テクノ中学生が慕う、時代を謳歌するベテラン女性

博識で文明にフィットし利器を使いこなし時代を謳歌する高齢の女性像。宇宙旅行まで割と普通に現実の話になりました(宇宙旅行に関してはもちろん依然として限定的なものだとは思います)。

テクノ(YMO)が一世を風靡したした時代の空気にそのまま乗っかったような未洗練さ、人工的な音色がどこか間が抜けていて愛嬌があります。1981年の2年後、ファミリーコンピューターが登場しますが、まさにそのサウンド。

歌唱もあどけなく、あばあちゃんへの思慕が率直に伝わります。

イントロにメンバーの話し声(ガヤ)がサンプリングされており、のちの時代の『パプリカ』Foorin produced by 米津玄師のオープニングを思い出させます。

『パサディナのおばあちゃん』(ジャン&ディーン)、『エレクトリックおばあちゃん』(ザ・スパイダース)といった文脈を知ってか知らずか、『コンピューターおばあちゃん』を加えておばあちゃん三大作と称号してみましょうか。

「みんなのうた」で放送された、坂本龍一さんの編曲による酒井司優子(さかいしゅうこ)さんによる歌唱で広い認知を得たようですが、本曲のオリジナルは当時ティーンズ(ティーンズどころか“中学生テクノバンド”)のメンバーからなるコスミック・インベンションで、作詞・作曲は伊藤良一さんです。

コンピューターおばあちゃん コスミック・インベンション 曲の名義、発表についての概要

作詞・作曲:伊藤良一。コスミック・インベンションのアルバム『COSMORAMA(コズモラマ)』(1981)に収録。

コスミック・インベンション コンピューターおばあちゃん(『コンプリート・ベスト』収録)を聴く

あどけなさはあるのですが、リードボーカルの輪郭が明瞭でマイク乗りに優れた声質です。ギターやアコースティックのピアノなどを用いず、リズムとベースを中心軸にシンセサイザーでサウンドに前後左右を醸します。

ホワァーっと和声を醸すトラック、そしてぴゅーんと間の抜けたような、あか抜けない純朴すぎる倍音のない人工的な周波数。「ぴゅーん」といった発音のタイミングにブレがあるのは、鍵盤で装飾的に演奏したのかディレイやシンセのパラメータの設定でブレを人口的に出したのか。

バランスを誤ればスカスカなサウンドの烙印を押されかねない単純さがありますが、ベースがよく動くのでそれだけでも調性や和声のニュアンスがあります。そのおかげでコードギターやコードピアノを入れる必要もなく、テクノポップとしての体裁を保てるうえ、ボーカルのための空間が広く確保されるうえ、シンセのホワっとした音色やピューンといった効果を狙った音色もくっきりとすみ切った夜空に閃光する流れ星や天の川みたいにのびのびとしています。宇宙まで行けそうだよね? おばあちゃん!

“ずっといつまでも 長生きしてください 夢の宇宙旅行 きっとできる日が来る”(『コンピューターおばあちゃん』より、作詞:伊藤良一)

おばあちゃんの矍鑠ぶりの具体を伝える部分が歌詞の比重を占めますが、おばあちゃんへのストレートな思慕・敬愛を伝える部分が尊いです。

酒井司優子さんバージョンの決定的な違いはこの部分にあり、コスミック・インベンションは当該の部分にメロディがあり、あくまで歌唱で実演しているのに対して、酒井さんバージョンは「せりふ」の体裁です。感情に意思をふりまわされないように揺らがないように、時間をかけてしたためた手紙のような、「文章」を朗読して内容を的確に伝えるのを重視するアプローチです。ボーカルミュージックたるもの、あくまでメロディの要素をあきらめることなく聴き手の心に迫る挑戦をするのもひとつの尊重されるべきポリシーですが、せりふの体裁だからこそ言葉が言葉としてそのまま機能する実直さもあり、その思いが屈折することなく胸に迫るという理屈も認めるべきでしょう。

青沼詩郎

参考Wikipedia>コスミック・インベンション、コンピューターおばあちゃん

参考歌詞サイト 歌ネット>コンピューターおばあちゃん(酒井司優子)

参考歌詞掲載サイト 世界の民謡・童謡>コンピューターおばあちゃん 歌詞と解説 僕のおばあちゃんは 何でもできるコンピューター! コスミック・インベンションを「YMOのコピーバンド」と紹介しています。子分みたいなポジションで一般に認知されていたのでしょうか。

『コンピューターおばあちゃん』を収録したコスミック・インベンションのアルバム『COSMORAMA』(1981)

『コンピューターおばあちゃん』を収録したコスミック・インベンションの『コンプリート・ベスト』(2011)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『コンピューターおばあちゃん(コスミック・インベンションの曲)テクノ中学生が慕う、時代を謳歌するベテラン女性 ギター弾き語り【寸評つき】』)