恋しさに“おやすみ”

リンゴのソロ曲のようですし、まるでディズニー映画の景色が見えてきそうなロマンチックなオケサウンドにフィットしたリンゴの深く温かく素朴な歌声が「おやすみ」をリスナーに与えます。

あいまいで夢をみているかのようにふわふわするボーカルメロディが魅惑です。4和音やベースの経過・転回形がみられるコード進行もまた夢心地を演出します。

ひきこもごも、理不尽も怒りも悲しみも毎日いろいろあるけれど、うしろめたい自分も鼻高く誇らしい自分も全部抱きしめて“おやすみ”の言葉のブランケットをかけてあげる無情さ・残酷さ・慈しみ・深く博い愛が尊いです。

オーケストラの編曲はジョージ・マーティン。

楽曲がいつどんな想いで書かれたのか分かりかねますが、前の妻であるシンシアそして子・ジュリアンのもとをはなれてヨーコと暮らし始めるライフステージへとうつろうジョンの命運と、この楽曲の持つ甘美な抱擁を想起させる豊かなイマジネーション、絶対的なロマンの高さを併せ呑むとどうにも私は涙が止まらない思いです。「(子守唄として)ジュリアンのために書いたのではないか」とするポールの証言もあるとかないとか。

Good Night The Beatles 曲の名義、発表についての概要

作詞・作曲:Lennon-McCartney。The Beatlesのアルバム『The Beatles』(1968)に収録。

The Beatles Good Night(アルバム『The Beatles』収録、2009 Remaster)を聴く

絢爛きわまるオケ。クワイア(合唱、声の集合)も厚いです。

ドレミファソラシド……(移動ド読み)と、地面からたちのぼる苗木がタイムラプスでみるみる成熟するみたいに、少年の夢が叶う未来を枕元でささやくみたいに、ストリングスのアルコが勇ましく16分割のボウイングを刻みます。非常にシンプルな楽節からなる歌唱(歌詞のある)部分ですが、間奏のところが目を引きますね。

エンディングの無声音での”Good night everybody, everywhere, Good night”といったささやき。音程やリズムの定規の目盛りから解き放たれたせりふのような体裁ですね。か細いダイナミクスであっても極めて強い印象を残します。ハープの乾いた音色が枕元をかけまわります。

のぼったりおりたり…夢の階段を徘徊しているような音形、ⅶやⅵの音程の用い方があいまいでドリーミーなメロディにウットリ。
やっぱりⅶの使い方がすごく眠くなる(心地よい、の意味)

青沼詩郎

参考Wikipedia>グッド・ナイト (ビートルズの曲)ザ・ビートルズ (アルバム)

The Beatles ユニバーサルミュージックサイトへのリンク

『Good Night』を収録したThe Beatlesのアルバム『The Beatles』(1968)

参考書

ビートルズを聴こう – 公式録音全213曲完全ガイド (中公文庫,2015)