帰る港

松田優作さんの声が太く温かみのある味わいのある個性的な声の威力。俳優さんとして認知していましたが、歌っていたんですね。

松田優作にこういうこと言わせてみたいとか、客観的な一般大衆からみる松田優作像みたいなものをご本人、あるいはタレント(才能):松田優作運営陣も自覚的にやっていたのでしょうか。あるいは芝居のなかに出てくる松田優作が演じる人物造形と、実際の私的なご本人のキャラには重なる部分が多い芸風でいらっしゃったのかどうか。本曲『Uターン』を収録したアルバムには、本曲を含めせりふが入る曲が複数あります。本曲の作曲者は宇崎竜童さんですが、『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』を連想させます。

「今夜んとこは帰るがヨォ、おたく一人が女じゃねんだから……分かった?」と言いつつも、それは一言余計なだけかもしれません。だって今夜んとこは帰るんですから。なんならきっと、今夜以降にもこの主人公はあんたんとこに帰り続けるのだろうと私は思います。それが本曲の主題『Uターン』なんじゃないでしょうか。なんだかんだ激渋イケボで口先でボソボソいっていても、港のようにおもっている愛の対象がいるのではないでしょうか。歌詞に登場する「夏の少女」「夢の少女」なのか。夏に時候に聴くもよし。

・言葉のカラクリ、さだめのイタズラ

サビでfor freedomと繰り返します。自由のために、と直訳できるでしょうか。そしてサビをまとめるラインが、“言葉のカラクリ、さだめのイタズラ”というフレーズです。役者業に人生を賭したであろう松田優作さんの現実像からも、他人事とは思えないフレーズです。

ちなみに本曲『Uターン』の作詞者:島武実さんの作歴で私の気になる引き出しにあるのはかまやつひろし『サテンドレスのセブンティーン』です。島武実さんは佐久間正英さんと音楽グループを組んでいた経歴などもあるとのこと(参考Wikipedia>島武実)。

Uターン 松田優作 曲の名義、発表の概要

作詞:島武実、作曲:宇崎竜童。編曲:大野雄二。松田優作のシングル、アルバム『Uターン』(1978)に収録。

松田優作 Uターン(アルバム『Uターン』収録)を聴く

音楽家である秩序に己自身を縛るでもない自由なふるまいを感じる松田さんのボーカル。せりふパートになると激渋低音ボイスに変わります。ザ・松田優作像然り。

自由なふるまいのリードボーカルに対して、音楽面では狙いすましたように、要所にバンド全体での精緻なキメが入ります。ホーンに女声も入って、豊かで楽しげ。ストイックであることに命を捧げるというよりは、楽しくあることに全力を尽くす姿勢が感じられる音楽です。

左にやさしめの歪みでかろやかにストラミングをつらねるエレキギター。右のオブリのギターが自由でメロウで極めて達者。すばやく豹変するようにハーモニクスをピンピンと浮かべたり、緩急に富むプレイ。やくざのスゴみみたいです。優しいと思ったら急に微動だにを許さない迫力で静かに脅しにかかるみたいな重圧とかろみが同居した演奏が妙味。ベース、ドラムも非常に精緻かつ攻める歌いっぷり。アグレッシブかつ生馬の目を射抜くように精密なのです。

編曲は大野雄二さん。『ルパン三世』主題曲の作曲家さんですね。素晴らしい。

青沼詩郎

参考Wikipedia>Uターン (アルバム)松田優作

office作>松田優作へのリンク

『Uターン』を収録した松田優作のアルバム『Uターン』(1978)