恋はウィークエンド
恋をしてもしなくても月曜日はからっぽ感。
土・日と遊んで、平日のリズムを乱して、体力を消耗しているのに月曜日の朝ばっかりは律儀に秩序をもってやってくるわけです。そこで感じるからっぽ感。もうはたらきたくない。
月曜日、朝遅めに社会がスタートすればいいのに。で、火曜日はちょっと遅いくらい。水曜日くらいにやっと通常通りくらいにスタートする。で、木曜日と金曜日は月・火と遅めにスタートしたぶんの借金返済で早く始業。木・金の借金(借時?)返済が嫌な人は、月曜から律儀に定刻どおり業務を開始してもそれもOK ……とかなんないかな。誰も得しないか。なったところで……
話がそれてしまいましたが、それくらい月曜日のウダウダ感、もういやだ感、喪失感、漂白感というのは普遍だと思うのです。そこに、通りすぎた恋の記憶が重なれば曲を書く動機としては十分を通り過ぎて十二分でしょう。月曜日は十二分なのです。
恋をした時期を週末、すなわちハナキンから土曜日・日曜日に喩えてみれば、恋との距離ができてしまった時期、その直後の時期はまるで月曜日ではありませんか。
堺さんのボーカルフレーズに含まされた「あぁあ……」といった嘆き。「一人ため息」というフレーズの直後あたりに、2拍分の余剰な空白感の変拍子:あるいは元々の4拍分のうち2拍を喪失してしまったような変拍子。ドミナントⅤを経て、Ⅵmに進行する虚無で一時凌ぎの解決はまるでサッド・エンドのフィルム。真なるエンディングではⅠ6で筆を止め哀愁が残ります。
フルートの音色は舞い込んだ幸せの象徴。小鳥みたいに可憐で気ままです。風にのってやってきたかと思えば、風に乗ってまたどこかへ行ってしまうのです。
月曜日はからっぽ 堺正章
作詞:阿久悠、作曲:中村泰士。編曲:森岡賢一郎。堺正章(堺正章とザ・スパイダース)のシングル『悪魔のようなおまえ』(1970)B面に収録。ザ・スパイダースのコンピレーション『ザ・スパイダース・コンプリートシングルズ』(1999)のボーナス・トラックとして収録。
堺正章 月曜日はからっぽ(CD『ザ・スパイダース・コンプリートシングルズ』収録ボーナス・トラック)を聴く
哀愁ある歌唱は堺さんの代表曲『さらば恋人』の予兆です。この『月曜日はからっぽ』を収録したシングル『悪魔のようなおまえ』の半年後くらいに『さらば恋人』がリリースになります。『さらば恋人』よりは、ドラマティックさを抑えて嘆きの成分が多い感じがしてそこもまたB面らしいですし『月曜日はからっぽ』という主題にふさわしい。
オルガンがリードをとり、ビートの刺激がやさしい。左のエレキギターが極めてクリーン。右側のフルートと示し合せたフレーズのシンクロがあります(グロッケンもいますね)。右にはアコースティックギターのコード・リズム。
ドラムスは菜箸で叩いたみたいに繊細な音色です(これがもっと細くなると「割り箸で叩いたみたいな」になります)。ドラムスの繊細なプレイがボーカルの奥でリズムの分割を露出するのですが、これがサビのところに入るとその熱量を抑えたまま、グルーヴがベースとも共同して16分割のファンキーなノリに変わります。雨が降るなら雨にうたれて……と、歌詞の描く情景がウェットになってくるのをリズムの解像度の濃さで表現するバックトラック。ストリングスの音色も入ってきます。
フルートの語彙が堪能で、まるで胸をなで下ろすため息みたいにグリスダウンするフレーズだったり、手元を小鳥がぴよぴよと戯れるような軽やかなフレーズだったりと腰の軽い態度で私を魅了します。
からっぽなのさ あなたはいない 空も灰色 月曜日(堺正章『月曜日はからっぽ』より、作詞:阿久悠)
黒と白の中間色。せめて潔白か真の闇かのいずれかに浄化されるか沈むかできたら楽なのかな。
青沼詩郎
『月曜日はからっぽ』を収録したコンピレーション『ザ・スパイダース・コンプリートシングルズ』(1999)