界の商業音楽が発展していく証言を見つける楽しみがある著書です。

青春サイクリング 小坂一也 曲の名義、発表の概要

作詞:田中喜久子、作曲:古賀政男。小坂一也のシングル(1957)。

小坂一也 青春サイクリング(V.A.『<戦後70年企画 歌のあゆみ>戦後の大ヒット大全集 〜リンゴの唄・青い山脈〜』収録)を聴く

小坂さんの歌唱のダイナミクスの豊かさ、子音の綺麗さが際立ちます。フレーズごとに音のアタックはやわらかく、時間差でダイナミクスのピークに達し、ピークを作ったらすこしふわっとひいていく。こうした心地よい揺らぎ、フレーズのなかでのオシヒキ、緩急があります。軽妙で楽曲のキャラクターを把握した的確な表現です。

オケが常に、といっていいくらい何かしらのパートがいつもボーカルのメロディをトレースしています。ストリングスだったり、アコーディオンだったり。オケだけで聞いてもだいたいどんな主旋律をもつ楽曲なのかがわかることでしょう。ドラムパートがなくて、シンバルがハイハットでなく合わせシンバルなのがいいですね。片手に一枚ずつ、ベルト(取っ手)のついたシンバルを持って演奏するオケやブラスのマーチングなどに使われるシンバルです。ダイナミクスが派手でかっこいい。

モノラルの音像ですが小坂さんのボーカルが前のほうに感じられてうまくはまっています。オケと同時録音なのか分かりませんが、小坂さんの歌唱だけに、特に「ヤッホー、ヤッホーヤッホー、ヤッホー」のところだけにふかいエコーがかかります。小坂さんのマイクにだけこの処理をした感じです。青春サイクリングの演出ばっちり。小高い山なんかが見える長い道を行っている感じがしますね。

青沼詩郎

参考Wikipedia>小坂一也

参考歌詞サイト 歌ネット>青春サイクリング

『青春サイクリング』を収録した『決定盤 青春の小坂一也全集』(2010)

『青春サイクリング』を収録した『<戦後70年企画 歌のあゆみ>戦後の大ヒット大全集 〜リンゴの唄・青い山脈〜』(2015)

参考書

ムッシュ! (文春文庫) 

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】 ヤッホーのこだま『青春サイクリング(小坂一也の曲)』ウクレレ弾き語り』)