一月一日 唱歌 あけましておめでとうございますソングの概要

お正月といえばこれ、という歌を思い浮かべるとそれは唱歌『一月一日』(「いちがつ いちじつ」、もしくは「いちげつ いちじつ」)でした。この機会に、まったく知らなかった作者や発表年、内容などについて少しだけクローズアップ。

“年(とし)のはじめの 例(ためし)とて。

終(をは)りなき世(よ)の めでたさを。

松竹(まつたけ)たてゝ 門(かど)ごとに。

いはふ今日(けふ)こそ たのしけれ。”

(”ウィキソース”https://ja.wikisource.org/wiki/一月一日より)

現代の私が用いる口語とは異なる質感の言葉づかいに惹かれます。ならわし、風習、恒例のものごとのことを「例(ためし)」と表現するのですね。平和で充足に満ちた社会が永続してほしい、との願いは時代を問わず普遍の思いでしょう。

「門松」という名詞の存在は若輩者の私とて知っていますが、それが家々の“かど(門)”に実際に置かれているのを目撃する機会は現代、相当限定される希少なものであろうと思います。

“初日(はつひ)のひかり あきらけく。

治(をさ)まる御代(みよ)の 今朝(けさ)のそら。

君(きみ)がみかげに 比(たぐ)へつゝ。

仰(あふ)ぎ見(み)るこそ たふとけれ。”

(”ウィキソース”https://ja.wikisource.org/wiki/一月一日より)

以上は明治の元号下を思わせる2番の歌詞で、大正への改元時(1913年)に改訂された2番の歌詞が存在します。現在歌われる機会の多い少ないでいえば、改訂後の以下の歌詞が多数派でしょう。

“初日のひかり さしいでて、

よもに輝く 今朝のそら、

君がみかげに たぐへつつ

仰ぎ見るこそ たふとけれ。”

(”ウィキソース”https://ja.wikisource.org/wiki/一月一日より)

「君」といえばやはり天皇をさすものでしょうか。「君」という代名詞からまず天皇を誰もが真っ先に想起するという価値観も現代ではいくぶん(だいぶ)変わっているものと思えます。もちろん、「君」の代名詞にどんな固有のあなた(きみ)を代入しても尊いことには差異ないことでしょう。

作詞の千家尊福さんは、出雲大社の大宮司をつとめたことのある人。

作曲の上真行さんは雅楽師の上真節のご長男で、京都の生まれ。日本において、洋楽器の演奏法を最も早く学んだお一人といえそうです。

一月一日 唱歌 曲の名義、発表の概要まとめ

作詞:千家尊福、作曲:上真行。唱歌。1893(明治26)年『小学校祝日大祭歌詞並楽譜』(官報3073号付録)で発表された。

一月一日 ダーク・ダックスの実演(配信アルバム『お正月・新年をむかえる歌~節句や行事に聞きたい音楽まとめ♪~』収録)を聴く

上ハモとバス・ボイス各パートのダイナミクスのバランスが秀逸。歌唱の音程の線がぴりっと引き締まっていて、感情が落ち着いていてクール。柔和・調和した耳ざわりが至福なハーモニーです。各メンバーで定位に差がつけられています。低域メンバーは右のほうの定位から聴こえる気がします。上ハモのパートが少し奥の方にいるように感じる音像が絶妙です。

フルート族とヴァイオリンが主旋律を提示・再現・トレースしたり、ふっと主旋律とカウンターやオブリのモチーフが入れ替わったり切り替わったりするアレンジ。右のほうでチロチロとかがやかしく、かつ耳にやさしく鳴るグロッケンの類が愛らしい。

ベースの音がまろやか、バフゥーとファゴットが低域に加わる瞬間は象やカバのため息みたいで安泰の新年のはじまりを思います。

一月一日 若草児童合唱団の実演(配信アルバム『にほんのうた 心のうた 幼き日の歌ベスト30』収録)を聴く

はつらつとして青々しい児童の声の集合の描線に生命感があります。「きーみーが」……と2番の高音にさしかかるときの緊張感、声の張り具合が「がんばれー!」「いいぞー!」という保護者気分を引き出します。上手ですし、かつほほえましくもある、みずみずしい歌声です。

コントラバスの音色が深く、児童の声をがっしりと抱き込み支えます。木管リードはかたわらをひらりと舞う鷹のごとし。初夢に出てこい。

マリンバがころころころ……とメゾピアノくらいで薫ってくる塩梅が良いですね。またビブラフォンの音色もやさしく、1月1日の夜にも慈愛に満ちた夢が見られそうです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>一月一日 (曲)一月一日(ウィキソース)千家尊福上真行

参考サイト 唱歌「一月一日」新年を迎え、手に入れたい私の歴史像(小学唱歌「一月一日」|Webマガジンまなびと|学び!と歴史) 時代背景、歌詞の解釈が的確に解説されており、曲『一月一日』をより身近で恒久的な知的財産と感じることができます。

参考サイト 世界の民謡・童謡>一月一日(年の始めの ためしとて) お正月の歌/おわりなき世の めでたさを 新春かくし芸大会テーマソングに使われた旨にふれており、現代において楽曲が認知される理由が伺い知れます。

ダーク・ダックス実演の『一月一日』を収録した配信オムニバスアルバム『お正月・新年をむかえる歌~節句や行事に聞きたい音楽まとめ♪~』(2022)

『にほんのうた 心のうた 幼き日の歌ベスト30』(2017年、オリジナル発売:1988年)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】あけましておめでとうございますソングの概要『一月一日(唱歌)』ウクレレ弾き語り』)