説明するあそび歌

バブルガムポップに抱く私の表層イメージがこの1910 Fruitgum Companyの『Bubble Gum World』。筒美京平さんによる鋭いまなざしに射抜かれたのか、『サザエさん一家』に見事に引用されており、日本人にはそちらの曲のほうが有名かもしれません。

その『サザエさん一家』に見事に引用されてしまった楽曲『Bubble Gum World』を収録しているアルバムが『Simon Says』であり、そのアルバム表題曲こそが本曲です。

サウンドや曲のノリはなんだかビートルズの『Ob-La-Di, Ob-La-Da』そっくりです。日本の数多のグループ・サウンズバンドが参考にしたようなガレージ・ロックのオルガンのピーピーいうサウンド、それからビートルズのおいしいところがうまいことカクテルされたような感じで、曲の内容としては手あそび・からだあそびを歌にしたような趣向。

ビートルズもサージェント・ペパーズ〜のようなアーティスティックでコンセプティブな方向に行きますし、世の中的にもロックはアーティスト音楽化していき、そのベクトルはつまり大人向け、あるいはせいぜい大学生向けで、ロウ・ティーンへ向けた音楽が「すきま」状態だった……そこに見事にハマったのが本曲あるいは1910 Fruitgum Company、ひいてはバブルガムポップの成功だったのでは……といった論旨の言説には私としては非常に納得がいきます。(堀克巳さんの音楽ブログ“まいにちポップス(My Niche Pops)”の投稿記事がこの楽曲あるいはバブルガムポップの成功を巧みに説明しています。リンク貼っておきます。)

からだ遊び・手遊びの順序を聴衆にしゃべって説明して進めるような感じの内容の楽曲になっており、単純明快な娯楽音楽であることに自覚的であるのだとは思いますが、そうした進捗を語る性質を有しているが故になのか、本曲『Simon Says』はコーラスの歌詞が番によってちょこちょこ変化します。

たとえばビートルズの初期中期の名作には、コーラスの歌詞やメロディが基本的には一字一句違わず、そのままの形で繰り返されることを尊重しているものが多く、そういうところが私にとっては親しみやすさ、鑑賞のハードルの低さにつながっています。

この楽曲『Simon Says』はそれこそロウ・ティーンに向けて単純明快でハードルの低い楽しみの提供を意図する作品であるとするならば、もう少し歌詞やメロディを「これ一つ」という完全形まで絞ってそっくりその通りに何度も繰り返すことを尊重してくれたら、私としては楽曲に自分をフィッティングするための知的労力のハードルを下げて楽しめたなぁと嘆かわしく思う部分もあります。

まぁ、私個人がプープー言っても仕方がない類のポリシーにもとづく曲だとも思います。「ながれもの」:消費材としての商業音楽であることに自覚的な態度に思えるからこそ、あまり高度な洗練や最適化すらもそもそも必要としていないのかな、という気もします。

Simon Says 1910 Fruitgum Company 曲の名義、発表についての概要

作詞・作曲:Elliot Chiprut。1910 Fruitgum Companyのシングル(1967)、アルバム『Simon Says』(1968)に収録。

1910 Fruitgum Company Simon Says(アルバム『Simon Says』収録)を聴く

歌唱、ひとつひとつのサウンドがしっかりしています。質感が強いですね。

左にリードボーカルがいて、あとのトラックは右に寄って感じます。右のヒス・ノイズがかなりきつい。。

ボボババボボババ……というベースの間断ないストロークに、バシっと残響するドラムのアクセント。エレキギターの印象はペケっとして薄いです。かわりにオルガンがよく出ています。Aメージャーで、「ド#ーレファ#ーミー」というモチーフをベースギターとの音域ちがいのユニゾンで印象づけます。

「Put your hands……」という歌い出しまでは複数のコーラスで共通しているのですが、そこから先が番によってちょこちょこ歌詞が変わってしまうのです。いちおう、2コーラス目ののち間奏があって、3コーラス目に関しては2コーラス目のサビのそっくりそのままの繰り返しになってはいます。

エンディングでClap your hands in the air……とのフレーズとともに手拍子が出現し、この質感も非常に強気です。これも単純な繰り返しのみだったら参加のハードルが低いのですが、どうしたものか、たまにちょっと音形にヒネリを効かせてきます。

こういう、急には対応しかねるような変化がかえってキッズのゲラゲラ笑いを誘うのかどうなのか。

大衆に迎合しにいく娯楽のガワをかぶっていて、実はかなり反骨に根差した精神のもとに鳴らされている音楽なのでは? という気さえしてきます。ホラ、お前らついてこられるか? 変化について来れないバカは振り落としてやるからな。ボサボサしてんじゃねーぞ? というロックな態度なんじゃないかな、実は。バブルガムポップなどというジャンルの名称も、それ自体を嘲笑して自覚しているようなネーミングにすら思えます。当事者がつけたのかどうか、誰がつけたジャンル名なのかも私は存じ上げないけれど。

青沼詩郎

参考Wikipedia>1910 Fruitgum CompanySimon Says (1910 Fruitgum Company song)Simon Says (album)

参考歌詞掲載ページ ORICON>Simon Says

『Simon Says』を収録した1910 Fruitgum Companyのアルバム『Simon Says』(1968)